初動

首都圏広域の突然の消滅に対してすばやく動いたのは、マスコミ、国軍、政治家であった。この一大事件、後に異国召喚イコクショウカンと呼ばれる事象が起こってから僅か2時間後には首都圏のあった地へと幾つもの報道ヘリが飛び立っていったと言われている。事件直後、陸軍の駒門コマカド駐屯地司令 相葉康アイバヤスシは連絡室にいた。3名の下士官が矢継ぎ早に端末と受話器を操作していた。

「ダメです。座間、滝ヶ原も連絡とれません。」

「こちらもダメです。横浜、習志野を中心に連絡途絶。」

「新潟とは繋がりました。しかし、特に情報はないそうです。」

しばらく考えた後、相葉は答えた。

「佐世保と岩国に連絡を」

「ハッ」

佐世保と岩国には他の国軍基地と違い米軍基地が隣接している。経ヶ岬などもあるが規模からいって海軍の佐世保、海兵隊の岩国がベストだろう。状況から首都圏の周囲100km近くから連絡が途絶している。首都直下型地震であったとしても、直下で直撃したところ以外でも広域に連絡が途絶することはおかしい。先程の閃光が敵国による攻撃の可能性もあるが、核攻撃のようなキノコ雲は見られない。

「佐世保基地と繋がりました。」

「よし。こちらへ回せ。はい。代わりました。駒門の相葉です。何か状況は掴んでおいでですか?」

「佐世保の古家です。現在、米軍からの情報によりますと首都圏が消滅したのではないか、と」

「消滅?」

「はい。衛星からの情報では首都圏にこれまでと全く異なる都市群が出現したということであります。」

耳というか頭を疑った。首都圏消滅だけでも大災害だが、都市群の出現とは一体どう解釈すればいいのか。敵国が国ごと強襲揚陸してきたとでも言うのだろうか。連絡が取れないことも未だに信じられない。が、こうなればともかく自分の目で確かめるしかない。

「敵兵力は観測されているのか。」

「いえ、戦闘機も確認されていないそうです。」

「分かった。ではうちから偵察を出す。情報に感謝する。」

相葉はそういって受話器を置くとすぐさま出動の準備に取り掛かった。すでに下士官はいつでも動けるように待機している。情報のまったくない未知の状況と首都への浸透という危機的状況は、幾つかの戦地をくぐり抜けて来た相葉にとっても全く初めての状況であった。

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