【6】安堵と笑い

 空を橙色に染める夕焼けは漆黒の夜に呑み込まれて、満天の星々に囲まれた満月が輝く時間帯になった。日没までには戻ると言っていた三人の姿はまだ見えない。


 不安げな表情を浮かべて焚火を囲む一同は、居ても立ってもいられず、立ち上がって遠くを望む。


 だが、一寸先は闇。


 煌々と輝く人工的な光に灯された街中が当然の都会で育ってきた。月の光はあっても、こんなに暗い夜は初めてだ。それに、これほどまでに静かな夜も初めてだ。


 騒々しい東京都とは打って変わり、夜行性の動物の鳴き声しか聞こえない。自動車が行き交う走行音も、街頭テレビの音声も、騒がしいひとびとの声も……ここにはない。


 当たり前の日常が当たり前ではなくなったときに、当たり前のありがたさを知る。そして、当たり前を失ったときに、自分たちのちっぽけさを知る。


 便利な通信機器を手の中に収めていても、その機能を発揮できない大自然の中では無力だ……と圏外のスマートフォンの画面を見つめた綾香は虚しさを感じた。


 時間だけは確認できるが、この状況では鉄のがらくたと大差ないように思えた。あとはただ、懐中電灯の代用品といったところだろうか。


 三人と連絡をとりたい。


 “いまどこにいるの?”


 ふだんならLINEで解決できる。容易いと思っていたことがいまは最も難しい。


 男子と綾香がスマートフォンの光を利用して、三人に居場所を知らせようとした。それがここにいる自分たちにできることだ。


 スマートフォンを紛失した女子たちも、不安げな表情を浮かべていた。スマートフォンの画面の光と焚火が、彼らの道標になってくれることを信じて帰りを待つ。


 綾香は焦燥に駆られる。

 「やっぱり迷ったんだよ。だって遅いもん。あたし見てくる」


 斗真が引き止める。

 「駄目だ。お前が遭難する」


 綾香は言った。

 「こんなときにこそ電話とかLINEができたらいいのに。役立たずのスマホ」


 純希が声を張り上げて三人の名前を呼んだ。

 「類! 明彦! 光流!」


 続いて全員で声を合わせて大声で呼んだ。

 「類! 明彦! 光流!」


 一同の声がこだました、そのとき―――


 「だだいま!」と返事が聞こえた。それは紛れもなく三人の声。


 驚いた一同は、目を凝らして前方を見た。すると、スマートフォンの画面をこちらに向けて手を振る三人の姿が目視できた。


 「戻ってきた!」と歓喜の声を上げた一同は、三人が無事で安堵した。

 

 一安心した斗真が言った。

 「マジでおっせえよ」


 道子と由香里が手を取り合って三人の無事を喜んだ。


 「やっと帰ってきたね」と道子が嬉しそうに言った。


 由香里も安心した。

 「うん。本当に心配した」


 不安から解放された綾香も、笑みを浮かべて類に手を振った。

 「おかえり!」

 

 類も綾香に手を振り返した。

 「ただいま」


 翔太が言った。

 「帰りが遅いから道に迷ったかと思った。やっと気が休まるよ」


 類が翔太に言った。

 「帰りはくたくたでペースが落ちちゃったんだ」


 「疲れて当たり前だよ。ほんと、無事に帰ってきてくれてよかった」翔太は、類が持つボストンバッグに手を伸ばした。「俺が持つよ」


 類は翔太にボストンバッグを渡した。

 「ありがとう」


 恵が光流に歩を進めた。

 「おかえり! 遅いからみんな心配したんだよ」


 光流も恵に近づいた。

 「ただいま。心配かけてごめん」


 恵はボストンバッグに手を伸ばした。

 「持つよ」


 ここまでの道のりはつらかった。苦境に立たされ、それを乗り越えたとき、ひとは強くなれる。それを実感した光流の心は、以前よりも強くなっていた。だが、長時間にわたり夥しい死体の中に身を置いていたため、精神的な苦痛を感じていた。いまもなお、さまざまな形状の死体が頭をよぎる。それでも疲弊感を顔に出さず、椰子の実を収めたボストンバッグを恵に渡した。


 「ありがとう。こんなに頑張ったのは初めてだよ」


 恵は光流からボストンバッグを受け取った。事故の直後は、自己中心的で感情の起伏が激しかった光流を心配した。けれどもいまは、仲間のために事故現場まで戻ってくれた勇敢さに感動して、確かな恋愛感情をいだく。


