精神異常①
スカルは暫く、様子見と言って防衛隊に留まっていたが、結局遠方の部署に引き抜かれていった。彼が懸念していた事は、ブラッドも承知の上だ。
思ったよりノイズの精神状態がよろしくないのも頭を悩ませる。
「最近、ノイズありきの作戦に偏りすぎてない?」
耳が痛い事を言ったのは弟のスカーだった。
「防衛隊の人間として、彼の不老不死という能力に依存するのもどうかと思うけど。まあ、上が納得しないのも分かるけどね」
「……」
ブラッドが難しい顔をすると、スカーはやれやれと溜息を吐く。
「スカルの報告で黙らせたんじゃなかったの?」
スカーの声は、部下の声だ。肉親だからこそ上司であるブラッドにさらりと言えてしまう。それがありがたくもあり、情けなくもある。
「アイルーが、『隊長は、彼を友だと思っているのだと思っていました』って言ってたよ」
彼が死を繰り返すたびに、どんどんと平常心を失っていることに気づきながら、ノイズを盾にする事を止めない。ノイズはノイズで、次こそは死ねるかもしれないと喜んで前線を飛び出していく。
「いつからそんな臆病になったの、兄貴」
今度は部下としてではない言葉に、ブラッドはとうとう隊長の顔を崩した。
「難しいんだよ。あいつの扱いは」
「まあそうだろうね」
「俺達は死ぬ。あいつは死なない。簡単すぎるだろう。なにを悩む必要がある?そうやって急かされる俺の身にもなってくれ」
自嘲気味に弱音を吐く。このままではいけないと、スカルは言った。分かっているけれど、それ以外の方法を探し出すのは骨が折れる。問題の難易度が格段に跳ね上がってしまっているのだ。
「ノイズの居場所を作ってやるのに精いっぱい?」
「……」
「でも、ノイズは自分の手でその居場所を壊すよ」
「わかっている」
「もう、時間ないよ」
無情に告げられた真実。
ブラッドは苛立ったようにもう一度、分かっている、と呟いた。
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