第17話 パーティーメンバーが最強過ぎる

 理想を高くって言ったから、パーティーのメンバーも強い人達がいいな。

 ってな訳で、そんなことを言ったらグラゼル神がそれならお任せ、とか言ってどこかへ行った。

 で、帰ってくるまで何してようかと、長い廊下に突っ立っている。早く帰ってこーい。

 ここから動く訳にも行かないしなぁ。どこか案内してくれたらいいんだけど。誰かが来るわけでもなく。


 さっきから誰一人通ってないんだけど。どうすればいいのさ。路地みたいな所なのかな?ここは。


「グラゼル神~」


 呟いても誰もこないっつーの。はぁ。グラゼル神、早くしてくれ~。

 あんなこと言わなければよかったな。そしたら、どこか行かなかったかもしれないのに。


──ドトドドドド


「うわっ!」


 驚いた。グラゼル神が、猛ダッシュでこちらに来ていた。

 普通なら、そんなに走らなくてもいいのにって思うでしょうけど、私は走ってくれる方が嬉しい。


 だって、一人が嫌なんだもん。


「待たせたな!」

「はい。待ってました」

「待ってたんだな!」


 はい。待ってました~! 

 私はニッコリ笑う。笑うと、グラゼル神もニッコリ笑った。


 ホッコリするね。


 それで、本題なんですけど。私のパーティーメンバーになる方達は、どこにいらっしゃるのですか?


「こっちだよ」

 

 さっすがグラゼル神。私の気持ちが読めてらっしゃる。

 そして、グラゼル神について行くと、そこは食堂みたいになっていた。

 机が3列にズラっと縦に並んでいて、中央には、グラゼル神が座るのだろうか。

 王座のようなものがあり、その両端には旗がかけられている。


 相当でかいオラゲーションなのだろう。

 

 そこの食堂には、3人居た。やけに食堂が広いので、3人が小さく見えてしまう。


「へ~い!」


 と言って、手を振るとその3人は手を振り返していた。

 グラゼル神と、信者達は仲がいいのだろう。

 

 グラゼル神がその3人に、駆け寄っていくので私もそれについていく。


「はーい!この人たちが、胡桃のパーティーメンバーだよ~」

「はぁ……そうなんですね」


 その3人は、ぺこりと頭を下げる。すると、その3人の中で唯一の女性が口を開いた。


「初めまして。私はガーディアンの ハトリ=フレーディア って言うの。宜しくね」


 ハトリさんね。なんか、ハトリって前世にも居そうな名前だな。


「初めまして。田中 胡桃です」

「タナカが名前かしら?」


 そうだった。ここは、異世界で自己紹介の仕方すら分からない。

 でも、田中が名前?って聞かれるってことは、英語の自己紹介と同じってことね。

 分かったよ。


「いえ!胡桃が名前です。胡桃 田中です」

「分かりました。クルミって呼ぶね」


 結構フレンドリーな人なんだな。私もフレンドリーな感じで、大丈夫なのかな?


「はい!ハトリって呼ばせてもらっても?」


 うぎゃあ。無理だ。

 フレンドリーなんて無理だ。

 つい前世の癖で、会社での初対面みたいな感じになっちゃう。


「えぇ。結構よ」


 しかもこの人、!大人の女性って感じがする!

 エメラルドグリーンの、髪の色で、青の瞳。その細身には似合わない甲冑を着ている。

 そして、椅子の横には丸い盾が置いてある。


「ありがとうございます」


 社交辞令で。ついついそうなってしまうな。この世界では、フレンドリーが当たり前か?


「そんなにかしこまらないで?」


 現代で言う。虫歯ポーズだ。方頬に片手を当てるポーズ。

 そして、ちょっとだけ首を傾げるっていうね。


「いえいえ!そんなことは……」


 私は両手を左右に振る。


「俺らだってやりにくいよね?」


 ハトリの隣に座っている男が、話しに割り込んできた。

 そして、ハトリの前に座っている男に問いかけた。


「僕はそんなことは無いよ?」


 あっさりと、否定する。


「あぁ、お前の価値観に合わせてちゃいけねぇ」


 あらら?喧嘩になっちゃう感じ?


