[アリツカゲラ] 一人で見てはならない額縁 <長>




 見えない存在が物に憑くのは、まま聞く話。

例えば人形とか。意味合いは違うけど鏡とか。大事にした物に憑くカミサマもいるそうですよ~。



 でも "見えないもの" に憑くなんてこともあるようで。

 これは、私たちがソレに遭遇してしまったお話。




 信じる信じないはあなた次第ですよ・・・。





 ようこそ、アリツカゲラと申します~。パークにある、ロッジを切り盛りしております。

 "ロッジアリツカ" と言って~・・・そのままの名前ですね。


 いい場所ですよ~!

高いところ、狭いところ、暗いところ・・・お客様のお好みのお部屋をそろえてお待ちしております~!この目の傷ですか?気にしないでくださいね。


 おほんっ・・・話題が逸れちゃいました。

お話はオオカミさんが得意ですけど、私もお喋りしたいのでお付き合いくださいね。



         ┈



 この場所は木々に囲まれていますが、木々からの日差しからとてもいい天気と分かるお昼。


 ロッジには私と、アミメキリンのキリンさんがおりました。本日お客様は来ておらず・・・。


 普段は、作家をしておられるタイリクオオカミのオオカミさんも一緒におります。

 今日は原稿を長の博士さんたちに届けに行くと言うことで留守にしておりました。



 ──パタタッ パタタッ ~♪


 私、アリツカゲラはロビーでハタキを使ってお掃除していました。今日はお掃除日和、とてもやる気でした。

 キリンさんも、ロッジ内を探索するようで近くにはおりませんでしたね。オオカミさんの助手だけあって発想のきっかけを探していたようです。



「くんくん......今日は何だかホラーのにおいがする!先生の手助けが、出来るかもしれないわね!」


 そう言いながら足早に行ってしまいました。


 私の方も、1階のロビーから始まり "ふわふわ、"しっとり" 、2階のオオカミさんたちのお部屋など時間を掛けてお掃除して・・・。


 ロッジは広く、廊下や外の階段を使って移動します。

 とはいえ、途中キリンさんを全く見かけること無く最後の3階まで着きました。どこを歩いていたのでしょう。


 3階にあるのは、主に高いところが好きなお客様のお部屋、"みはらし"。かばんさんたちがお泊まりに使ったお部屋ですね。

 近くにある掛け時計の短針が大体2と3の間にあるのを横目に確認し、 部屋の扉を開ける。




 ──「ん、あれ・・・?」


 変な違和感を感じました。

ぼうっと何かが舞ったような・・・いつだったか見た、化粧品 "ファンデーション" のようなにおいが立ち込めていたんです。



 ・・・いや、よく嗅いでみると埃のにおい?


 かばんさんたちがお部屋を借りたのは2週間ほど前でしょうか、その間にお掃除もしていたのに。


「おかしいですね~・・・お部屋好きならお掃除も出来ないといけないのに」


 手入れ不足だったかと思い、少し気分を落としつつも念入りにお部屋のお掃除をしました。

埃を取って、窓を拭いて、 "みはらし" であるベランダの箇所に傷みはないかを見て・・・。


  ──クンクン......ん~・・・


 どうも埃っぽい匂いが少し強まった気が。

換気をすればそのうち消えると思い窓を開け、備品を整理して、最後にベッドを整えようと視線を下に落としたのです。



 ・・・? 何かある。



 ベッドの底から何かがはみ出ています。拾い上げて見ると・・・緑色の紙、でしょうか。


 "あの時" の紙ひこうきでしたっけ、それと同じもののよう。きっと、サーバルさんも作る練習をしていたのでしょうね。

 そう思いながら、底にも落ちてないかと確認したのです。



 暗がりになっていて良く見えませんが、さらに何かありました。でも、今度は紙きれではない。


 ・・・四角い小さな枠。額縁? 黒いような。



 何故かベッドの底に張り付く形で掛かっている。

 つまり、見上げる形で張り付いていました。


 普通、額縁とは壁に掛けるもの。

ただ、このロッジに額縁と言うもの自体飾ってはおりません。なぜこんな隠されるような形であるのでしょう・・・。

 昔の施設なので、前に誰かが忘れ──



         ┈ 



「あ、アリツさぁん・・・?」


「いっ!?」


 急に背後から声を掛けられた。

驚きながらも振り向くと、部屋に入ってきて少し心配そうに見下ろすキリンさんが立っていました。



「よかった、何度か声を掛けたんだけど聞こえて無さそうで!・・・何か見つけたのかしら?」


 声を掛けられていた・・・何度も?

