ショートショートショート

春野 秋

私は心の雨をふらした

今にも泣きそうなそらが

どんよりと世界を覆う。


私はそれを眺めつつ

あの人に想いを馳せる


遠くにいるあの人は

今何をしてるのだろうか

しらない人としらないことを話し


知らないものを育んでゆく。


とうとうそらが泣きだした。


それにつられ、共鳴するように


ビル群、街灯、車、人。

道路までもが泣き出した。


私はそれを屋根の下から眺めていると

降るはずのない頭の上に

水がポちゃんと落ちたのだ。


私はそれに誘われて

のんびり歩いて家まで帰る。


私こそ知らないものを知っていて

知らないふりをしているのだから


それこそ彼は私を知らない

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