 「惚れちゃうかも」


 恵の鼻先を突く。

 「お調子者」


 待機していた全員が三人のそばに集まった。


 斗真が類に言った。

 「本気で心配したんだぜ。日没までには戻るって約束したのに、ぜんぜん戻ってこないんだもん」


 類は斗真に笑顔で言った。

 「でも、なんとかなったじゃん」


 「なんとかなったじゃん、じゃねえよ。ビビらせやがって」


 「ごめん、ごめん」


 「まあ、ともかく……」真剣な面持ちで三人に感謝した。「本当におつかれさまだったな」


 「尊敬しろよな」


 「尊敬しまくりだ。俺たちのためにありがとな」


 純希が類に言った。

 「東京に帰ったらラーメンでも奢るよ」


 翔太も言った。

 「俺にもぜひ奢らせてくれ」


 ふだんはチャーシュー麺の大盛りだが、肉はしばらく食べられそうにない。類は、滅多に注文しないメニューを頼んだ。

 「野菜ラーメン大盛りよろしく」


 純希と翔太が返事した。

 「はいよ」


 食べ盛りの男子は学校の近くにある食堂に行くたびに、ラーメンとチャーハンのセットと餃子を注文するのだが、純希も肉は食べれそうにないので、あえて餃子は言わなかった。


 「ついでにチャーハンもつけとくよ」


 会話する類は、口数の少ない健に目をやった。横顔はまだ暗く、落ち込んでいるように見えた。明るい性格の健でも、まなみの死を乗り越えるには時間がかかりそうだ。しばらくのあいだは、何も訊かずにそっとしておいてあげよう、と思いながら会話を続けた。


 「ラーメンにチャーハン、期待してる。絶対に忘れるなよ。大人になったらビールとセットで奢れよ」

 

 純希は軽く笑いながら言った。

 「大人になっても奢るのかよ」


 明彦が会話に加わった。

 「俺にもラーメン奢ってくれよな」


 純希は笑みを浮かべて返事した。明彦が想いを寄せる相手を知っている。

 「結菜にでも奢ってもらえよ」


 結菜が明彦のボストンバッグに触れた。

 「あたしが持つよ」


 「ありがとう」明彦は、結菜にボストンバッグを渡した。


 「今夜はゆっくり休んでね」


 「うん」


 「東京に戻ったら明彦が好きな味噌ラーメン奢るね」


 「大盛りでね。ついでにチャーハンもよろしく」


 「わかったよ」


 一同は三人を取り囲むようにして焚き火に歩を進め、大地に腰を下ろした。赤々と燃える炎を見つめた類は、疑問を感じた。

 「どうやって火を起こしたの?」


 純希がジッポを見せた。

 「これだよ。途中で拾ったんだ」


 類は感心した。

 「へー、ちゃっかりしてるな、お前」


 純希は言う。

 「ちゃっかり? しっかりしてるって言ってほしいね」

 

 リュックサックを肩から下ろした類は、一同に顔を向けて、真剣にいまの気持ちを打ち明けた。


 「あのさ……当たり前かもしれないけど、飛行機が墜落してからふつうの会話をしてないよな? いつもみたいに腹から笑ったりとか、ごく日常的な会話ってやつ。

 きょうは大勢のひとたちが死んだ。俺たちだけが助かって、それなのに俺たちだけが笑う。不謹慎なんじゃないかとか、やっぱり考えちゃうじゃん。

 だけど、ずっとこのままだと気持ちが滅入っちゃうから、俺はいつもどおり振る舞って救助を待ちたいんだ」


 笑いがないと平常心を保てそうにない―――


 いくらポジティブな類でも、無惨な死体が頭から離れなかった。


 とくに……椰子の木の葉の下に落ちていた幼い子供の前腕が脳裏に焼きついている。


 性別すらわからない、あの小さな前腕を、いますぐ海馬から切り離せるものなら……。


 明るく振る舞わないと、気が狂いそうだった。


 生きていたかったんだよな、君も―――


 旅客機の墜落現場の悲惨な光景が鮮明に目に浮かんだ類は、涙をこらえて一同に訊いてみた。

 「みんなはどうしたい?」


 純希も笑って何もかも忘れたい気分だった。だからこそ、あえて明るく振る舞おうと努力していたのだ。


 「俺も類の意見に賛成。全員が心身ともに疲れている。このままだと、ネガティブな感情に引っ張られてしまう。そうなると、うまくいこともうまくいかないから」


 純希と同じ思いだった斗真がうなずいた。

 「俺も同感」

 

 綾香が苦笑いしながら言った。

 「由香里と道子と恵はオカルトに走るし、明るく振る舞わないと、余計に気が滅入りそう」


 由香里は恐怖を感じた理由を言う。

 「周囲の木々もびっくりするくらい硬いの。植物とは思えないよ」


 類は由香里に言う。

 「でも俺たちはふつうに椰子の実をもぎ取ってきたけど、植物が硬いだなんて思わなかったよ」


 光流もうなずく。

 「うん。植物はふつうだったと思うけど……」


 明彦も同じ意見。

 「俺もこれといって何も感じなかったかな」

 

