SCP-026-N 『遊水』

緋鳥と五月と俺でやってきた『ナカジマスパーランド』で、運悪く俺の上司である棚空先輩と春夏冬あきなし先輩とバッタリで会ってしまい、運悪く一緒に泳ぐことになってしまった。上司2人の水着姿は新鮮だが、俺は上司のガイノイド脂肪に惑わされるような奴じゃない。

「…あれぇ? 餅屋くん、今こっち見てた?」

「え、いや、別に見てないですけど?」

「ま、見たいなら見てもいいよ? だってだし、恥ずかしがることは何もないよ、小さい頃はおもらしのおしめも替えたし」

「そんな記憶は一切無いんですけど」

「その話、詳しく聞かせてもらってもよろしいですか?」

「おい食いつくな」

そう、俺が先ほどカバーストーリー『親戚』を使ってしまったためさっきから俺がある事ない事言われている。そのせいで、いつの間にか来た五月と春夏冬あきなし先輩が談笑し続けている。コミュ症の五月をここまで喋らせたのだから驚くべき事だ。

「そう~、それでね~、餅屋くんが滑り台から落ちちゃったの~!」

「え、マジすかそれウケるー!」

「おい何笑って……いや何で知ってるんですか?」

しかも何故か個人情報も流出しているらしい。しかも俺のトップシークレット級だ。あれは誰にも話していないのだが……。

そんな話をしていると、棚空先輩が芝居がかった動きをして俺らに話しかけてくる。

ここ最近は最初の時みたいにはっちゃけた感は無いのだが、まだまだ油断は出来ないと思い、少し警戒してみる。

「さあ! プールに来たんだからさ、取りあえず遊ばない? ここには色々あるしさ、遊ばないと、ガールフレンドにも失礼だよ?」

「「「ガールフレンド達ッ…!?」」」

やっぱり棚空先輩が変な事を言ったので、俺ら3人とも過剰反応してしまう。特に五月なんて、目を回して驚いていて、その様子を見て棚空先輩は大爆笑している。

緋鳥も混乱しており、俺は怒気を孕ませる。

「な、なななななな!?」

「えwww君たちwwwそんなにwww驚くのwww」

「何でそんなことになっているんですの!?」

「ちょっとこっち来てくれませんかねぇ…!」

「あ、ヤベぇ逃げろ!」

「「させん!」」

棚空先輩が逃げようとした所を、俺と五月のファインプレーで素早く捕まえた。水着の首ひもを掴まれて「ぐえ」とか言っていたが、春夏冬先輩の仲裁もあり、丸く収まった。

そして、春夏冬先輩に提案によりこのままずっと暑い所にいるのも何だからプールの中に入って遊ぼう、という提案を出し、皆でプールの中に入る。棚空先輩はただ遊ぶだけじゃ面白くないのか(反省はしていなさそうだ)、また厄介そうな提案をする。まともな提案だといいのだが。

「いや、そこは違うぜ時雨しぐれちゃん! ただ水の中入って遊ぶんじゃ意味がない。君らもそう思うよね?」

「ああ、まあ、はい」

「そう、ですわね」

「だからさ、そうだね、あそこのボール借りて【賭け】とかしない?例えば……とか、どうだい?」

「ボールパスですか。ええ、いいと思いますわ」

「いいんじゃないの~?」

「はい、いいと思います」

「……ほぉ、そういう事ですか。いいでしょう、受けて立ちます」

棚空先輩はいかにもで俺の目を見る。それに答えるように、俺も相手を見据える。他の3人は気づいていなさそうだが、どうやら、俺が考えている事は2人とも同じらしい。

「よし、それで良いね?ルールは個人戦で、お互いにボールを合計で先に3回落とした人の負け。負けた人はみんなにジュースとお昼を奢る…それでいいかな?」

「個人戦……まあ、いいでしょう。受けて立ちます。緋鳥もそれでいいよな?」

「はい、大丈夫ですけど……餅屋さんは?だって、あなたは運動系が全般苦手ですわよね?」

棚空先輩の出した提案をすんなり受け入れた俺を、緋鳥が心配そうな目で見る。確かに俺は運動が苦手だが、そんな目で見なくても上手く切り抜けるさ。

そしてボールは春夏冬先輩が借りてきたくれた。位置関係が割と近いが、俺に対しての配慮だろうか。

「じゃあ早速始めようか、よーいスタート!」

「よし、返してやろう……!?」

スタートの合図と共に、棚空先輩は俺にボールを結構な速さで投げてくる。もちろん俺はそれを返す。俺はジャンプしすぎてしまい、ボールが思うように手に当たらず早速ボールを落としてしまい、五月が拾いに行く。

