あまり変なこと考えると伝わるので注意してください!

 とりあえず個人情報だからちょっと、とか言って見せないでおくか?

 プライバシーがどうやこうや言っておけば大丈夫な気もするが…… 


 オセ、どう思う?


〈知らぬ〉


 まったく参考にならないな。

 お前の宿主のピンチよ?


〈こんなことでは死にはしない〉


 そりゃろうだけどさ……

 まぁいいか、ダメならダメで次のパーティー募集をあたろう。


「わかりました、これが俺の冒険者カードです」


 俺はたいした能力の書いていない冒険者カードを見せる。

 魔力を通してないし、前回のままだ。

 魔力を通したらもう少しマシになると思うが、エアロの街にいたおばあちゃんのような事ができる人いるのか?



 【名】 花岡 陽介 (人族)

 【ランク】 E

 【ジョブ】 指導者

 【ステータス】 体力 46 魔力 × 知力 69 力 38 俊敏 29  

 【スキル】 算術 指導 槍術(初級) アテンション

 【属性】 ==

 【特殊】【ジョブ効果 知力上昇 伝達力向上 理解促進 】

     ????



 レジーナが代表で見ているが、驚いた顔をすると


「えっと、この特殊欄の『????』って言うのは何?」


「あぁ、それが『索敵』のスキルの元なんですが…… それだけじゃわからないですよね」


「スキルの元? 他にもできるってこと?」


「はい。たいした能力ではないのですが」


 とりあえずオセ! 『オセレーダー』があるってことを証明したいんだけど! どうしたらいい!?


〈ふむ。ならば次にギルドに入ってくるものを言い当てるというのはどうだ?〉


 おお!? それいいね!! それそれ!! そういうの大好き!!

 いいじゃんいいじゃん!!


「えっと、それでは『索敵』スキルがあるっていうことを証明しようと思うんだけど、いいかな?」


「え? ここで? どうやって?」


 レジーナ達は驚いているものの、俺が何をするのか興味津々きょうみしんしんのようだ。

 熊っぽいアルバートなんてすごく楽しそうにワクワクしているのが表情からわかる。

 ポーカーフェイスができなそうな男だ。

 嫌いじゃない。


「じゃあ、次にギルドに入ってくる者がどんな人なのかを当てます」


「男女とか?」


「それだけじゃありません。試してみましょうか」


 オセ!! 頼んだ!!


〈たやすいことよ〉


 レジーナ達は俺の言葉を待ちながらギルドの入り口も気にしている。

 よし、何をどうするのかはまったくわからんが、頼んだぞオセ


 すぐにオセが反応する。


〈入ってくるのは三人。男が三人だ。二人は成人だが一人は子供だな。その子供魔力が高い。魔術師だろう〉


 よし。


「入ってくるのは三人。全員男です。そのうち一人だけが子供で、魔術師ですね」


 レジーナ達はほんとに?? 『索敵』でそこまでわかるもの?とでも言いたげだ。

 いいぞいいぞ、疑ってくれたほうが驚きは大きい。


「そろそろきますよ。………… 三 二 一 子供を先頭に来ます」


 ぴったりのタイミングで三人組がギルドに入ってくる。

 オセに教えてもらった通りの三人組みで、成人男性二の子供が一だ。

 だた、子供は髪が長くてかわいらしい感じで、見た感じはどうみても女の子だ。


 レジーナは関心したように言う。


「すごいよ! けど三人組で一人は子供ってことは合ってるけど…… 子供は女の子じゃない?」


 オセ!? 間違った!? あれどう見ても女の子だろ!!


〈バカにするな。あれの性別は男だ〉


 ほんとだな!? ドヤ顔でイキリまくるからな!!


〈堂々としてろ〉


「いや、あの子供は男の子です。間違いないですよ」


「ほんとかよ…… ちょっと確かめてくるよ」


 そういうと熊男、アルバートはさっそく子供に声をかけに行く。

 直球で聞いたのだろう。

 三人組が驚いている。

 成人した男性二人は今にも腰の剣を抜きそうな程に警戒心を剥き出しにしている。


 何言ったんだよあいつ……

 色々と説明している素振りは見えるが……

 あら、交渉失敗か。


 三人組を引き連れて俺達のテーブルまで戻ってくる。

 面倒そうな雰囲気だな。

 アルバートはすまなそうに俺に声をかける。


「あー、陽介。どうやってこの子が男だって見抜いたか教えてやってくれないか?」


 男達は何かを疑っている様子だ。

 それが何かはわからないが余計な事は言いづらいな。


「『索敵』しただけですよ、それ以外は特に何もしてません」


「『索敵』でそんなに詳細まで分かるわけがないだろう。私も『索敵』が使えるんだ。そんな事までわかるはずはない。何か魔術を使ったのではないか? そして何故それを私達に使った?」


 疑いの目全快で俺を睨みつけてくる男。

 なんなんだろうな。怖いんですけど。


「俺の『索敵』は特殊なだけですよ。ほんとにそれ以外は何もしてませんし、あなた達を索敵したのも偶然です。そもそも俺には魔力がないんですよ。魔術が使えません」


 アルバートがすでに話しているだろうが改めて説明する。

 俺の『索敵』能力を証明するためにギルドに入ってくる人を当てただけだ、と。

 そして魔力がない事を冒険者カードを見せて説明する。


 『魔力がない』という部分にも驚きの反応をする。

 全員だ。レジーナ最初に俺の冒険者カード見た時に気付かなかったのかよ。

 レジーナは改めて見直して気づいたようだ。


「ほんとだ!? 陽介魔力がない!? どういうこと!? 」


「ええ、俺も分からないんだけど、どうやら魔力がないみたいなんだよね。だから初級魔術すら使えないんだよね」


「そんな人、いるんだね……」


 一瞬空気が止まるものの、アルバートはあまり気にしていないようだ。

 いいねいいね、そういう大雑把な性格。


「陽介の『索敵』はすごいぜ。あんたら三人が男で、内一人が子供、子供から先頭にギルドに入ってくること、そしてその子供が魔術師だってことまで言ってたぜ?」


「な!?」

 

 最後の一言は完全に余計だ!

