SCP-004-N 『準備』

ああ、疲れた。授業を受け始めてからはや数日。俺は順応しつつあったが、学校が終わったあと特有のだるさにはまだ馴れていなかった。しかも、アガサ先生が外国人特有のダル絡みというやつを俺にだけしてくる。そして、男子からの妬みの視線が鋭く

刺さるため、非常にいたたまれない。しかも、五月が凄く嫌そうな顔をしてくる。…

凄く。そんな五月はと言えば、俺が助けないととろくに誰かに話しかけられなかった。

しかし、一応は成果があったようで、どうやら今日は誰かとゲームの話ができたようだ。感心感心。ちなみに、俺の方は目立ち過ぎないのが目的だから五月以外まだ作っていない。

「餅屋くん、一緒に帰ろう!」

「ん…ああ、いいぜ。さっさと帰ってゲームとかゲームとかするか。」

「ねえ、餅屋君昨日もその前もそう言ってたじゃん。勉強とか大丈夫なの?」

「ん?大丈夫大丈夫。少なくともお前よりかはアタマ良いから。特に英語と数学なら負ける気がしない。」

「あ、言ったなー?絶対にテストで餅屋くんよりいい点取っちゃうからね!」



そんな軽口を叩き合いながら―――予想通り、五月は典型的なコミュ障だった―――校門まで着く。その時、アガサ先生が近づいてきた。いつも通り、五月は嫌そうな顔をする

「やあ、餅屋くん。Girl friendとお帰りですか?いや~、青春してますねー!羨まし

 い限りですよ、本当に」

「…何の用ですか、アガサ先生」

「ああ、そんなに怖い顔をしないでください、五月さん?…もちろん大丈夫ですよ、

 Boy friendを狙っているつもりはありませんから!」

「ぼ、ボーイフレンドだなんて、そんなんじゃありませんよ!…も、餅屋くんも

 気にしなくていいからね!?」

俺と一緒にいて、ボーイフレンドなんて言われたらそら恥ずかしいだろう。さっきから五月が顔を赤くしている。そんな五月は放っておいて、アガサ先生の用件を聞く。

「…で、先生。どういう用件ですか?」

「ああ、少し耳を貸してくれないですか?大丈夫ですよ、Girl friendを待たせるつもりはありませんから」

そうやって、俺の耳をちょいちょいと指している。…少し怪しいが、聞くだけ聞いてみるか。

「ねえ。…あー、いや、やっぱりいいですよ。」

「…え?…え?」

「いや、情報が間違っているかもしれませんしね。まだやめておきます。すみません

 ね、五月さん、Boy friendを待たせてしまって!」

「あっ、ダイジョウブです。」

いつの間にか五月が復活していたが…一体なんだったんだ?そんなことを考えていたら、スマホに着信がなった。見ると、春夏冬先輩からだ。何かあったのだろうか、と五月から離れてから急いで出る。

「はい、もしもし。こちら餅屋。なにかありましたか?」

「は~い、餅屋く~ん?学校はど~お?辛いこととかない~?」

「僕ももう十分な大人なんですから、大丈夫ですよ。ていうか、それだけの為に電話

 してきたんじゃないんですよね?」

「流石にもうちょっとあるわよ~。申し訳ないんだけど~、今からサイトに来れる

 ~?」

「…?はい、大丈夫ですけど、何かあったんですか?」

「う~ん、そういうわけじゃないんだけど~。とりあえず~、1時間で来れる~?」

1時間か…今から行かないと間に合わないだろう。仕方がない、五月と一緒に帰るのは諦めるか。

「すまん五月、急用が出来たから今から向かわないといけない。だから今日は一緒に帰れない。申し訳ないな。」

「あっ、そうなんだ…まあ、仕方がないね。急用なら。」

五月の悲しい顔が一瞬心にきたが、もう行かないと間に合わない

ので、早々に向かうことにした。…結局、アガサ先生は何が言いたかったのだろうか?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

俺が通っていた財団のサイトは、少しばかり不便なところにある。 なので、俺自体もサイトから近いところの財団職員専用集合住宅住まいだ。まあ情報漏えい防止の為だから仕方ないのだが。

「ちょっと~、ちゃんと聞いてる~?降格させちゃうよ~?」

「ああ、すいませ…降格!? さらっと恐ろしいこと言わないでください!」

ご覧のとおり、春夏冬先輩は誰かを降格させれる立場にいる。 …流石に今のは冗談だと思うが。冗談だよな?

「えーと、僕が学校に通っている間にSCPの知識を忘れないように週何回かの講習を

 受けさせる、と。」

「そうそう、ちゃんと聞いていたのね~。偉いえら~い。」

「子供扱いしないでください。一応聞きますけど、行かなかったら…?」

「降格」

「アッ、すいません。」

 いま笑顔だったのに殺気を感じたぞ。今のは冗談じゃ無いな。いつもの間延びした声もなくなってたし、相当怖かった。

「あっ、でも~、講習を受ける日にちは~、君が決めれるから~、この日はまずい、

 ってのがあったら事前に教えてね~。」

一応そこはちゃんと決められるのか。ま、今後五月との関係もあるからな。

「で、その講習とやらは誰がやるんですか?まさか、先輩出来るんですか?」

「え~、やだよ面倒くさ~い。講習は~、専用の人を用意したから~、いい感じでや

 ってね~。あと~、軽く自己紹介もしてね~、牡丹ちゃ~ん?」

「ボ…ボタンちゃん?そんな人どこにも……」

聞きなれない名前を出された瞬間に、デスク周りに雷のような声が鳴り響いた。

「どうも! 棚空牡丹たなからぼたんでーす! よろしくね餅屋くん!」

「うおびっくりしたぁ! え!? 今どこから出てきたんですか!?」

「まあまあ関係ないよ! 大丈夫大丈夫!」

「そうそう~、気にするだけ無駄よ~。」

突然の登場に、周りのデスクの人達もびっくりしてしまったが、どうもこのうる…もといハイテンションな人が講師らしい。…いや、今本当にどこから出てきた?

「じゃあ、改めて!どうもこんにちは、僕は棚空牡丹!セキュリティクリアランス3の博士なんだ!よくうるさいっていわれるんだけど、とりあえずよろしくね!時雨ちゃんも久しぶり~!元気してた?あ、そうだ!最近美味しい紅茶を淹れてくれるケーキ屋さんを見つけたんだ!もちろん主軸の商品、チョコレートケーキも美味しいんだぁ~!今度一緒に食べに行こうよ!あ、餅屋くんも一緒にね!」

「あ、相変わらずね~、牡丹ちゃんは~…」

「あ、はい、是非……」

わかった。この人、想像以上にやかましい。しかも、あの春夏冬先輩を圧倒させているのだからなおの事だ。更に、腰までかかる程のストレートの茶髪、スラッとした身長にパッチリした目、しかも出るとこは出ている。服装も、軽装(結構肌が露出している)の上に白衣を着ているだけなので、正直目のやり場に困る。そんな俺を知ってか知らずか、棚空先輩は笑顔で俺に話しかける。

「じゃあ、とりあえず、講習室に行こうかな!餅屋くん!」

……そういえば、そんな理由だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

唐突なんですけど、1400文字から2000文字を目標にこれを書いているわけなんですよ。でも、なんと今回3000文字です。………。で、財団についた所で切ると1100文字なんです。………。あ、あと、これを今見てる人がどうやらいるそうです。ありがてえ…(小並感)。

次回予告、明日はあのイナゴ。

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