第44話 悪霊オーラ

 どれほどの時が流れただろうか…。

 戦士達は汗を流しながらサソリの大群をやっつけた。


 毒をくらった者、傷を負った者達がバリアの中で治療を待っていた。

 他の戦士達は汗を拭い水分補給をしている。

 治癒の力を持つ者はタマ子だけ。懸命に杖を振るが、まだまだ人数が多い。治療隊は一瞬で治せるタマ子の力には叶わず、治療はせず毒を受けた者と怪我人を分け人員整理にあたった。


「よし!ここで休息をとる!元気な者達は食事の用意をしてくれ」


 ハリーが指揮し皆が従った。

 治療が全て終わったのは日が傾きかけた頃だった。汗を拭いその場に座り込むタマ子、それを見たハリー隊がタマ子を囲み労いの言葉をかけた。


「だけどなぜここのサソリは巨大化して凶暴になったんだ?」


 アヴァが不思議がるのも無理はない。皆が同じ思いを抱いていた。


「サソリから悪霊のオーラを感じました。サソリだけではない、この魔界全域にそのオーラを受けた生き物がいるはずです」


 妖精テイネは静かだが力を込めてそう言った。


「全ての生き物か…、魔物相手だけじゃダメなんですね」


 ノアは不安そうにつぶやいた。


「いや、元は魔物が作り上げたもの。どこかにそのオーラの源があるはずだ」


 ハリーも力を込めそう言った。


「その通りです。オーラの根源は私たちオーラを読み取る神の仕事。必ずや探し出して絶たなければなりません。それさえ出来れば無駄に動物達を痛める必要も無くなるでしょう」



 皆は食事をとり休む事にした。バリアのおかげで安心して休息がとれる。


 まだ起きていたタマ子にハリーは声をかけた。


「まだ寝ないのか?疲れただろう」


「はい、でも……」


 タマ子は口ごもった。


「どうした?」


「もっと早くこの力を頂いて一緒に来ていたなら…」


「セオ…か?」


「残念でなりません」


 ハリーはタマ子の肩を優しく抱きしめグリーンのバリアの外をずっと見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る