デミウルゴスと幼女とパーマ

バーのママは、泣いている女の子に近づいて、しゃがんで話しかけた。

「どうしたの?パパママは?」と聞くと、幼女はもうバーを出ようとしているデミウルゴスを指さした。

「お嬢ちゃん、あの赤い服を着て眼鏡の人がそうなの?」と確認すると、

幼女は「うん」とぼろぼろと涙を流しながら答えた。



(ふう、やっと厄介払いが出来ましたね・・・)

デミウルゴスはバーを出ようとすると、トントンとバーのママに肩を叩かれた。


「ちょいと待ちな!お前さん、あの女の子の知り合いなんだろう?」

バーのママは、二人の見た目が全く違うので「親」という言葉は控えた。

(何か訳ありなのかしら・・・)


デミウルゴスは自分の肩に乗せられた手を払うと、右手でカチャっと眼鏡の位置を直した。

「はい確かに。さっきまでは一緒にいた事は事実です。しかし、必要がなくなったので知り合いではなくなりました。何か問題でも?」

はあ~とため息をついたバーのママは、説得するように話す。

「必要がなくなったからと、小さい女の子を一人で置いていくなんて、人間のする事じゃないよ。関わった以上は最後まで責任を持ちなさい」


デミウルゴスは、「私は人間じゃ・・・」と途中まで言いかけて、

「失礼、そうですね。確かに「人間」のする事ではありませんでしたね」

(今日は人間に紛れる日なので、人間という事にしておきますか。)


利益の為なら殺すか、攫うといつも考えている人間ではない生物。

しかし、今は人間のふり。

それだけでどれだけの人間の命が救われたことか。


しかし、そんなデミウルゴスの事情を知らないバーのママは、幼女をデミウルゴスの元へ連れてきた。

「はい!お嬢ちゃん!パパとママの元へお帰り~♪」

トトトっと走ってきた幼女はデミウルゴスに抱きついた。

「いっしょにかえるー!」


「もう二度と子供を手放すんじゃないよ~~!!!困ったらいつでも相談のるからね~~~!!」

とバーを後にする二人に向かって大きく手を振るバーのママだった。

(人間って面倒くさい・・・)

デミウルゴスはバーのママの優しさがとてもうざったく感じた。




バーから出た二人は、また街の中を歩く。

「くっつかないでください。人間に触られると気持ち悪いです。」

さっきよりも、くっつくようになった幼女にひどくイライラしているデミウルゴス。

「くっつくとかえるのにおいがするーーー!!」

幼女は相変わらず話が通じない。


「困りましたね・・・人間を置いていけないなら、こちらから呼び出しましょう」

足にくっついたままの人間を本当にどうにかするべく、デミウルゴスは仕方がないので、一回だけ支配の呪言を使うことにした。

「この人間の親、出て来なさい。」


しかし、親は出てこない。

(何故だ?支配の呪言を使っても出てこないだと?)

てっきり出てくるものだと思ったら出てこなくて、予想外の状況に戸惑うデミウルゴス。

「かえるさん、どうしたの~?」

幼女は、困っているデミウルゴスに気づいたようで心配そうに声を掛けた。


デミウルゴスは淡々と話す。

「私はかえるではありませんよ。そして、さっきからかえる、かえるとうるさいですよ、人間」

「かえるさんはかえる~♪か、か、か、かえる~♪」



幼女とやっと話が通じた?



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