「クッ! 上手くジャンプ出来ねぇ!」

「あれ~? 餅屋く~ん? どうしたんですか~?」

そう、この試合において俺が懸念けねんしていたことは1つだけだった。それは、相手のに気を取られる事で、それだけならなんとかなると思っていたが、やはり人間の本能には逆らえない。相手はそこを狙っていたのだろう、俺は基礎の基礎である水中では足が思い通りに行かないという初歩的なことに今気づいたのだ。

「おっと、君はさっき何を見ているのかな? やっぱり気になるのかな? でも駄目だよ。いくら君でもまだ早いからね!」

「……あー。そういう事でしたの? 最低ですわね」

「……最低」

2人から冷たい視線を浴びせられているが、本能には逆らえない。先ほどまで涼しいと思っていたプールの温度が一気に下がったように思え、俺が言い訳しても聞いてくれそうにもない。ここははっきりいうべきだろう。

「仕方がないんだ、これはその、本能なんだ、男の本能」

「大分しどろもどろですわね? 私たちへの当てつけですの、それは? ……そういう事なら、私達にも策がありますわ」

「そうだね、緋鳥ちゃん」

「「今ここで、鉄槌を下す」」

どうやら間違いは全部で3つあったらしい。1つ目は女性は胸の大きさを気にする。もう1つは、2人とも胸がそこまで無いという事だった。

だが、俺は負ける訳にはいかない。2人の目は今や残酷な処刑人だ。しかし、俺は黙って処刑されるわけにもいかないので力強く宣言する。

「よかろう、受けて立「くらえ!」ふべっ」

「!? っひゃあ!」

折角俺が格好良く宣言していたのに、五月は空気を読まずにボールを俺の方に投げる。それに全く気付かず頭でキャッチしてしまい、片足だけで水中の中をジャンプしている状態、つまり派手にこけてしまいそうになる。

それをどうにかしようとした俺は、近くにいた緋鳥に手をついてしまったが、位置が悪かったのか

「いっ、いきなりなっ、何をしているんですの!? 私のむっ胸に……」

胸の話題で俺の株価が下がっている今、素早く弁明しなければ。かろうじて0付近なのにマイナスになってしまう。

「誤解だ、違う、誤解なんだ、その、ボールが当たってだな」

「~~! うるさい!」

「ぐへっ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ふう~…疲れたね…今日は付き合ってくれてありがとね、餅屋くん」

「いえいえ、大丈夫です」

「楽しかったね~! ガールフレンド達も~、もう疲れて倒れちゃってるし~、余程楽しかったんだろうね~」

「ガールフレンドじゃありません」

結論から言うと、俺は負けた。敗因は全て棚空先輩と春夏冬先輩の胸部に溜まったガイノイド脂肪にある。俺は悪くない。

あの後、俺はジュースと昼飯を奢らされ、更には苦手なウォータースライダーにも強制的に乗らされた。そして、現在時刻は4時半、帰宅の時間となったので棚空先輩の車に乗って帰ることにした。緋鳥と五月はもう既に疲れて、俺の肩に頭を乗せて眠っている。……そろそろ痛くなってきた。

「いや、それにしてもよくあんなカバーストーリーを咄嗟に思いついたね!『親戚』だって?こりゃまた滑稽で面白かったよ」

「う…やめてくださいよ、学校が始まった時にこいつ等からどれだけイジられるか…後、大声出すとこいつらが起きて内容が聞かれちゃいますよ」

「あはは~、そしたら記憶を消すしかないでしょ~」

いくら眠ってるからと言って、俺たちの声で起きないという保証はない。もし聞かれていたら記憶処理待ったなしだ。2人のためにも、もう少し静かに喋るべきだろう。

「アメリカはもうそろそろだし、『襲撃』にも気を付けてね?…そうそう、おもらしもね」

「当たり前です、僕ももういい大人なんですから大丈夫ですし、そもそもしてません。…うーん、僕もなんか眠くなってきましたから、寝させていただきます」

何だか急に眠気が襲ってきた。疲れても眠くはならないタイプなのだが…。まあ、我慢も体に良くないからさっさと寝るとするか。棚空先輩の「おやすみなさ~い」と言う言葉を聞いたが最後、深い眠りについた。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


あとがき

どうも、お久しぶりです、餅屋五平です。

投稿から丁度1か月たち、友達から「投稿止めたんか」とまで言われましたが、理由は単純で、このパートは書くのが難しかっただけです。待たせてすんませんでした。ガイノイド脂肪おっぱいとかラノベによくある展開とかを書いてなんとか押し切りましたが、次はアメリカ編です。もうしばらくお待ちを。



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