5sec チコリスの父親



「第二王女チコリス、入ります!」

チコリスの一声とともに、二人はたどり着いた謁見の間に入っていった。



 大きな扉の先にあったのは奥行き五十メートル以上は間違いない大きな部屋だ。

見上げるほど高い天井には見事な絵が描かれ、青い大空を舞う天使や飛竜を見ることができる。




「お父様!」

チコリスは奥の玉座の前で倒れている人物へと駆け寄っていった。

その人物はチコリスの声に反応して、手にした杖を支えによろよろと立ち上がる。



「その声は……チコリス、よくぞ無事で……。」

「ごめんなさい、お父様。わたしにもっと才があればこんなことには……」


言葉を交わしながらチコリスは父親、王様に肩を貸し、玉座に座らせた。

なんとか落ち着き一息つくと、彼女の父親はあたりを見回して彼女に尋ねる。



「いったい私の身に、いや…、この城に何があったのだ?」


 倒れていたのは王様だけではない。謁見の間には傍に控える文官や近衛兵たちがいたのだろうが、みな一様に床に倒れている。まだ意識がはっきりせずピクリとも動かない者や、うめき声をあげながらも立ち上がろうとする者もいる。



「わたしを中心に広範囲に及ぶ呪いがかけられたのだと思います、お父様。」

チコリスは冷静な口調で告げる。



「広範囲…、呪いだと?」

王様は少しだけ動揺を見せるが、すぐに冷静になりチコリスに質問を重ねる。


「被害はどれくらいなのだ?無事なのは私たちだけなのか?」


「大丈夫ですよ、お父様。目先の危機はもう去りました。じきに、私の付き人が無事な者を起こして連れてくるはずです。」

チコリスは穏やかに答える。



「そ、そうか。ならばその話は他の者の報告を待ってからにしよう。では……。」

王様は少し言葉を溜めてイットキに視線を向けた。



「その少年が何者なのか話してもらおう。」



(続く)

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