線香蝋燭

線香蝋燭はパチリと電磁を、放つ

少年はひとたび瞬きをして

つまり、びっくりした

線香蝋燭はきらきらと燃える

藍色の宇宙を水晶に閉じたような

少年の目に反射する


電磁は龍のように身をうねって

気体の上を駆けていった

一瞬のこと

少年は見逃さなかった

それで、も一度、ぐっと睨んでいるのだ


「はよう、紙袋を持ってこ」

母の声が奥から来る

少年ははっとした

けれどもびくりと体をしたまま動かなかった

腹の底の巨大な虫が神経的な口を動かす

少年ははらはらした

腰は少し浮かして

けれどもそこを動かなかった

アルカリ鉄溶液のどばどば流す心臓が

活発だった


「なにをしてるかぁ!」

鋭い母の声

腹の虫は縮こまった

足をばたばたさせる

線香蝋燭は微笑むだけだった

電磁は鳴りを潜めてた


「○○くん!」

少年はバネ式に立ち上がり

戸棚のほうへ、走った

中から紙袋を引っ張り出す

パチリとうしろで音がなった

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