第6話「問い」
「……はぁ」
思わずため息が出た。だが、嘆息したところで状況は改善しない。コアの光に照らされて見えるのは、ただの土で出来た壁のみ。通路の一つもないのは、コアの中の力を無駄に浪費しない為とか、おそらくそんな理由だろう。
「決めなきゃ、ならないか」
もう答えは出たようなモノというか、それを選ばざるを得ないような状況だが。僕が片意地を張って殺されれば、このコアは人殺しも辞さない様な連中の手に渡り、犠牲者を出す。そうして出た犠牲者は、僕が自己満足の為に出したようなモノだ。
「お前を守り抜くには、力が居るよな?」
「概ね、そうなるかと」
「つまり、何かを殺傷してお前に力をためておかないと、守ることもできないかもしれないのか……」
本当にろくでもない二者択一だと思う。
「僕がダンジョン運営なんてのを好きになれないのは、『そういうところ』もだよ」
状況が、ダンジョンの主を人殺しに追い込むのだ。それは自衛の為だったり、生き物が食事をしなければ飢えるように人殺しをしないと生きていけない存在に変えられてしまったりと色々あるが、無理やりやりたくないことをさせられるとかたまったもんじゃない。元凶が居て、意趣返しが、復讐が今できるなら、すぐにでもそいつをぶちのめしたい、そう思う。
「まずいくつか聞いておくことがある」
もし、僕がダンジョンを使うとするなら、避けて通れないのが力の補充。つまり、生き物を殺傷することだが。
「『迷宮が力を使うには、迷宮内部もしくはコアに触れた生命体が死傷する必要がある』そう言っていたな? それについてもう少し詳細に確認しておきたい」
まず、死傷する原因。
「死傷するにあたって、僕もしくは僕の意志をに従った者、もしくはダンジョンの罠などによるものでなくてはならない、という縛りはあるか?」
直接間接関係なく僕が手を下して殺した場合だけがダンジョンに活用できるとなると、僕が生き延びてコアを守れたところで意味が殆どなくなる。このコアへの犠牲者を減らすための行動で誰かを殺さなければいけないとするなら、他者の手に渡ってそいつが犠牲者を出したのと差なんてほぼないのだから。せいぜいが誰を犠牲者にするかという選択権を握る人間が違うくらいだ、だから。
「いいえ。究極的に言うなら老衰による死亡でもそこが迷宮内であれば、私は力を得られます」
「やった」
だから、コアの答えを聞いた時僕の口は快哉を叫んでいた。これなら、僕が考えていた中では一番マシな方法が可能かもしれない。
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