CHAPTER 12


 思案に暮れる私をよそに、GRIT-SQUADと機甲電人六戦鬼の闘いは、さらに激化の一途を辿っていた。VAIGAI-MANと名乗るあの異世界人の参戦は、彼らを強く焚き付けていたらしい。


「ぐッ……!」

『ギュイィイィイッ!』


 そんな中――QUARTZクォーツDUSTダスト-MAKERメイカーが持つ巨大な鉄拳を前に、防戦一方となっていた。


 QUARTZ自身もかなりの体格を持ってはいるのだが、2m以上もの機甲電人と殴り合うには、いかんせんリーチに差がありすぎる。ましてDUST-MAKERは、エンジンを搭載し肥大化した両腕を特徴とする、格闘戦特化型の機体なのだ。

 対物ライフルにも匹敵すると言われている彼の者の一撃を浴び続けていれば――如何に規格外の超人といえど、ただでは済まない。現にハイパーセラミック製と豪語していた彼の人工皮膚が、鉄人が放つ拳の乱打によって徐々に剥がされ、隠された機械のボディが覗き出している。


 このままでは彼まで、DUST-MAKERの犠牲にされてしまう。そんな未来を想像してしまい、私が思わず目を背けそうになった――時だった。


『――攻撃パターン、解析完了。始めましょうか、マスター』

「――オッケー。始めようか、クラフ」


 彼の身体から響き渡る、二つの声が響く瞬間。両腕による防御に徹していた、QUARTZの身体が――弾かれるように「反撃」に出る。

 矢継ぎ早に飛び出すDUST-MAKERの鉄拳を、紙一重でかわすその巧みな回避は、先ほどまで防戦一方だった彼とはまるで「別人」のようだった。そう、まるでもう一つの「頭脳」が、彼の身体を手助けしているかのように見える。


ONSLAUGHTオンスロート-MODEモードッ!』


 そんな錯覚を私に見せ付けている彼は、二つの声を重ね合わせて――さらなる変貌を遂げていた。

 ただでさえ張り詰めている筋肉がさらに膨張ビルドアップし、その外観からは想像もつかないスピードで、DUST-MAKERとの間合いを詰めたのである。その力を発揮する上で放出された、熱によるものなのか――両肩からは炎の翼が噴き出し、炎のマスクが顕現していた。


『ギュイィィイッ……!?』

「君は戦車だろうと容易く鉄屑にしてしまうそのパワーから、DUST-MAKERと名付けられたそうだね。……ならば、その名は今日で剥奪だ」

『なにせあなたが、鉄屑になるのですから』


 瞬く間にDUST-MAKERの頭部を掴み、アイアンクローの体勢に持ち込んだQUARTZは――そのまま豪雪の大地に鉄人の巨体を沈め、握力だけで頭脳部を破壊して行く。


「確かに大した破壊力さ。だが……頭を潰されちゃあ、意味がない」

『両腕の分厚い装甲に対して、頭脳部のそれは随分と薄い・・ご様子。どうやら、よほど予算が足りなかったようですね』

『ギュイィイギギギッ……ギギィィッ……ギ……』


 「彼」なのか、「彼ら」なのかは、分からないが。少なくとも、QUARTZに頭を握り潰されたDUST-MAKERが、動かなくなったことだけは――紛れもない事実であった。


「まずは、1機撃破。魂の宿らぬ冷たい機械に、ボクらの熱いハートは負けやしないってことさ!」

『熱いのはマスターだけで結構ですので。私まで巻き込まないで頂けますか』

「君はいちいち冷や水を掛けてくるねぇ!」


 ……それにしても。本当に、彼は誰と話しているのだろう。あれほど流暢に喋るAIがいるとでも、言うのだろうか?

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