それに、キリンさんはどうも不思議そうな顔をしている。


「い いえ、底に何かあるように見えたので~」


 私はとりあえずそう答え、キリンさんも

「どれどれ」と覗き見てみる。

 ふと、しゃがむキリンさんを横目に私も近くの掛け時計を見る。短針が5を過ぎていました。


 ・・・思ったより時間が経っている気が。



「・・・ん~何もないわね、床も底にも特に見えないですよ」


 キリンさんは夜目が利かないフレンズ、私もですが。見落としているのではと思い、再度覗いてみる。


 ......確かに見当たらない。さっきまであったはずなのに・・・?

 再び考え込む私にキリンさんは言いました。



「アリツさん、信じないわけじゃないけど見かけたのならソレを一旦外せばよかったんじゃ・・・?」


「あれ・・・?確かにそう、ですね・・・」


 何でだろう、うっかりしていた?

外すより、何故あったのかを考えていたから・・・?

かばんさんたちの件でも、 "ちょっと変なもの" は見ていたので慣れがあったのかもしれません。

 そう考えるべきではなかったのに。



 ロビーで少し考えていると、数時間してオオカミさんが帰ってきました。どうも普段より帰りが遅く、心なしか疲れているようにも見えました。

 博士たちと何かあったのでしょうか・・・?



「ただいま、帰ったよ」


「お疲れ様です。博士たちはどうでした?今日の食事ですが──」


 会話もほどほどに、私とキリンさんで食事はすでに済ませていたのでオオカミさんは夜に食べるジャパリまんを持ち、足早にお部屋へ帰ってしまいました。


 今日の事、言おうと思いましたがオオカミさんの雰囲気・・・どこか "早く安心したい" と

 そう見え、言えませんでした。



         ┈┈┈



 深夜になり、月が見えますがお昼と違い少し寒い空気です。ここからは異常がないか見回りをしないといけません。

 この時、どうも胸騒ぎがしました。


 と言うのも、私は普段から見回り用のライトをポケットに入れて歩いています。

 ではなぜあの時、キリンさんにも言われたけど、アレをライトで確認しようとしなかったのか・・・。

 持っていることを忘れていた・・・? 何か違う気がする。



「私、どうしちゃったのだろう・・・?」


自分で自分がよく分からない、それが不気味でした。



 どうしても気になり、先に例の "みはらし"から確認して1階へ降りていく形で見回りをすることに。


 歩く途中の長い廊下にある大きな窓からは、月明かりがふんわり射しこまれています。

 外にはクレーンのフックが見えますね。あれって何に使うのでしょう。


 歩いている間、気のせいなのか・・・

 何処からか視線を感じる、嫌な感覚。


 「・・・だ、誰かいるのですか~?」


 後ろを向いてそう言っても誰も出てこない。


 3階廊下の点在する明かりを辿っていくと、部屋の扉が見えました。見慣れたはずの場所、なのに夜は少しばかり不気味な感じ。


  1階 "しっとり" のお部屋を見るときが、窓も明かりもないため一番抵抗あるのですが、今日はその一番が今な気がしてなりません。



 「素早く済ませよう・・・少し怖いですし」


 ただ立っていても仕方ないので戸に手を掛け、そして開く。


 開けている途中、一瞬思ったんです。


「(私、ここまでどう歩いていたっけ・・・?)」




 何かがもう、遅かったのかもしれません。



 お部屋は当然真っ暗。

正面はベランダ、 "みはらし" があって、ベッドは前方右側にあります。



  ──パチンッ


まずはお昼にも見たベッドの下を確認しようとお部屋の電気を付けたんです。



  ──「え・・・?」



 次に、私は硬直して動けなくなった。




 何かある。目の前の向こう。


 あれは額縁・・・? 昼に見た?

 けど色々とおかしい。


 まず、あんな所に掛けた覚えはない。

しかも前方はベランダ、ガラス張りのドアがある。掛けられるはずがないのに張り付いている。

 して、何故か距離に不釣り合いなほど遠くに見える。さらに、中が見えるが・・・絵じゃない。



 「ひっ!?なにあれ・・・!!?」



 周りが真っ黒で、中心に小さな白い点が見える。

 それが、何故か怖い。すごく怖い!!