 「おかしいなぁ……すごく硬かったのに……」と由香里が不思議そうな表情を浮かべて、椰子の実を収めたボストンバッグをまじまじと見た。植物を摘み取ろうとしても無理だった。たかが葉っぱ一枚を引きちぎれずに、あれだけ奮闘したのに……。「もしかして、場所によって質感がちがうとか?」と、疑問を言った。


 植物に触れた類は、葉を引きちぎろうとした。植物とは思えない質感に驚く。

 「何? この葉っぱ……。椰子の実は簡単にもぎ取れたのに……」


 由香里は類に意見を求める。

 「でしょ? ここの植物ってへんだよね? やっぱり場所によるのかも。どう思う?」


 「大丈夫だ。救助が来たら、こんな無人島とはおさらばなんだ。余計なことは考えないほうがいい。前向きにいこうぜ、前向きに」由香里に意見を求められた類は、それに答えず、話を逸らすかのように、立ち上がって大笑いしてみた。「ほら、みんなも笑えよ! 俺たちは日本に帰る! なんとかなるって」


 気味が悪いと思えば思うほど、恐怖を感じる。 “救助が来たら、こんな無人島とはおさらばなんだ” と、心の中で何度も同じ言葉を繰り返した。


 疑問は頭の隅に追いやった。余計なことは考えたくない。頭がパンクしそうだ。そんな類に続いて、明彦や光流も笑い声を上げた。


 遺留品や椰子の実も、生きるために手に入れた。それなのに……夥しい死体が頭から離れない。


 覚悟はしていたつもりだった。


 全員でわざとに笑った。鮮明に目に浮かぶ死体を忘れたかったのは、旅客機の墜落現場に戻った三人だけではない。みんな同じなのだ。


 笑うことによって忘れたかった。


 体に付着した他人の血も何もかも……。


 互いに顔を見合わせて大声で笑った。


 「笑っちゃえ」美紅が結菜の肩を笑いながら押した。「ほら、笑おうよ」


 美紅を押し返した結菜は、綾香の肩を押す。わざとに笑った綾香は、類の口癖を言う。

 「なんとかなる!」


 道子や恵も声を上げて笑ってみた。そして、由香里も笑ってみた。三人は、笑う演技すら難しい精神状態だった。それでも、少しでも気持ちが楽になるなら……そう思って笑いを演じてみたのだ。

 

 翔太が言った。

 「俺たちはいつもの調子で乗り切る! で、生きる!」


 類が言った。

 「その調子だ。笑えばいい」


 純希が高らかに笑ながら言った。

 「みんな、いいかんじだ」


 お世辞にも “いいかんじ” の笑い声ではなかった。まるで大根役者のようにぎこちなかったが、明るく振る舞うことにした。泣いても笑っても、この困難な状況を耐えるために頑張らなくてならない。


 どうせなら笑おう―――


 私物を手にすれば少しは元気が出るだろうと考えた類は、綾香と結菜のバッグを収めたボストンバッグを指さした。


 「お前らのバッグ見つけてやったぜ」


 ふたりはボストンバッグを覗き込んだ。反応が薄い綾香とは対照的に、結菜は嬉しそうに自分のショルダーバッグを手にした。

 「あったんだ、信じられない!」


 綾香も籠バッグを手に取った。

 「あたしのバッグには、ハンカチとかポケットティッシュくらいしか入ってないから、役に立たないかも……」


 「化粧ポーチが重要なの。教室だろうと無人島だろうと、化粧はあたしの命だからね」結菜は、ショルダーバッグのチャックを開けながら言った。「スマホ発見。ここだと懐中電灯と時計の代わりにしかならないけど、ないよりマシか」


 「この籠バッグはお気に入りだった……」過去形で言う綾香。「おこずかいを貯めて買ったんだ……」


 せっかくバッグが見つかったのにどうして喜ばないんだろう? と、類は暗い表情の綾香を不思議に思いながらも、籠バッグを大事にするように言った。

 「それなら失くさないように持ってないとな」

 

 複雑な心境の綾香。

 「このバッグは、大勢のひとたちが亡くなった場所に落ちていた。悲劇の品みたいで、正直、もう見たくないんだ。申し訳ないけど……ここに置いていきたい」


 元気が出ると思っていた。じっさいはその逆だった。せめてもの心遣いが余計なお世話になってしまうなんて誤算だった。

 「綾香のものなんだから好きにしろよ」

 

 大地にバッグを放置した。

 「うん、ごめんね」


 「あたしは感謝してるよ、ありがとう」異常なまでに化粧に執着する結菜は、ショルダーバッグの中を確認する。

 

