第8話

 その長の名前は、グレン、だそうだ。


そして、シルの種族はムーンウルフと言う種族で月光で覚醒して、体が大きくなってパワーも上がるらしい。毛のモサモサ度も上がるらしい。

 けど、不便なこともあったよ、と話してくれた。ついでに、シルのことも。


 シルは、グレンの孫にあたるそうだ。

 ちなみに、種族は違うらしい。孫なのに種族が違うって不思議ですね、と言ったらそこには触れるな、と首を横に降った。


 シルの親はゴブリンの罠にかかってしまっい、シルを助ける為に命を懸けて守ったそうだ。

 シルは、そんなことは覚えていないらしい。そもそも、幼すぎて親の顔など記憶にない、と。

 逃げてくる途中で強い衝撃を受けてしまったのもあるだろうが、と言った。


 てか、ゴブリンなんているんだね!ビックリだよ、私。ゲームと、小説と、漫画の中でしかいないはずなのに。ま、そりゃ異世界ですし?ここにもいるんでしょうね。さぞ気持ち悪いことでしょう。

 

 そして、気になっていたことを聞いた。


「グレンさんは、なんで喋れるの?」


 って聞いたら、笑ってるかわからないけど苦笑いをして応えた。


「それは聞かないでくれるとありがたい」


 深い深い傷に、触れてしまった気がした。

 私は眉を下げる。別に落ち込んでもなにかしてあげられるという訳では無いが。

 グレンと話していると、楽しいが過去の事が何かあるようで触れては行けない話題もあった。

 話を変えようと、私は必死に考えた挙句、これが思いついた。


「ちなみに、今は何処に住んでるの?」


 グレンは、直ぐに答えてくれた。ハンサムボイスでね。マジでこの声、耳に残る声だ。


「特に決まっていない。転々としていて、我々にあった土地を探しているよ。ここには、数十年?くらい住んでいるな」


 特に決まったすみかはないんだ。でも、なんでここに数十年住んでいるんだろうか。不思議に思った。

 ストラレイドラゴンが、沢山いるから?それとも、移動できない理由でも、有るのだろうか。


 他のムーンウルフは、ストラレイドラゴンを一欠片も残さずにたいらげた。

 それはそれは、とーっても有難かった。食べたら襲われるってどんな災難だよ。

 あと片付けも、グレンの指示でやってくれた。


「すごい綺麗になった」

「これくらいなんの、ですよ」


 私はグレンにありがとう、と頭を軽く下げる。

 グレンはグルル、と喉を鳴らす。猫みたいだ。グレンの種族達は犬に近いのか、それとも猫に近いのだろうか。容姿は耳は猫、体も猫、それ以外は全て犬見たいだ。


「それで、ストラレイドラゴンを全て譲ってもらったお礼になにかしたいのだが」


 おー。《クレル》と違って、礼儀正しくしてくれてみんな揃って優しい。

 ストラレイドラゴンを、跡形もなく片付けてくれたのがお礼で十分なんですが。

 そして思った。私と、《クレル》は口を揃えて言った。


「「できてるやつらだ」」


 と。

 いやー。これがマジで、いい人達なんだよ。てか、《クレル》本人が言ってどうするんだよ。直してくれるんだよな、もちろん。


「そんな!大丈夫ですから」


 謙虚に堪えるが、グレンに押されている。


「望みでも、なんでも叶えてやろう。君が今1番困っていることでもなんでも。俺に甘えてくれ」


 押されちゃいましたー。負けましたー。お言葉に甘えますよ?


 私は、数秒考え込んだ。頭を抱える内容だったが、前の出来事を思い出してみると意外とあった。


「一緒に暮らしてみたいです!」


 予想外の答えだったようで、グレンは大きく目を開ける。

 私は、来てくれたら、楽しい生活になるのではないかと考えた。

 いまさっき考えたことだが、私にとっても、グレン立ちにとってもメリットしかないように思える。

 だが、グレンは首を横に振った。


「それは、出来ません」

「どうして?」


 私は、不安になった。


「我々には、守っていかねばならないものが沢山ありますから。それは出来な……」

「じゃあ!あなた方の住処を教えてください!」


 グレンの言い分を遮るように、私は言った。

 不安が、大きくなっていく。

 と言うより、好奇心の方が大きかったかな。

 どんなところに住んでいるのかな、とか、守りたいものってなんなんだろうな、って。

 興奮気味だった。


「そんなの容易いことですから、もっと貴方の所にずっと置いて置けるようなものとかは」


 少し、ほっとして興奮が納まってきた。

 深い呼吸を数回してから、気をつけの体勢をとる。


「じゃあ、造りますか!」


 グレンと、その仲間達は首を傾げた。シルと《クレル》も、動揺に首をかしげた。

 

 なにをかって?

 それは、出来てからのお楽しみでしょ。ここで言ってしまったらつまらないものね。



*  *  *  *



「よし!設計図が完成したね!」

「家を建てるなんて無謀な……」


 《クレル》に、笑われた気がしてソワソワした。


「うるさいなぁ!口出ししないの!作れる時に作っておかなきゃ!」


 《クレル》の口出しに対して、私は怒った。

 《クレル》は、水色の体をピチャピチャと跳ねさせている。

 その動きは、怒っているらしい。

 表情が変わらないから、喜んでるのかと思ったよ。

 ドMかい!

 誰に突っ込みしてるんだい!


 ハハ。


 全く笑えなかったね。


 それをもとに、土台を作り上げていた。

 ベースは木にした。だって、ここら辺には気が沢山あるでしょう?だから、木にした。

 元々私が、気が好きだったってのもあるけどね。

 匂いとか、肌触りとかがいいじゃないか。


 異世界だから、どうなんだろうかとか思ったけど、意外と変わらない感じでよかった。

 

 周りには、気の匂いが漂っている。いやー、木の匂いって落ち着くなぁー。


「家ですか。我々にとっては、容易いことですから」


 《クレル》と、違って本っ当に頼りがいのある人たちだなぁ。

 幸せだ。

 異世界生活2日目にして、もう家が作れるとはね。


 喜んで作れたのは、ここまでだった。

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