 あろう事か額縁が少しずつ大きくなって見える。

 いや、額縁が近づいてきている・・・?




   ──逃げなきゃ



 六感目がそう言い、回れ右をして部屋を出る。

だけど、真ん中にまた黒い額縁がある。それが、やはり少しずつこっちに近づいてきている。



 「なっどうして!?いや、いやぁぁぁ!!」



 何処を向いても視界の真ん中に額縁がある。



 額縁が私の中に張り付いている。

 そしてそれが少しずつ近づいてくる。



 「あっ!あぁ!!いやああぁァァ!!!」


   ──ガタァンッ...ガシャアン!!


 けど、この時の私はそう考えられず、振り払おうと自分の目の前を必死に掻きまわり、ものを投げつけたりして部屋を滅茶苦茶に暴れまわっていた。


 そんなことしても無意味なのに。


「うぎっ・・・いやだっ!取れて取れて!!!・・・ハア゛アぁぁぁ・・・──え?」


   ──ボソボゾ......


   頭の中で何か聞こえた。



『ガク─..ブチミタ..─モノニノロ..─イヲ』



 重低音が、頭の中でそう聞こえた。

"額縁見たものに呪い"・・・?訳が分からなかった。


 そうしている間にも少しずつ近づいてくる。

中心の白点と周りの真っ黒で視界がいっぱいになってきている。


 感覚で分かった。

額縁に飲み込まれると、きっと死ぬより辛いものが待っている。


   ならば──


「そんなの いッ!やだぁぁァァ!!!!」



  ──ザリザリザリッ!!

「ああぁぁァァ痛いぃぃ──!!!」



 自分でもよく聞こえるくらいの鋭く擦れる音と、その後に聞こえる私の情けない叫び声。眼鏡は何処かに飛んで行ったみたい。


 思い切り両目を引っ掻いた。

目が見えること、あまりにも苦痛だったから。


なのにそれでも目が開いてどんどん飲み込ま──


   ──ガバッ!!



「アリツさん何しているの!?やめて!!」



 もう "違っちゃう" 手前の私を誰かが羽交い絞めにした。声からしてキリンさんかな・・・。


 早く目を潰して見えなくするか、死んじゃわないと誰かを不幸にする気がしてならなかった。


「あぁァァ...キリンさん?離してください、私もう・・・」


 目の前が血交じり、額縁によってほぼ真っ暗になりキリンさんの顔がもう見えない。

 けど私を押さえつつじっと見つめているのは分かった。


「私は見えてる!?大丈夫よ、落ち着い──  ッ!?」



 何かに驚いたのか、キリンさんの言葉が途中で止まった。

 それと同時に、どうしてか視界の額縁が一瞬で消滅した。助かった・・・?





「ちょっと!?何これ!!目の前に額縁が──」



 違う、これ──


 キリンさんの中に移動している!!



 目に爪を立てた激痛を感じつつも私は少し冷静さを取り戻した。


「キリンさん目をつぶってください!!額縁が見える状態だといけない!!」


「あぁ!やだ、やだ!!この──!!」



 言うことを聞かず、私を突き飛ばし目の前を鋭く掻く動作を取るキリンさん。まるで先程の私・・・?

 キリンさんに声が届いてない・・・?

 そんな、さっきは聞こえていたのに!




   ──シュルシュル......




「ぁぁァハ......」


「キリンさん・・・!?」



 急にキリンさんは大人しくなったかと思うと、ふら付きつつおもむろにマフラーを解きだした。


    ──ギィィーッ......


 そのまま、 "みはらし" へのドアを開きゆっくり移動するキリンさん。

 外の突風がこちらに吹きつけてくる。




  「ふぅぅ~...ふふ・・・ぅ🎵」


 ──シュルシュル...ギュ、ギュウウゥ・・・



 手すりに縛りつけている・・・。

場面がスローになって流れ込み、やっと状況が分かった。



 キリンさんが首を吊ろうとしている!!



 "オオカミさんを呼ばないと"

自分が弱い動物と知り、1人ではどうしようもないと瞬間的に思ったのでしょう。


 視界に流れる血を拭い、今までした事ないくらいの速さで部屋の出口を飛び出し下の階へ急ぐ──


  ──バァンッ! うぐっ!!?