 類は笑みを浮かべて返事した。

 「どういたしまして」


 ショルダーバッグの中を必死に覗く結菜の顔が青褪める。

 「ない……。鏡がない。化粧ポーチそのものがないの」


 類は言う。

 「鏡くらいなくてもいいじゃん。そのバッグ高いんだろ?」


 結菜にとっては、ショルダーバッグよりも鏡が重要だったのだ。

 「そうだ……あたし、飛行機の中でずっと鏡を見ていて、化粧直しに使った直後にエンジンが発火したのよ。大事なものは全部機内に……」綾香に訊く。「鏡持ってない?」


 綾香は首を横に振った。

 「ごめん、残念だけどキャリーケースの中。美容に関してはものぐさだから、見るとしたらトイレに行ったときくらいだもの」


 「そうだったよね」結菜は、がっかりしながらショルダーバッグを肩に掛けた。「しかたないよね……」


 綾香は言う。

 「鏡なんか見なくても可愛いから大丈夫だよ」


 結菜は小声で呟いた。

 「あたしはブスだ……」


 聞き取れなかったので訊き返す。

 「え?」


 結菜は言う。

 「なんでもない……」


 綾香はふとした疑問をいだく。

 

 (入学当時から鏡への執着心が半端じゃない……。どうしてそんなに鏡ばかり見るんだろう? ナルシストなわけじゃない。コンプレックスが気になってしかたがないひとみたい。可愛い顔してるのに……)


 表情が暗くなった結菜を意識した明彦が明るく振る舞う。

 「ほら、みんな。ココナッツジュースでも飲もう。喉カラカラだろ? 結菜も飲もう。きっと元気が出るよ」


 「ちょっと待って、それよりも……」と明彦に言った類は、この場で待機していた一同に、リュックサックのチャックを開いて中身を見せた。


 その瞬間、全員が演技ではない自然な笑みを浮かべた。


 飴やキャラメルやチョコレート、ポテトチップス、ペットボトルに入ったオレンジジュースが一本とお茶が二本。


 目を輝かせた純希が、お茶のペットボトルを一本取った。あっさりした飲料が好きなので、通学途中にコンビニで冷えた緑茶をよく買う。こんな状況だからこそ、いつもの味が恋しくなる。


 「椰子の実の解体に時間がかかりそうだから、まずはこれで喉を潤してからにしようぜ。もう我慢できないくらい喉が渇いてるんだ」

  

 落ち込んでいた健も喉が渇いていた。

 「俺もお茶が飲みたい」


 斗真も言った。

 「俺も」


 ペットボトルのキャップを開栓した純希に、美紅が言った。

 「まずは、苦労して墜落現場まで戻ってくれた類たちが飲むべきじゃない? あたしたちはそれから」


 たしかに美紅の言うとおりだ。純希は、いますぐ飲みたい気持ちを抑えて、類にペットボトルを差し出した。

 「だな、お前らの特権だ」


 類は、差し出されたペットボトルに視線を下ろした。


 特権―――


 それならすでに貰った。


 機体の中で水を飲んだ。


 それは三人だけの秘密。


 墜落現場からの帰りも、椰子の実を三人で分けて水分を摂取した。


 収獲したのは七個。一個食べたので残り六個。


 ふたたび喉の渇きが我慢できずに、一本あったミネラルウォーターを三人で分けて飲んだ。


 行きよりも帰りのほうが体力的につらかった。椰子の実をひとつ食すことで、少しでも体力が回復するなら……そう思って分け合ったのだ。


 帰りが遅かった理由は、ココナッツジュースを飲むまでに悪戦苦闘したから。


 全部、三人だけの秘密。


 だが類は、「それじゃあ、いただきます」とペットボトルを受け取った。


 超距離を歩いたのだ。このお茶を全部飲み干したい気分だった。類はその気持ちを抑えて、ペットボトルを明彦に渡した。そして、お茶の回し飲みが始まった。


 明彦と光流が飲み終わると、ペットボトルをひったくるように取った純希は、勢いよくお茶を飲み込んだ。


 「落ち着けって」純希の勢いに光流は驚く。「全部飲むなよ」


 限界だった。ようやく喉を潤せる。いつもならお弁当を食べるときにひとりで飲む量のお茶を、みんなで分け合わなければならない。理性で自分を抑えた純希は、ペットボトルから口を離した。もっと飲みたい気持ちを我慢して、斗真にペットボトルを渡した。


 「こんなに美味いお茶ってあったんだな」

 

 ペットボトルを受け取った斗真もすぐにお茶を口にした。渇いた喉を潤す飲料を持ってきてくれた三人に感謝する。

 「美味い! 類たちのおかげだな」


 飲み足りない純希はボストンバッグの中を覗いて、さっそく椰子の実を手にした。

 「どうやって飲んだらいいんだ?」


 「貸せよ」類は、椰子の実を純希の手から取った。「てゆうか、お前らレディファーストだろ」


 斗真は、綾香にペットボトルを渡した。

 「あ、わるい。ついつい」


 「女の子はか弱いの」ペットボトルを受け取った綾香は、すぐさまお茶を口に含んだ。「美味しい。三人に感謝だね」


 斗真は呆れた表情を浮かべた。

 「昼間は女性差別とか言ってキレたくせに都合よすぎ」


 純希も言った。

 「将来はわがまま弁護士だな」


 綾香は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 「細かいことは気にしない。そんなんだからふたりともモテないの」


