サキュバス(6)

「あなたは大丈夫そうだけど、まわりの子はどう? 悩んでいそうな子はいませんか。本人にあなたの名前は出しませんから、教えてください」


 うちの学校は、生徒を束縛しない校風で知られているが、野放しというわけではなく、いじめについては厳しく管理されている。


 SNS上の監視は徹底されているらしく、学校の中にも、あちらこちらに監視カメラが設置されており、生徒間のトラブルが見つかればすぐに学校が介入する。


 いじめのない環境づくりと基礎学力の向上に資源を集中するため、他のことをばっさり切り捨てているのが、私の通っている私立竹川学園高等学校の特徴とのこと。


 体育祭や文化祭、修学旅行などの行事は、学校の協力を受けながら、やりたい者たちが自主的に行っている。


 涼しい時季にやってくれないので、私は参加をしたことはないが、人はそれなりに集まるらしい。


   〇


「そういえば、さっき、広瀬くんが死にかけてましたけど」


「優羽さんのお兄さんの?」


 私が頷くと、「彼も大変よね」と独り言を口にするだけで、カウンセラーはそれ以上尋ねて来なかった。


 「あとは……」と言いかけた瞬間、私はずっと忘れていたことを思い出し、椅子を倒しながら立ち上がった。


「塔子、見てない。二か月ぐらい」


 マイ・フレンド塔子はどこに消えた。

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