 何かにぶつかり、後ろへ飛ばされて尻餅をついてしまった。



「うわっ!・・・アリツさんか!

そ、その目はどうしたんだ!?」


 運がよかった!どうやら心配でここまで来たオオカミさんと、出会いがしらにぶつかったよう。


「私より、オオカミさん・・・キリンさんがっ!!」



 そう言って後ろへ指を指すが──


 見るともうキリンさんは、みはらしの手すりにマフラーを縛り、いつの間にか首の方も結んで。

 最後に乗り出す格好でこちらに振り向き──




「私の中で額縁が呪うって言っでるわ......」




 小さな声で泣きながらそう言いました。



「何だって!額縁だと・・・!!」



 瞬間、キリンさんがベランダから飛びおりた。

でも落ちた音はせず、マフラーがピンと伸びている。


「ァ ・・・がぁぅ ......ごぁ...ぁ...」


   ぁ


「あっああアっああアア!!!キリンさ──


  ──パァンッ!


「・・・アリツさん早く!早く外からキリンを抱えて引き上げるんだ!!」


 初めて見る状況に "違っちゃう" 寸前、オオカミさんの平手打ちのおかげで私は我に返る。

 そうだ私は飛べる。そのことさえすっかり忘れていた。

 

 オオカミさんはさらに言いました。


「キリンの目は見ないで!

素早く引き上げて、キミのスカーフで "彼女の目" を覆うんだ!」


 返事する暇も私はなく、言われたとおりに素早くベランダから飛び上がり、キリンさんを後ろから抱え飛ぶ。


「あっ...あぁ...あっ...ぁ ..ぅ ..」


 落下した時の首への衝撃からか、キリンさんは痙攣しながら潰れた声を上げていた。

 よだれを垂らし、身体はとても重たく、どういう訳かぽかぽかに暖かい。それでも必死に持ち上げた。


 「ふぅ・・・ふぅ・・・何とか、なったね・・・」



 どうにか引き上げ、二人がかりで引きずり込む形だけど戻ってこれた。キリンさんは意識を失っている。目を覚ませばいいのだけど・・・。



「起きると多分また暴れだす、アリツさんも押さえていて欲しい」



 押さえると言っても、3人で寄り添う形で一度部屋に固まる。オオカミさんが言うには、今動くのは危ないとのこと。

 少し落ち着いてきたので、キリンさんが目を覚ますまでに聞いておく。


「オオカミさん、これ・・・何が起こっているのです?私とキリンさんに一体──」



  ──うぅ......っく・・・ごほっ、ぉ......



 何と、話そうとした瞬間キリンさんはもう目を覚ました。彼女は原種でも首が丈夫な動物。

きっと耐性があったのでしょう・・・。



「もう起きたのか!よかったが、二人がかりでまずは押さえるよ!」



 オオカミさんが言葉を終えた瞬間──


「ゲホッ・・・ う゛・・・わぁぁぁぁ!!