 “お前は気が強すぎてモテないんだ” と、ふたり同時に言い返してやりたかったが、綾香の倍返しが怖いのでやめておく。


 「ほっとけ」と、ふたりは揃って声を発した。


 お茶の回し飲みが始まった直後、類が言った。

 「それじゃあ、椰子の実の解体ショーでも始めるか」


 純希は類に訊いた。

 「やり方、知ってるの?」


 類は答えた。

 「あ、うん。なんとなくね」


 ジャングルで喉の渇きが我慢できずに飲んだ。そのときに要領は覚えた。とくに高度なテクニックを要するものではない。


 類はナイフの代わり拾った鉄屑をボストンバッグから取り出した。ストローの挿入口を作るために、椰子の実に鋭く尖った鉄屑の先端を突き刺し、何度も腕を振り下ろした。切れ味のよいナイフや鋸があれば簡単なのだが、鉄屑で頑張るしかない。


 一同は類の手元に注目した。筋肉疲労の腕を小刻みに震わせている類を見て、純希が椰子の実に手を伸ばした。


 「貸せよ。単純に椰子の実に穴を空ければいいんだろ?」


 類は、椰子の実を純希に差し出した。

 「うん。要領さえ掴めばイケるよ」


 椰子の実を解体するのは初めてのはずなのに……。純希は類の口ぶりに疑問を感じた。

 「どうしてココナッツジュースを飲むための手順を知ってるんだ?」


 類は適当にあしらおうとした。

 「本場で椰子の実を丸ごと買っても困らないように、ユーチューブであらかじめ確認しておいたんだ」


 類が下調べをするとは珍しい。

 「お前が? 明彦に感化されてきたんじゃないのか?」


 言葉を噛む。

 「か、かもな。友達だし」


 一瞬だけ類に目をやった明彦が言う。

 「どんなことでもあらかじめ確認しておいたほうが安心だろ?」

 (類がそんなことするわけないじゃん。少しは俺に感化されてほしいくらいだよ)


 「だけど行き当たりばったりも楽しいよ。ワクワクする」明彦に言った純希は、類から受け取った椰子の実に鉄屑を突き刺した。想像したよりも硬い質感に少し戸惑う。「意外としっかりした実の果実なんだな」


 由香里が言う。

 「だからこの島の植物は硬いんだよ」


 純希は由香里に言う。

 「そういう硬さじゃない。たぶん、サイパンだろうと東京のスーパーだろうと同じ硬さだと思う。てゆうか、もういい加減、オカルトから離脱しろよな」


 純希は椰子の実の先端を切り落とす。すると内部の白い繊維が出てきた。ここから先がわからないので類に渡す。


 椰子の実を受け取った類は、繊維の柔らかい部分を探して割り箸を挿し、何度も回して穴を押し広げてからストローを挿入した。


 「よし、これで飲める。ストローは一本しかないからなくさないように。お前から飲んでいいよ」


 純希は類に言った。

 「いや、いいんだ。まずは、頑張ったお前らが先に飲んだほうがいい」


 本当は帰り道で飲んだ、と……正直に打ち明ければ嫌なやつって思われるかもしれない。だけれど、どれだけ水分を摂取しても、汗になってしまうのだからしかたがない。わずかに罪悪感があったものの、堂々と振る舞った類は、ストローを口に含み、初めて味わうかのように飲んだ。爽やかな南国の味が舌の上に広がると、自然と笑みが零れた。何度飲んでも美味しい。


 「うん、うまい」類は明彦に椰子の実を渡した。「飲めよ」


 椰子の実を受け取った明彦も、初めて飲むような表情を浮かべた。

 「体液と似たような浸透圧だからスムーズに体内に吸収されるんだ」


 類は明彦に言う。

 「こんなときまで薀蓄(うんちく)はいいから」


 綾香が類の言葉にうなずく。

 「そうそう」


 結菜も言った。

 「爽やかで美味しい、それだけでじゅうぶんだよ」


 健康的なダイエット飲料としても有名なココナッツジュースは雑誌にも掲載されているので、流行りものが好きな結菜はその味を知っていた。だがそれは、店頭販売またはネットショッピングで購入したココナッツジュースだ。


 採れたての椰子の実にストローを挿して飲む。サイパンにて本場の味を楽しみにしていた。それなのに、皮肉にもサバイバルで本場の味を知ることになるとは。


 考えてはいけない。しかし、つい考えてしまう。


 いまごろサイパンだったのに―――


 綾香は、ため息をついた結菜に顔を向けた。

 「どうしたの? 大丈夫?」


 「うん。なんでもない」返事した結菜は、リュックサックを覗いてみた。メンズのスニーカーが入っていたので、女子に訊いてみた。「まだ一度も足をとおしてないみたい。あたしが履いてもいいかな?」


