第27話 儚い初恋

 今日はタマ子がお願いしたハリーが城にやって来る日だ。


「カヤ、このドレスとこっちとあっちと……ん~どれがいいかな?」


「ピンクの髪色には薄いブルーが綺麗ですわ」


 侍女のカヤが微笑みながら言った。


「そうね!」


「本当にタマ子王女様嬉しそうですネ」


「だってハリーが来てくれるんだもん!そりゃ嬉しいわよ!なんでか分かんないんだけど…ハリーに会うと、ううん、考えるだけで胸がキューンってなるの…」


 カヤは嬉しそうに笑った。


「可笑しいかな…それとも変?」


「可笑しくも変でもありません。カヤは嬉しいんです。タマ子王女様の初恋ですもの」


「えっ!恋?!これが恋なの?」


「はい、恋でございます」



 ハリーとグレタ隊長がやって来た。気を使わないよう立食パーティーだ。一通り挨拶を交わしハリーはタマ子の所にやって来た。弟のセオ妹のフローレンスも一緒だ。


「タマ子、今日はお招きありがとう!」


「こちらこそ来てくれてありがとう。こっちがセオ、そしてフローレンスよ」


「もちろん知ってますよ」


「そうなんだ?」


「はい。私は毎日ハリー様の所に遊びに行ってますから」


 フローレンスはそう言ってはにかんだ。


「私も戦士に憧れてますから、ハリー様は存じ上げております。何しろ強いですからね!」


 セオも嬉しそうにそう言った。


「なんだ、そうだったのね…知らなかったわ」


 自分だけがハリーと仲良しだと思っていたので、タマ子は少しがっかりした。それに気づいたハリーは声をかけた。


「タマ子、今日のドレスはとても可愛いよ!あまりドレスは着ないようだけどいつも着た方がいいよ!」


「ハリー様、私はどうですか?この日の為に新調したんですよ」


 すかさずフローレンスが割り込んでくる。


「あぁ、とても美しいよ」


 そう言われフローレンスは満足気だった。そう、フローレンスの髪色は薄いブルーで白いドレスが髪色を引き立てていた。タマ子とはまったく違う大人びた美しい顔立ちをしていた。


 ハリー達が帰った後、フローレンスはタマ子の部屋を訪れた。


「お姉様」


「フローレンス、どうしたの?」


 カヤに手伝ってもらいながら着替えをしていたタマ子が尋ねた。


「まさかお姉様もハリー様が好きなんじゃないでしょうね?」


「えっ……そ、そんな事ないわ。私はまだ恋を知らないもの…」


「なら、良かったですわ。私はハリー様が大好きなんです。この恋が実るように応援してくださいね」


 そう言ってフローレンスは出て行った。タマ子は着替えの途中でベッドに座り込んでしまった。


「…タマ子王女様」


 カヤはタマ子の気持ちを察した。


「…仕方ないわ……」


 タマ子の目からひとすじの涙が流れたのを、ただ黙ってカヤは見ているしかなかった。

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