BREAK FREE

坂口航

結末は全て序章から始まる

 ――アイツは言った、『幸福が何かは人によるが、自分を不幸だと思っている奴が幸福になることは無い』と。


 ――あの人は言った、『信用したのなら、裏切られても文句を言うな。裏切られても良いから信用するのだ』と。


 ――あの男は言った、『大事な人がいるのなら大事にしないとな。その人の為に誰かを殺せるくらいに』と。


 ――あの子は言った、『力なんて無い方がいいのよ。でも、その力で喜んでくれる人がいるから、私はこの力を使うのよ』と。


 ――そして、彼は俺に向かって確かに告げた、『時間とは消費するものじゃない、進めるものだ。生きて行く中ですべき、最も大切なのは時間を、時代をどこまで進められるかだ』



 この言葉が、俺を確かにここへと導いたのだろう。俺が成すべき事を見つけ出してくれたのだろう。


 未だに悔いは残る。もっと方法があったのではないかと思い返す事もある。


 だが確かに決めたのだ、俺はこの道を行く事を、そして正しく力を使う事を。誰かの為に使う事を。


 臭い事を言ってる自覚はある、少し恥ずかしい気もする。それでも言わなければ、思わなければいつか忘れてしまう。


 時間の波に呑まれてしまうと、そのまま歴史の大河深くに沈んで行ってしまう。


 だからこうして再び思い、心で高らかに宣言するのだ。


 俺が成すべき事は、生涯の全てを使ってすべきこと、それは――――

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