第18話 冒険前にテンプレの予感

 孤児院での食事は想像よりもずっと充実したものだった。

 夕飯はくず肉ではあるが食べやすいように野菜と共にミンチにして焼き固めたミートローフ、根菜の入ったスープと小さい子供でも食べやすいように薄切りにされた黒パン、スモモのような果物が一つ、一度までならお替り許可となっていた。


 子供たちと会話を楽しみながら厨房で体をふくための湯と端切れをもらって部屋に戻る。体をふいていると、アンナが「古着で悪いんだけど」と替えのシャツと下履き(ステテコのようなもの)を持ってきてくれた。上半身の裸を見られて動揺する俺に対して、子供たちの世話で裸を見慣れているアンナは一切動揺していなかったのがなんか悔しかった。


 朝食はオートミールに昨日の残りのスープ、ザワークラウトのような葉野菜の漬物と、ソーセージ1本だった。この世界では基本的に一日二食、裕福な者なら昼前後に軽い軽食を取る程度らしい。


「んで、朝はとりあえずギルドに行くとして、そのあとはどうするの?」


 と朝食を摂り終えた俺のところにアンナとステラが連れ立ってやってきた。


「それなんだが、ダンジョンへ行ってみたいんだ」

「となると、初心者向けのダンジョンから順に回るのがいいでしょうね」

「早速準備してギルドへ向かいましょう。今日はよろしければわたし達と一緒にダンジョンへ行きませんか?」

「二人とも予定はないのか?」

「ステラもあたしも、薬草採取と常設依頼のゴブリン狩りをメインにしてるから問題ないわ。むしろ後衛のリョージが入ってくれるなら、ダンジョンアタックもグッと楽になるだろうし」

「それじゃあ二人の世話になろうかな」

「任せておいて!先輩ハンターとして頼れるところを見せてあげるわ!」


 二人と神殿前で待ち合わせた俺は、揃ってハンターギルドへ向かった。


「おはよ~ベス!リョージのカードできてる?」

「できてるわよぉ」


 受付で座っていたベスからギルドカードを受け取る。

 長さ五センチ程度の短冊の鉄板に、リョージ・男・20才・狩人・B★・ビギナハンターギルドと刻印されている。


「カードについての説明は必要かしら?」

「ああ、頼む」


 ベスからカードの内容について説明を受ける。

 頭から、名前・性別・年齢・職業・ハンターランク・所属場所となっているらしい。野垂れ死んだとしても、このカードを持ちかえれば生死がわかるということだ。ちなみにもし発見して持ち帰れば、これだけで銀貨5枚の謝礼が支払われるらしい。

 ハンターランクについては、下から「青銅bronzesilvergold」という大分類と、それぞれ下から★~★★★★★と功績によって星が増えていく。青銅(B)★5まで功績が上がれば、試験を受けて銀(S)★1へとランクアップできるようだ。

 俺はハンターギルドに所属したばかりなので、B★からのスタートになる。

 自分のレベルについては自己申告でギルドとしてはレベルよりも功績ランクを重視しているという。

 ちなみに、一人前のハンターとして認められるにはS★からということらしい。


「二人のランクはどのくらいなんだ?」

「B★4です。アンナも同じですよ。二人パーティーで採集メインで活動しているので、上りが遅いんですよ」


 ステラのカードを見せてもらうと、そこにはステラ・女・17・治癒師・B★★★★・ビギナハンターギルド、と記載されていた。


「ステラとアンナみたいな経験を積んだ採集メインパーティーってギルドにとってはすごくありがたいのよ。確実に採集依頼をこなしてくれるし、無理をしないから死ぬ危険も低いしね~」

「ってわけで、あたしとステラとリョージでパーティー組むわよ!」


 アンナがそう言うと、ギルド全体にざわっとした空気と緊張が流れた。

 危機察知スキルに弱い殺気を感じる。


 男嫌い……俺のステラに……あの男誰だよ……流れの……


 ざわざわとささやきあう声が聞こえてきた。


 あ、これ、テンプレの予感ですわ。

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