 顔を強張らせた由香里が言った。

 「たとえピッタリでも、死んだひとが持っていた靴を履きたいとは思わないよ」


 美紅もこれには同じ意見。

 「あたしも嫌だな」


 恵も同じだ。

 「あたしも」


 結菜はスニーカーを手に取り、まじまじと見て確かめる。

 「でも新品だよ」


 道子が言った。

 「新品でも抵抗あるよ。だから結菜が履いてもいいよ」


 「それならお言葉に甘えて、あたしが履いちゃう」結菜は、足の痛みが減軽されるなら気にしない。綾香にも訊いてみる。「いいよね?」


 「うん」綾香は返事する。「あたしはぺたんこサンダルだから大丈夫。結菜が履きなよ」


 サンダルを脱いだ結菜は、スニーカーの踵を踏んでスリッパのように履いた。

 「超楽ちん。ありがとね、類」


 「いえいえ、なんの」と、結菜に返事した類は、腰を上げて、ここよりも植物が茂った場所へ歩を進めた。


 綾香は類を見上げた。


 (無理してるのかな……そりゃそうだよね、墜落現場に戻ったんだから……)


 続いて明彦と光流も腰を上げた。


 光流が類に言う。

 「俺らも行く」


 類は返事する。

 「うん」


 恵が光流に声をかけた。

 「迷ったら大変だから遠くに行っちゃ駄目だよ」


 「大丈夫だよ。すぐに戻るから」と、微笑みを浮かべて返事した光流は、類が向かった方向へ歩を進めた。


 健が三人の背中を見やった。

 「人生の最悪ってやつを、きょう一日で体験した気分だ。あいつらも疲れたよな」


 翔太が言った。

 「あいつらもっていうより、あいつらが一番疲れたよ」


 類と幼いころからのつきあいの綾香が言った。

 「しばらく放っておいてあげよう。類は気持ちの切り替えが早いから、あのふたりを元気づけれるはずだよ」


 「そうだな」綾香に返事した翔太は、三人の後ろ姿を一瞥した。


 鬱蒼とした茂みの中へ入った三人は、会話が漏れない位置まで歩き、大地に腰を下ろした。膝を抱えて一息つく。


 夜空を見上げると、星々が見える。大自然のプラネタリウムは、都会では味わえない美しさだ。


 仲間たちといた場所よりも、こちらのほうが明るい。だが、大地にはシダ植物が生い茂っているので、横になるのは難しい。だからここを寝床に選択しなかったのだろう。


 どちらにせよ、ジャングルで寝そべるよりも砂浜のほうがよい。長距離を歩くために必要な椰子の実を収獲できてよかった。あす浜辺に到着できなかったとしても水分補給ができる。


 それぞれが考えを巡らせていた、そのとき、旅客機の墜落現場の光景を鮮明に思い出した光流が、吐き気を催し、手で口を覆った。


 類が言った。

 「吐いたら体内の水分が失われるぞ。貴重なココナッツ風味のゲロは飲み込めよ」


 光流は額に薄っすらと脂汗をかいた。空腹なので胃の中に固形物は入っていない。喉まで上がってきた胃液が、口腔内に嫌な酸っぱさを感じさせる。それでも吐き出すのを我慢して、涙目になりながら飲み込んだ。


 「ゲロを飲み込んだのは産まれて初めてだ」


 「本当に飲んじゃったの?」類は悪戯っぽい笑みを浮かべて訊く。「感想は?」


 「最低に決まってんじゃん」憤然とした。「てゆうか、お前が飲めって言ったんだろ」


 「そう怒るなって。それにしてもあれだけ心がボロボロだったのに、みんなに優しくしたり、本当に頑張ったな。お前は弱くなんかないよ」


 自分の欠点は把握している。その欠点と向き合うことが最も難しく、最も大切なこと。改善しようと努力しているものの、切羽詰まるとうまくいかない脆弱な心。

 「正直言って、みんなを元気づけるとか、そういうの苦手だし、この役割は自分には重いかなって思った。ほら、俺って、メンタルが弱いうえに自己中心的なところもあるから」


 類は申し訳なさそうに言った。

 「そんなことないよ。お前らを巻き込んじゃってごめんな……」


 最初に類を責めたのは自分だ。もう言わないと約束した。

 「お前のせいじゃないって。あのときは俺もどうかしていた」

 