「そうなのかもね。君とは合わないかも」


 こんな所で、仲間割れする瞬間を見せられるとか、ちょー嫌なんですけど。


「はぁ。2人とも!みっともないわよ?初対面の人の前で」


 いえ、逆にどんな人なのかがわかりやすいので、助かってるんですけどね。


「そうだよ!私の前で」


 グラゼル神が話した途端、その場の空気が冷めた。

 寒いですよ、グラゼル神。どうにかしてくださいよ、この寒さを。


「さみぃーな」


 その空気を、変えたのはハトリの前に座っている男だった。


「僕の自己紹介をするね?僕は、リトル=ハルギスって言います。これから宜しくね」


 紫色の短髪で、全体にお姫様カットがなっている。そして、軽い感じだけど甲冑を着ている。


 この人は何をする人なんだろう。


「はい。こちらこそよろしくお願いします」

「うん。僕もクルミって呼ぶね?」


 優しい声だ!グレンとかとは違う感じ!おっとりしてる?強い感じはないかな。


「はい。じゃあ私も……」

「リトハルって呼んでくれるかな?」


 んん?なんて言った?リトハル?何でですか。普通にリトルって呼べばいいじゃないですか。


「え、なんで……」

「同じ名前がいるから、リトルって呼んでもきづかれないかもだからね」


 納得だわ。たまに、同名で異性って人がいて紛らわしかったわ~。


「なるほど……」

「じゃあ次は俺か?」


 流れ的にわかるでしょうが!ってつっこみたいけど、立場上言わないでおく。


「そうよ、流れ的にわかるでしょうに」


 優しいツッコミありがとう、ハトリ。


「すまんな。んで、俺がこのパーティーのリーダーで、ミニトツ=ハースっつーんだ。宜しくな!」

「はい!宜しく!」


 宜しく、が大きい声で、つられて大きい声を出してしまった。


「はは!威勢がいいやつは、好きだぞ俺は」

「ありがとうございます」


 ありがとう。私は褒められると伸びるタイプなんだよ。

 それとこれとじゃ、違う気がするけど。


「そいで、俺の役割は前線に出て、モンスター斬りまくる役目なんだ」


 ほへ~。私は頷いて、口を少しだけ開けた。

 私の隣で、グラゼル神は2回頷く。


「あ、僕はね。弓矢なんだ。弓だけじゃないけどね」


 お~。目を見開いた。グラゼル神は3回頷く。


「このパーティーで一番強いのはリトハルかな。ヒーラー役もやってるし」

「えぇ!そうなんですね」


 外見で判断って、良くないな。やっぱり、会社でも同じことしてるんだよなぁ。


 入社3年目。当時の私は、後輩ができてちょっと調子に乗ってた時期。

 たまたま会社の関係で、あったおじさん。ひょろひょろしていて、偉そうなイメージはなかった。

 んで、小説好きが発覚して意気投合。そのまま、本屋へ直行。

 そのおじさんは、ラノベ系とかも読んでて、本とか沢山の本のことを語り合った。

 そんで次の日。関係が深い商会の社長が来たんだけど、その社長がまさかの昨日のひょろひょろなおじさんだったっていうね。

 驚いたけど、そのお陰で色々と得した。


 っていうだけの、回想。


 おじさんに前話していた世界にいますよって言ってあげたい。


 それにしても以外だな。ヒーラーと、弓矢を掛け持ちって大変じゃないのかな。

 

「やっぱり、僕って弱そうに見える?」


 うん。心の中だけで思い留めておきますね。


「そんなことは無いですけど……」

「俺のイメージが強いからかもな」


 確かにそれもあるかもしれない。筋肉質な体型だし。

 で、思ったんだけど。私の役割は何なんだ?

 グラゼル神は軽く流してるけど、私は軽くは流せないからな。


「あの~。私の役割は、なんでしょうか」

「胡桃はね!そのすこっぷで、モンスター斬りまくるの!」


 ん?それって前線に出るってことですか?初心者の私が、前線に?

 そんなの無理だって!


「クルミ。顔が青ざめているけど、どうかしたの?」


 リトハルが心配してくれた。

 

 まぁ、顔があおざめるのは当たり前ですよね。

 だってグラゼル神に、全然にでなくてもいいからって。

 あ、まさか!


「うむ。私はオラゲーションの時は後方にって言っただけだらかな。パーティーの時は違うぞ」


 #はめられた__・__#!

 最悪だ!オラゲーションに入った時の話だけをしていたのか。

 んな~。もっと先のことを考えておけばよかったな。


「は、ははは」


 もう、笑うしかない。みんなも笑ってくれ。

 って慰めて欲しいのに、ガチで笑われて傷つくやつだ。


「はめられたと思った?」

「もちろんね」


 当たり前でしょうが。


「それでもいい出会いがあるから、良いじゃないか」


 何でこの人は、毎回私の心に刺さるような言葉を言ってくるんだ。そして、なんで人をはめるようなことをするんだ!

 酷いぞ!グラゼル神。


「そうですね」


 けど、納得して、ポジティブに考えていくしか道はない。

 そう。だったら、仲良くならなければ!

 そして、打ち解けるためにはお茶をしよう!

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