まだ居るっ!視えゴホッ!!イヤああァァァ!!早く死んじゃわないど私ぃぃ!!」



 キリンさんがつんざくほどの絶叫をあげつつすごい力でもがき始めた。



「キリン、もう目を瞑れる!早く瞑るんだ!!」


「潰れるのイヤぁぁ!あっ・・・はぁ、はぁ・・・せ、先生..ですかっ・・・?」


「キリンさん、私もいます!良く分からないけど・・・早く目を閉じてください!」



 少ししてキリンさんは大人しくなった。額縁も見え無くなった様でとりあえずは大丈夫だとのこと。

 改めて、オオカミさんにどういうことか聞くことに。


 先ほどのそぶりから、オオカミさんは何かを知っている感じがしたからです。



「・・・あぁ説明する前に、まず謝りたい。

本当にすまなかった!!」


「ふぅ・・・はぁ...先生?一体どうしたのです!?」



 何故かオオカミさんは私とキリンさんに両手両膝をついて謝りだしたのです。見えていないキリンさんも「ぁ痛!」と言いつつ首を傾げていた。



「額縁と言ったね・・・キリンか?ここで見てしまったのかい?」



 やはり何か知っているようで。私が答える。



「私が見ました。今日掃除しているとき、この部屋にあるベッドの底を覗いたらあったのです。

何故か目を離したら無くなってましたが」


「私も底を見ましたが、その時には無かったです!」


 キリンさんも付け加えてくれました。



「やはりか・・・それは、私が前に

"ホラー探偵ギロギロ"で考えた案と似ている・・・!」



 ・・・正直意味が分からなかった。

作り話にしても、ここまで来たらもう笑えない。


 聞くに、そのギロギロでのホラー展開のため

正確には "一人で見てはならない黒い額縁" と言う設定を考えていたと言う。

今回の状況が殆ど当てはまっているとのこと。



「だけど、あまりに残酷な内容になったから自分でボツにした案なんだ・・・。私の作品は残酷さを求めていない。

なのに、まさかこの部屋でそれが起きてしまうとは」


 聞いたところ、状況はまだ解決していないよう。この部屋にまだ本体の額縁があるらしく、キリンさんを真ん中に、改めて部屋の隅に3人で寄り添う。

 時計は短い4を過ぎ、少し明るくなってきました。


対策のためオオカミさんから情報をもらい、メモをとる。


 "一人で見てはならない黒い額縁"


・目に付かない場所に人知れず現れる

・中心に白い点があり、周りは真っ黒

・一人で見つけ、目をそらすと呪われる

◎触れたり持ち出す判断に行きつけない

◎見た者の視界に張り付き、徐々にせまってくる

・当然、どこを向いても振り切れない

・目を見えなくして額縁も見えなくするのは可能

◎ただし、1人で見えなくする判断には行きつけない


お昼に見つけてしまったとき、ただ茫然としてた理由はこれのよう。


 すでに私は魅入られていた。


 恐ろしく思いつつ、自分が呆けたわけではないと少し安心もしました。キリンさんの件もつじつまが合う。



「誰かに目を覆ってもらえば、目を閉じることは出来る。その案も私が考えていたんだ・・・」


「あの、先生。もしあのまま目の前が額縁に飲み込まれたらどうなっていたのですか・・・?」



 キリンさんは、怯えた様子でオオカミさんに聞く。オオカミさんは恐ろしいことを言い出した。



「額縁に乗っ取られる。死にはしない・・・けど。

だがそうなると、フレンズの姿で他の存在にも1人で見つけるように仕向け続ける。

 呪わせるだけの存在になる・・・と言うように考えていたんだ。


 ・・・治し方は、考えていなかった。」



「オオカミさん、貴方恐ろしいですね・・・」


 思わず私は本音を言ってしまった。

死ぬより辛いと考えたのは間違いではなかった。自分が、ただ不幸にするためだけの存在になってしまうなんて。



「私に呪いが移ったのも先生が考えたことです?」



 キリンさんが言う。

確か、私を押さえつけてくれた時に起こったこと。



「うん、魅入られた人と目を合わせると移るというのも入れていた・・・」


 

正確には、 "その人の目に映った額縁の裏側を見ると" らしいけど、それは重要ではない。



 でも、1つ思いました。

解決策よりも真っ先に思ったこと。



「先ほどオオカミさんは謝りましたが、なぜ謝ったので?この状況はオオカミさんが望んだことではないですよね」


「そう!びっくりしましたが、先生のせいではありません!これが先生の発想ならほんとすごいです!

びっくりしましたが!」


 死にかけたからかびっくりしたを強調してたのはともかく、確かに誰のせいってわけではない。

 この後、オオカミさんはなおも私たちに頭を下げ、対策法を教えてくれました。



「1人で見てはならない。つまり

 2人以上で処理をするんだ。

そうすれば触れたり持ち出すことは可能だよ」


◎2人以上で額縁を見つけ、燃やしてしまう



「ちょっ、燃やすのですか!?

先生、私たちじゃ無理じゃないですか~!」



 キリンさんが唸りながら言う。

何せ、私たちフレンズは火が苦手。近くに火があると怖くて近寄れないのです・・・。

ですが、パークには火を扱えるフレンズも何人かおります。ヒグマさんとかばんさんですが・・・。


 オオカミさんが言う。


「2人とも、今日の私が少し疲れてるように見えたよね?助手から聞いたことだが──」



 オオカミさんが言うには、博士とかばんさんが恐ろしい体験をして寝込んでいるらしい。


 纏めると、私たちのこれも霊的な何か。

かばんさんには頼めず、ヒグマさんを呼ぶ必要がありそうです。


 オオカミさんは私を連れて呼びに行くよう勧めますが・・・



「二人で行くのですか!?そんなイヤです!

