act8 神伐

八岐大蛇ヤマタノオロチ

それは8つの頭と8本の尾を持ち、娘を毎年ひとりずつ生贄にとっていたが最終的に酒に目が無いと言う弱点を突かれスサノオに討ち取られたとされる山神。

一説によれば伊吹大明神と同一視される……


「ってのが八岐大蛇ヤマタノオロチの情報」

「酒ありませんけど!?」

「そもそもアレは八岐大蛇ヤマタノオロチとは似て非なる者だから参考程度に」


ツラヌイと三鬼みきは森を走っていた。ツラヌイは黒いアタッシュケースを、三鬼はそれに加えてギターケースのような物を背負っていた。目的地はもちろん伊吹のところだ。


「作戦は覚えたー?」

「三鬼先輩が攻撃して弱体化したら、俺が拘束すればいいんですね」

「そう、その後は分厚い皮の奥にある核を壊せば暴走は止まる。あと『先輩』じゃなくて『さん』ね」

「三鬼さん。あの、核を壊したら死んだりとかしませんよね?」

「大丈夫、死なないよ」


そうして、たどり着いた。

伊吹は地球あっちでみたままの姿、真っ黒な8つの頭と8本の尾に赤い目をもった高さ50m程の巨大な化物になっていた。

ツラヌイが覚悟を決めて言う。


「いぶきちゃん、めぇ覚まさせてやるよ!」


神と神器が、激突する。


――No.12よりARTアンリアルツールへのアクセス許可要請。

――No.11より『グレイプニル』へのアクセスを許可。


――No.11より責任者権限でARTアンリアルツールへのアクセス許可。『ミストルティン』にアクセスします。


byababababvaaavvvvvaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!


耳が潰れそうな程大音量の形容しがたい鳴き声と共に、頭の一つが突撃してくる。ここまでの体格差だとその動作だけで殺されかねない。

だが、ツラヌイの手には巨狼フェンリルをも縛り上げた魔法の縄グレイプニルがあった。


「縛り上げろ『グレイプニル』、巨狼すら捕縛したその力を見せてみろ!」


無数の縄が森の木々を縫って飛び出し、突撃してきた頭をめ上げる。突撃の膨大な運動エネルギーは森の木々にグレイプニルを巻き付けてエネルギーを逃がすことで対処する。といっても完全には逃しきれず、十数本の木々が折れる。


gugaaaaaaaaaaa!!


八岐大蛇ヤマタノオロチは苦しそうな声を上げるが、ツラヌイが更に強く締め上げるとブヂンッ! と粘土を糸で切るように首が切断される。


「よし、この調子で――」

「ツラヌイ、蛇は死と再生の象徴!油断しないで!!」

「――ッ!?」


そう言われてツラヌイが切断した首を見ると早速再生し始めていた。あの再生速度だと10秒もあれば完全に再生するだろう。ツラヌイは勝てる気がしなかった。


「いけるんですかこれ!?」

「そのための『ミストルティン』だよ。神殺しの力をくらえ」


ミストルティン。それは北欧神話において、光神バルドルを殺したヤドリギの枝で出来た矢、「神特攻」「不死無効」「契約無効」といった権能チートを持つ神殺しの武器だった。


三鬼が地球から持参した化合弓コンパウンドボウからヤドリギの矢が放たれる。化合弓コンパウンドボウについた2つの滑車は力を最大まで増幅させ、ヤドリギの矢を恐るべき速度で射出し、八岐大蛇ヤマタノオロチにすぐさま着弾する。

その瞬間、ゴバァッッ! と3つの頭が体ごと吹き飛んだ。

吹き飛んだ部位は再生しない。「不死無効」権能チートの仕業だった。

だが、まだ終わらない。


gugyagygaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!?

「『ミストルティン』!ミミングスの剣で追撃を!」


言った瞬間、三鬼の背後でヤドリギの樹が生え、あっという間に育った枝がミサイルのように八岐大蛇ヤマタノオロチに突撃し、頭を2つ程吹き飛ばす。

ヤドリギの矢のような精度と威力はなかったが、数がそれらを補っていた。


「残りの頭は3つッ!」


いける――。そう判断したのが駄目だったか。

その僅かな油断を、慢心を八岐大蛇ヤマタノオロチは見逃さなかった。


buvovovovooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!


「しまっ――



最大級のスピードで巨大な頭が三鬼に振り下ろされる。

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