第34話 聖地フリタオの女神?
初めての
「はぁ、はぁ、はぁ、……っん、はぁ」
「大丈夫ですか?ティアロさん」
返事は無いが、首をこくんと縦に降って答える。
無理も無い。
こんな小さな身体で俺の『
その負担は相当なものだったろう。
「リン様、ティアロさん。警備の衛兵隊に車の用意をさせます!すぐにティアロさんを城に……」
「ひ、必要………ない、わ………」
「で、でも、フラフラじゃないですか!?」
「リン………え、『エルフの霊薬』を一本よこしなさい」
「え?あ、はい」
ティアロさんから促され、念のためにポケットに入れていた『エルフの霊薬』の小瓶を一本、手渡した。
小瓶を受け取るなりティアロさんは上部のキャップを「パキョッ!」と豪快に開け、口をつけるとこれまた豪快に、天を仰いで一気に飲み干した。
「………っぷはぁあっ!!生き返ったぁ!!っしゃあ!!フリタオ巡礼に繰り出すわよっ!!」
「ええええっ!?」
飲み干した霊薬の小瓶を背後へ放り投げると、その軌道は弧を描きながらビルの脇に設置されていたゴミ箱へと、「カコーン!」という音とともにダイレクトに吸い込まれていった。
「や、休まなくて平気なんですか?」
「はあ?馬鹿言ってんじゃないわよ!ここは聖地フリタオよ!?生まれてからずっとあの森の中に引きこもってたこの私が、ついに憧れの地にやって来れたのよ!?寝てる暇なんてあるわけ無いでしょ!!」
そう
「何ボサッとしてるのよ!!アンタも付き合いなさい!!」
「は、はいっ!!」
ティアロさんに呼びつけられ、俺も後についてフリタオの大通りへと駆け出して行った。
俺が大通りに出ると、いつの間にかティアロさんはオナポを取り出し、地図を表示させていた。
「一番行きたかったのは『
なんか地図を見ながらブツブツ独り言を言ってる。
どうやらもう完全に大丈夫そうだ。
「あの、リン様。ティアロさんは……」
「うん、もう大丈夫そうだ。エルフの霊薬も飲んでたし、俺が一緒について行って様子を見守るよ」
「そうですか……わかりました。では私は先に城へ帰り、この度の報告とお夕食の準備をしておきますね」
「わかった。あまり遅くならないように戻るよ」
「はい」
ラマニアは衛兵隊の人達と一緒に王城へ引き上げていった。
「リン!何してるの!?まずはフリタオ地区の東の端から大通り沿いに回るわよ!!」
「は、はーい!今行きまーす!!」
そして俺はティアロさんの後を追いかけるのだった。
追い付いて早々、ティアロさんはテンション高めに目を輝かせて興奮していた。
「
「えっ、リリッタ?」
「アンタ知らないの!?『
「い、いや、俺こっちの世界の人間じゃないんで……」
「あっ、そうか。そうだったわね……ちっ」
こっちの世界のアニメはわからないけど、それでもティアロさんの興奮する理由くらいは理解できる。
おそらくこのポスターの女の子がしてるコスプレがそのリリッタというヒロインなのだろう。
たしかによく出来たクオリティの………
「んん?」
このポスターの女の子………ヴィアンテ様じゃないか?
この間つれていかれた例の会社で見た三姉妹の中の末っ子にそっくりだ。
たしか名前は………
「どうだい!我らの女神、ヴィロッタちゃんのコスプレは最高だろ!?」
そう、ヴィロッタだ。
って、いつの間にかポスターの貼ってある店の店員らしき人がティアロさんと仲良くなっている。
「ええ、この
「リリッタだけじゃないんだよ!ヴィロッタちゃんのコスプレはとにかく細部までこだわっていてね、どのキャラも凄くハイクオリティなんだ!」
「こんな逸材を知らなかったなんて……私の情報もまだまだね」
「ははは、それはある意味仕方ないよ。ヴィロッタちゃんはまだデビューして3ヶ月だし、それに元々はコスプレイヤーじゃなくて、※※※※※※※……」
ん?
最後のほうの部分が通行人の声で聞こえなかった。
「えーーーっ!?嘘でしょ!?こんな
「そう思うのも無理はない。でもこの子はこう見えても
何の話なのかは一部聞き取れなかったけど、童顔つるぺた界とやらじゃなくて、この世界の本物の女神様なんだけどな。
その張本人は今、俺の世界で新たな鎮火の勇者を探しているはずだが、今頃どうしてるだろうか。
この世界シェインヒールの女神ヴィアンテ様よ。
アンタの偽名の一つが本物の女神並みに信者を増やしてるみたいですよ。
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