異界大戦

山川一

戦闘

敦賀士郎アツガ シロウは迷彩服に漆黒の太刀を持って突撃している。相手は魔導士である。背丈はこちらよりやや低い。深緑のローブをまとってこちらに杖の切っ先を向けている。一対一。自分の人生を賭けたとしても、もうこんなチャンスは二度と来ないかもしれなかった。何人もの仲間が眼の前の魔導士に焼かれた。みな炭となった。相手はこちらを睨みつけ、何事かつぶやくと杖の切っ先から火炎を吹き出した。物理法則を無視した火炎は火炎放射器というよりは直進するレーザー光であった。まばゆい赤色の光が士郎の眼前に突出してきた。死んだと思った。しかし死ななかった。身体はとっさに反応し、光を両断した。退魔刀タイマ トウ、漆黒の刀身に刃渡り二尺六寸。魔法を両断しうるその太刀は地球人が異国の魔導士に対抗するための唯一の手段であった。故に士郎は駆けた。炎が魔力を失い空へ広がり始める。そのまま士郎は炎の中へと飛び込んだ。


『この野蛮人め』


敵魔導士の悪態が聞こえたような気がした。野蛮人で結構だと思った。物理すら無視する魔法使いを屠れるなら鬼にも悪魔にでもなってゆくしかない。周囲の炎がかき消えると同時に、敵魔導士が目前にせまった。両断した。朱い返り血が士郎の眼前を染めた。


皇暦2086年6月24日、侍隊三等兵 敦賀士郎 撃破1

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