第8話 タマ子の死

 今日もタマ子は幼稚園バスが迎えに来る場所に1人で向かった。

 毎朝よく出会う野良猫が見当たらない。お昼のパンを少し分けていてよく懐いていた。タマ子はかんすけと名付けていた。実はメス猫だったのだが……。


 大通りの反対側にかんすけは居て、タマ子を見つけると一目散に走って来た。そこに丁度幼稚園バスがやって来た。


「かんすけ来たらあかん!」


 タマ子は慌てて飛び出しかんすけを自分のいた方に投げた。間一髪、かんすけは助かったがタマ子は大きなバスのタイヤの下敷になり即死した。


 今日はタマ子のお葬式。タマ子を乗せた霊柩車が雄叫びを上げ走り出した頃。


「ま、死んだんがタマ子で良かったわ」


 母親の佐和子が父親の一男に言った。


「食いぶちも減ったし幼稚園からもたんまりともろうた事やしな」


 一男も一男である。


「なかなかの親孝行やったなぁー」


 そう佐和子が言い2人でこっそりと笑うのであった。

 哀れなタマ子……。

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