私をその・・・お願いだから一人にしないでください!」



 見えないながらも、私の腕へと必死にしがみつくキリンさん。す、すごい力です、これでは私も動けない。

 オオカミさん少し、にやけてた気が・・・。



「冗談だよ。私がヒグマを呼んでくる、二人ともこの部屋から出ないで待っててほしい」



 それから朝にオオカミさんは出発しました。

その間、私とキリンさんはほとんど動かずその場で寄り添って。

 私がまた額縁を見つけてしまったらもう実質アウトでしたから・・・。



 この時にキリンさんと少し話をしたのですが、

実はお昼、 "みはらし" には先にキリンさんが来ていたそうです。時計の短針が4ほどを指していたそう。


  ・・・?


 当然私はまだいなかったとのことですが、

奥の行き止まりへ向かい数分で戻ってくると・・・




 何と私はお掃除を終えてベッドの底を見ていたと言うのです。



 お掃除は確か、時計の短針が3と4の間から1時間ほどしていたはず。キリンさんも底を覗いた時は5を指していた。



 ・・・??



 キリンさんが此処へ来た時間と私の行動

 ・・・かみ合っていない。



 私かキリンさんは一体どこにいたので──


 そう考えている間にヒグマさん達が来てくださった。全滅しないようにあとのメンバーは外に待機させたそうです。この時本当に安心しました。



「お前には何度も世話を焼かされるな~・・・」


「悪いね本当に・・・その調子でもう1つ焼いて欲しい物があるんだ。

今回も一人じゃどうにもできなくてね」



 オオカミさんとヒグマさんの会話が聞こえました。

 過去にも何かあったのでしょうか。


 それから、4人で固まって本体の額縁を探す。

憑かれているキリンさんがこの "みはらし" にいる以上、この部屋に潜んでいるとのことです。


 キリンさんは見えない不安からすっかり怯えてしまい、私に引っ付く形で付いてきました。


 少しして棚の引き出し裏側で何かが引っ掛かる感じがして、3人で覗いてみるとソレはありました。


3人同時に触れて取り外し、そして3人見ている中でヒグマさんが火をつけ焼却。


 これでこの騒動は終了しました。


   ┈┈


 以上が、私たちの体験してしまった出来事です。

いかがでした?



「アリツさん、上手な話し方だね。

私より向いているんじゃないかな?」


「そうですね!でももうあんなのゴメン・・・ホラーのにおいって本当にあるのかもしれないわ...」


 後ろからオオカミさんが現れました。

 キリンさんも一緒です。



「それにしても、これが都市伝説って言うのかな・・・まさか "発想に取り憑く霊" がいてこんなことをしでかすとは」


 "見えないもの"に憑りつく・・・。

もしかしたらそうした物さえも "忘れないで" と必死に訴えているのかもしれませんね。


 そういえばオオカミさんは、あの後ボツにした原案のメモ用紙を拾い出したそうです。



・・・数百年たったんじゃないかってくらいに紙が古く見えたそうです。大丈夫なんでしょうね?



  あ、それよりも・・・


「キリンさん、あの時は本当にすみません。そして私を止めてくれて本当にありがとうございました。

夜、付いて来てくれていたのですよね?」



 呪いが移ったこと。そして見回りで視線を感じてたのは、多分キリンさんでしょう。



「いいえ、私の方こそ引き上げたり引っ付かせてくれてありがとうね」


「まいったよ・・・私もなるべく自分の発想は大事に取っておく。それじゃ、また後でね」



2人とも、ロビーを後にしようとしましたが──



「そういえばアリツさん、付いて来てくれたって何の事かしら?

 私は上からの物音、多分アリツさんの音を聞いて駆け付けたのだけど」



  え・・・?

 じゃあオオカミさんでしょうか?



「私もキリンがいないのと、物音を聞きつけたんだ。目が血まみれのアリツさんがすごい怖かったよ・・・!」



 あの視線は二人の物ではなかった・・・?

 では・・・あれ、どなただったのでしょう?


 それにまだいくつか分かってないことも──


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る