第8話 ラマニア姫の覚悟

 部屋に戻った俺が最初にした事。


 それは、聖力せいりょく回復のために速攻で就寝………ではなく、ラマニアからもらったばかりの『オナポ』いじりだった。


 やはり俺もスマホに親しみすぎた現代っ子、新しい機種を手にしたら一通り試してみたくなる。


 そう思って色々操作してみたのだけど………どうしてもこっちの世界の文字が読めないせいで、いまいち操作が飲み込めない。


 これは当分は電話としてしか使い道が無いかもな。


 そうだ、せっかくだからラマニアに通話の仕方だけ教えてもらいに行こう。


 当面の俺の通話相手なんてラマニアくらいだろうし。


 そう思い、俺はラマニアの部屋をたずねる事にした。




 使用人さんにラマニアの部屋の場所を聞き、扉の前までやって来た。


 こっちの世界でも部屋を訪ねる時はノックでいいんだよな?


 そんな事を考えながら、とりあえずラマニアの部屋の扉をノックしようとしたその時………



「んっ………くぅ、ん………はっ」



 部屋の中からうめき声のようなものが聞こえて手を止める。


 よく見ると扉がわずかに開いており、中の様子をうかがう事ができた。


 俺は扉の隙間からそっと中をのぞいた。


 すると、室内にいたのはラマニア一人。


 ラマニアは『聖門ミリオルド』を出していた。


 そしてそのラマニアの『聖門ミリオルド』には、俺の『聖塔ミティック』とよく似た形の太い杭が深々と突き刺さっていた。


 いや、形はよく似ているが、その太さと長さは俺の『聖塔ミティック』よりも、ひとまわり大きかった。



「き……つ……い………!んあああっ!!」



 ラマニアは一体、何をしているんだ?


 見た感じ苦しそうだし………声をかけるか?


 そう思った時……



「待て。邪魔はするでない」


「ヴィアンテ様?」



 俺の耳元でミニサイズのヴィアンテ様がささやいた。



「あれはラマニアの自主訓練だ。先の鎮火活動ちんかつの時の事を思い出してみよ」



 言われて俺は、初めてラマニアの『聖門ミリオルド』に俺の『聖塔ミティック』を挿入した時の事を思い出した。


 そういえばラマニアはあの時、初めて見る俺の『聖塔ミティック』を見て目を丸くしていたっけ。


 そうだ、ラマニアの『聖門ミリオルド』に対して俺の『聖塔ミティック』のほうが大きくて、かなり力業ちからわざで中にじ込んだんだ。



「思い出したか?あの娘もまた、この世界とお主のために、一皮ひとかわムケようと努力しておるのだ」



 そ、そうだったのか、ラマニア……。


 さっきの食事の時は終始明るくて、そんな素振りは全く見せなかったのに……自分の『聖門ミリオルド』がせまくてキツい事を気に病んでいたのか。


 ラマニアは俺の存在に気付く様子もなく、ひたすらにみずからの『聖門ミリオルド』をいじめ続けている。



「わ……私…が、もっと、頑張らなきゃ!この……『聖門ミリオルド』を、リン様専用に………開発かいはつ……するっ……!!」



 俺はそのままラマニアの部屋の扉をそっと閉め、自分の部屋に戻った。


 そうだ、ラマニアはこの世界、この国のお姫様だ。


 俺よりも遥かに強い責任感で鎮火活動ちんかつのぞんでいる。


 ならばせめて俺も、もっと真剣に、もっと強い気持ちで彼女と鎮火活動ちんかつに向き合わなければ。



 部屋に戻った俺は、ある変化に気付いた。


 それは、ラマニアの強い覚悟を目撃したせいか、それとも先ほどの食事が効いてきたからなのか、俺の中の聖力せいりょくがギンギンに復活している事に気付いたのだった。

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