 そこまで言う必要はないだろ!

 大雑把というよりこの男、何も考えてないな!?


 俺が非難するような目でアルバートを見るが、何が悪かったのかまったくわかっていない顔をしている。


「…… えっと。それじゃあ陽介の『索敵』能力はかなりの精度って事がわかったね、アルバート、ローラ。どう思う?」


 とりあえずまとめることにしたんだろう。レジーナが3人組を無視して話を進めていく。


「ああ、俺は賛成だぜ! 陽介の『索敵』すごいな! 思ってた以上の人材が来たじゃねえか!」


 レジーナとアルバートはローラの目を見る。

 一泊おいてローラは語りだす。


「私もよろしいかと思います。この方から悪い気は感じられませんし、嘘もついていないようです」


 ん? どういうことだ?

 レジーナに視線を向ける。


「悪いね。ローラは『読心』っていう特殊能力を持っているのさ」


「『読心』とは?」


 ローラは語りだす。


「『読心』は相手の思っている事が少しだけわかります。悪い事を考えているのか、戸惑っているのか、嘘をついているのか、漠然とですけどね」


 それすごいな! じゃあ俺が卑猥な事を考えたら筒抜けか?

 迂闊なこと考えられないな……


「陽介、お前今いやらしい事考えたらまずいって思っただろ?」


 ニヤニヤしながらアルバートは続ける。


「それ俺も考えたからな! ワハハハハ!! 」


 吊られ笑いで俺も笑ってしまう。

 なんとなく打ち解けた雰囲気になってくる。

 エロってすごいよな。


「ちょっといいかな? 私達の話は終わってないのだが」


 男達が俺達の和やかな雰囲気をぶち壊す。


「この方…… この子が男だという事は他言無用でお願いしたい」


 なんでだ?

 まぁいいだろう。


「ええ、別に誰かに話すことでもないですからね」


 レジーナ達も異論はないようだ。

 俺達の答えに若干の不安を持っているのがわかるが納得せざるを得ないだろう。

 

 男の子が男達に何やら耳打ちをしている。


「それから陽介さん、とおっしゃいましたね。あなたは王都を中心に活動している冒険者なのですか?」


 俺はレジーナ達に受入れられたってことでいいのか?

 レジーナ達を見ると頷いている。

 よかった。良さそうだな。


「そうですね。王都を中心に活動しています」


 男達は三人で何やら話会うと軽く会釈をして受付に向かった。


 冒険者じゃなくて、依頼する方だったのかな?

 男の子はなんとなく高貴な出身っぽい雰囲気だな。

 

 まぁいいか。


「あ、そういえば」


 ローラが俺の足元にいるココを見て気になったようだ。


「その犬は陽介さんの…… 犬? ですよね? 見たことない種類ですが……」


 あぁ、そりゃ気になるよな。

 パーティになるわけだし、言ってもいいかな?

 オセの事は黙っておこうと思うが、ココならいいかな。


「はい、俺に付いてくるんで一応飼い主です。名前はココ、魔神が入ってます」


「「「え?」」」


「プルソンという魔神・王が入っている犬です。けど普通の犬なだけで、特殊なことはほぼできません」


「「「は?」」」


「邪魔にはならないと思うので安心してください。なんか気配は消せるみたいです」


 沈黙が流れる。




 レジーナとアルバートがローラを見る。

 ローラは俺を驚いた表情のまま見つめている。

 俺に惚れちゃったかな。


「ええと…… 陽介さんは嘘ついてません……」


 あぁ、『思念』を見てたのか。

 ローラちゃん大好きローラちゃん大好きローラちゃん大好き


 俺の熱い思いが伝わったのだろう 


 少しムッとしながらも


「陽介さん……」


 日に焼けた顔を少し赤く染めつつ注意してくるローラちゃん。

 やばいな、かわいいな。

 結婚したい。


「………」


 また少し赤くなるローラちゃん。

 

 『思念』なんて使えるのにガード甘いな!?

 随分うぶな子や。

 

 あ、やべ、これも分かっちゃうのか


「あまり変なこと考えると伝わるので注意してください!」


 ローラちゃんに怒られた。

 どこまで正確にわかるんだろうな。


〈吾輩のことまではわからぬな〉


 お?そうなの?

 

〈『思念』ごときにあばけるわけがなかろう〉


 じゃあ俺が一人で色々考えているって感じだろうか。

 それにしてもこの世界は色々な能力持ちがいるなぁ。

 俺もなんか特別な能力欲しいぃ!!


〈ふざけるなよ! 吾輩を支配下に置くなんぞとんだ能力ではないか!〉

 

 けど魔力ないしなぁ。


〈…………うむ〉


 脳内会議に忙しくしていると、仕切り直すようにレジーナがまとめてくれる。


「まぁ、かわいいし邪魔にならないならいいか。これからよろしくね陽介!」


「よろしくな陽介!」


「よろしくお願いしますね、陽介さん」


 俺はレジーナのパーティに加わることになった。

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