 明彦も言った。

 「もう考えるな。誰も悪くないんだ」


 「けど……さすがに落ち込んじゃって……」うつむく類。「落ち込んでもしかたないけど……」


 明彦は言う。

 「お前らしくない。落ち込むよりも、あすを考えたほうがいい」


 明彦の言うとおりだ。

 「そうだな、言えてる」


 光流が疑問を言った。

 「あのさ、話がぶっ飛ぶんだけど……墜落現場に向かう途中で、この惨事は『ネバーランド 海外』が仕組んだ罠だって言ったじゃん。

 由香里みたいなことを言うかもしれないけど、この島はなんか奇妙っていうか……口でうまく言えないけど、墜落現場で収獲した椰子の実以外の植物はやたらと硬いし気味が悪い。ふつうの無人島じゃない気がするんだ」


 類がその疑問に答える。

 「たしかに俺も不自然さは感じてる。けど、時差と同じで考えても答えは出てこないわけだし、その疑問は救助された瞬間に解決する」


 光流は訊き返す。

 「解決?」


 類は説明する。

 「だって、日本に帰ったら、この島に二度と足を踏みれることはないんだから解決だろ?」


 類らしい考えに納得した。

 「そういう意味ね」


 明彦も言った。

 「俺たちはいつもとおり新学期を迎える、それだけだ。だから俺も細かいことは気にしないようにした。いろいろ考え込んじゃうのは俺の悪い癖だから」


 「だよな、そうだよな」思い詰めやすい性格の光流は、明彦のように類の考えに合わせようとした。「いつもどおり新学期だ」


 「そういうこと」と、光流に言った類は腰を上げて、スマートフォンの画面を見た。


 現在、スマートフォンの画面に表示されてる日付と時刻は―――


 <8月1日 火曜日 20:55>


 まだ完全に気分がよくなったわけではないが、ここにいても意味がない。それに今夜はいつもより早く眠りに就きたかった。長期の休みに入ると、夜型人間の類の就寝時間は深夜一時から三時。明彦や光流も同じくらいの時間帯に床に就く。三人にとってはかなり早い就寝時間だが、あすに備えて眠ることにした。


 類は言った。

 「今夜はさっさと休んで、日の出の時間には出発しよう」


 明彦も立ち上がった。

 「賛成。涼しい時間帯に出発しよう」


 類は足を踏み出した。

 「よし、それじゃあ、みんなのところに戻ろう」


 光流も立ち上がり、両腕を空に突き出して、背筋を伸ばした。

 「本当に疲れたな。俺も横になりたい気分だ」


 明彦は真剣な面持ちでふたりに訊いた。

 「あのさ……飲み物を飲んだのも、椰子の実を食べたのも、俺たち三人だけの秘密だよな?」


 類も真剣な面持ちで答えた。

 「うん。一生の秘密。俺たちは墜落現場まで戻って頑張ったんだ」


 光流も言う。

 「俺たちは悪いことをしたわけじゃない。水分補給しないとヤバかったんだ」


 わずかに罪悪感があった明彦。

 「じゃないと俺たちが脱水症状になっていたんだよな……」


 「深く考えるな、救助が来たらすべて解決するって、さっきから言ってるじゃん」前向きな類は冗談を言う。「爺さんになったときに思い出話でもしようぜ。みんなに黙って椰子の実食べたって」


 明彦は思わず笑う。

 「爺さんね。そうだな」


 だが光流は、真面目な面持ちでふたりに訊いた。

 「そのころには、目にした死体の記憶が少しでも薄れているだろうか?」


 類は言った。

 「とりあえず……爺さんまで生きてみたらわかるよ」


 明彦は言った。

 「人間の人生なんて長いようで短いから……」


 光流はぽつりと言う。

 「なんだか……十七歳の会話じゃないよな……」


 類は言う。

 「戻ろう。とにかく俺たちは生き延びるんだ」


 三人は、焚き火を囲む一同の許に戻った。居眠りが得意な翔太は、仰向けになり、眠そうな顔をしていた。自分たちもすぐに眠りに就く。


 類は純希に声をかけた。

 「俺たちも寝よう。あしたは日の出くらいに出発して、浜辺を目指そうと思う」


 純希が言った。

 「俺らもそう言いあっていたところだ。話の途中で翔太は寝ちまったけど」


 辛うじて目を開けている翔太が、純希に言う。

 「まだ寝てません」


 純希は軽く笑って言う。

 「一分後には寝るだろ、絶対」


 翔太は眠そうな顔をして言う。

 「ぜんぜん、大丈夫。余裕で起きてる」


 大地に腰を下ろした類が、焚き火を見て言った。

 「ほんと、お前らが火を起こしてくれてよかったよ。獣が出たら怖いもん」


 純希は言う。

 「けど、日の出まで持たないよ。本当は大きなキャンプファイアーみたいなのを作りたかったんだけど、小さい焚き火が限界だったんだ。木も少し湿気っていたから火を点けるのに苦労したんだぜ」


 明彦が言った。

 「だと思う。焚き火を見た瞬間、よく点火できたなって感心したもん」


 純希はスニーカーを脱いで素足を見せた。

 「火種は俺様の靴下だ」


 類は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 「なるほど、だから焚き火が臭ったのか」


 「そんなわけないだろ」純希も冗談を言う。「癖になるにおいのはずだ」

 

 横になった綾香が、類と純希に言った。

 「小学生じゃあるまいし、馬鹿なこと言ってないで寝るよ」


 類が返事した。

 「言われなくてもすぐ寝るよ」


 虫が苦手な恵は、大地を這う小さな虫が気になった。キャンプの経験はあっても、テントを立てずに、直接、地面に横たわるのは初めてだ。


 「寝る前に虫よけスプレーをかけたい気分だよ。てゆうか、ウマバエとかいないよね?」


 「ひとにも寄生する最悪の蛆虫……」美紅が顔を強張らせた。「マジで怖すぎる」


 明彦が言う。

 「ウマバエの主な生息地は、中央アメリカや南アメリカとか熱帯地域だからここにはいないよ」


 明彦の言葉を聞いて、恵と美紅は安心した。

 (ここにはいない。よかった)


 斗真が明彦に言った。

 「ユーチューブの強烈だよな。観たことある?」


 「あるよ」明彦は返事した。「実験的に一匹くらいなら手に寄生させてもいいかも。成長過程を見てみたい」


 斗真は驚愕する。

 「うそ! 悪趣味すぎるだろ!」


 光流が顔を強張らせた。

 「やっぱり勉強のしすぎで脳みそイカれてるよ、絶対」


 眠りを妨げられた翔太が、明彦に言う。

 「お前の発言にびっくりして目が覚めちゃったじゃん」


 明彦は興味がある。

 「そう? おもしろそうだと思うけど。じっさいに手の甲に寄生させた昆虫博士がいるよ。ユーチューブで観たもん」


 結菜が言った。

 「気持ち悪くて寝れなくなるからウマバエの話はやめて」


 恵も言う。

 「あたしからもお願い」


 明彦は適当に返事した。

 「はいはい」


 「あ、そうだ」道子が何気なく言う。「大量のウマバエが皮膚から顔を出してる瞬間って、角栓そっくりなんだよね。マイクロスコープで撮ったユーチューブの動画、つい思い出しちゃった」


 純希が話に乗った。

 「それ、俺も観た! 鼻パックを剥がしたあとに付着した角栓なんかすごいぜ、激似だ」


 鼻パック愛用者の結菜と恵が怒り、道子と純希に向かって声を荒立てた。

 「超キモい!」


 綾香が苦笑いする。

 「どんだけ毛穴に角栓詰まってるのよ」


 以前、理沙が自宅に泊りに来たときに、鼻パックを試したことがある類は鳥肌が立った。

 「いまのはお前らが悪い。結菜と恵に怒られて当然。今後、マジでその寄生虫ネタは禁止」


 翔太が道子に言った。

 「俺も寄生虫ネタは聞きたくない」


 道子は、本気で怒られる前に寝たふりを選択した。

 「おやすみなさーい」


 純希も道子に続いた。

 「俺も疲れたからおやすみ」


 「気持ちわりぃ話は終了して、そろそろ寝ようぜ。あしたは早いんだから」と言った類は、ふと疑問を思い出したので、明彦に顔を向けて訊いてみた。「あ、そうだ。寝る前に質問なんだけど、この辺の日の出って何時くらいなんだ? サイパンだって日本とはちがうよな」


 「さっき日の出には出発するって言ってたから、だいたいわかってるのかと思った」と言った明彦は、類の質問に答えた。「この時期のサイパンなら六時くらいだったかな? でもここはサイパンじゃないけど、どっちにしても日本よりもけっこう遅いと思うよ」


 「へぇ、そんなに遅いんだ。夏なら東京だと五時には明るくなってるのにな」


 類たちも瞼を閉じようとしたとき、由香里が呟くように言った。

 「この島は気味が悪い。植物も硬いし、雨も降らない。別の意味でウマバエよりも怖いよ」


 類が返事をした。

 「たまたま降らなかっただけ。あしたは降るよ」


 光流も由香里と同じ疑問を感じていた。考えれば考えるほど恐怖に駆られる。だからこそ、自分のためにも、類に言われた言葉を口にした。

 「救助が来たら何もかも解決する。それまで頑張ろう。みんな一緒だから平気だよ。ひとりじゃない」


 光流の言葉に勇気づけられた由香里は微笑んだ。

 「そうだよね。ありがとう」


 「いいんだよ。今夜はゆっくり眠ろう」


 「うん」


 怯える由香里に優しく接した光流に目をやった類は、口元に笑みを浮かべて眠りに就いた。


 完全にいつもの自分を取り戻したな、光流のやつ―――

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