第6話 王国への旅 その1

 下山を始めてからおよそ5日たった頃、ようやくリトナルクの街に着いた。


「やっと着いたぁ~。もうしばらく山の旅はこりごりだな」


「確かにそうですね。テントで寝てる間に魔獣が複数で襲撃してくるだの、雨が急に降ってきて土砂崩れに巻き込まれそうになるだの、それはもう、トラブル満載の下山の旅でしたからね」


「そのお陰でもう動く気力が無いぐらい疲れたから、今日はここで泊まろうぜ」


「うん。勿論そのつもり」


 早くルエルフ王国に着きたい気持ちはあったが、無理して倒れても困るので、今日はこの街で泊まることにした。


 どこに泊まろうか、街の入り口の観光案内所から貰ったガイドブックを見ながら考えていると、ミラが『ミズメの宿って所、私的にはおすすめの宿だぜ!』と言ってきたので、そこに泊まることにした。

 

 歩いて10分、ミズメの宿に到着した。


「いらっしゃいませ~。 3名様ですか?」


「はい。泊まれますか?」


「大丈夫ですよ~。3名様ですと、一泊金貨6枚と、銀貨9枚です」


「分かりました。お願い致します」


「では、お部屋に案内致します」


 そうして、部屋に案内された僕たちは、夕食と露天風呂を堪能した後、眠りについた。




  ~翌日~

 



「おはようございます。よく眠れました?」


「ああ、よく眠れたよ。やっぱりここの露天風呂は何回来ても最高だな~」


「自然を見ながらの露天風呂は格別だったからな~」


「朝食を済ませたら、リトナルク駅に行こう。その電車に乗れば、3時間位で国境の町に着くはずだ」


 こうして軽く朝食を済ませた後、電車に乗るために出発した。


 そうして20分程歩くと、リトナルク駅に着いた。


「これがリトナルク駅? かなり大きいな……」


「レストランとかショッピングモールも駅の建物の中に入ってて、それ目的で来る人も沢山居てかなり賑やかな場所なんだよな~」


「時間が有れば回ってみたいですね」


 駅内部に貼り出されている時刻表を見たところ、次のオラオグ行きの電車は15分後出発とのことなので、すぐにチケットを購入して、構内に停まっていた電車の中で待つ。


 レストランで何か食べたり、ショッピングモールで買い物をしたりもしたかったが、今回の目的地であるルエルフ王国へ少しでも早く着くために、仕方ないけど諦めた。


 そして15分後、電車は不思議な音をたてながら、オラオグへ向けて出発した。

 

 




  ~ヒーティルオン帝国 レトナ基地~

 

「何だと!? あの2人の処刑に失敗したあげく、邪魔者の手によって山岳機動部隊の大半を失った!? しかも、たったの2撃で!?」


 俺は、エレモス山での戦闘に敗れた後、何とか逃げ帰り、この事を帝国軍四天王の1人『大賢者フィンドル』の所に伝えることができた。


「誠に申し訳ありません! フィンドル様。ですが、奴らの逃亡先が判明いたしました。リトナルクという街だそうです。法力通信でその街の巡回をしていた兵士にその2人と邪魔者の特徴を教えて訪ねたところ、確かに見たと言ってきました」

 

「ううむ……… となると、奴らの次の目的地は……… あっ!」


「どうされました?」


「不味い! 今すぐ訓練中の竜騎士飛行部隊の精鋭を呼び戻し、国境の町オラオグまで行かせろ! そして、国境の門を封鎖するように伝えろ。恐らくだが奴ら、この国を出て隣のルエルフ王国に逃げるつもりだぞ!」


「何ですって!?」


 それを聞いて俺はとても驚き、恐怖を感じた。あの2人の処刑任務を命令してきたのは皇帝陛下だ。失敗すれば最悪、俺が処刑されかねない。いや、あの陛下のことだ。俺だけでなく家族まるごと処刑ってこともあり得るかもしれない。


「すぐに呼び出してきます!」


 そう言って急いで訓練中の竜騎士飛行部隊を呼び戻しにこの部屋を出ようとした時に、フィンドル様が声を掛けてきた。


「1つ質問がある。その邪魔者とやらの特徴を私にも教えてくれんか?」

 

「あ、はい。白い長髪に、薄金色の瞳で、水色のよく分からない服を来ていた、推定20前後の女性です」


「そうか、分かった。引き留めて済まなかったのう」


「いえ、大丈夫です。では、行って参ります!」





  ~フィンドルの私室~


「くそ! 面倒なことになってしまった………」


  私は、山岳機動部隊隊長のトウエンの報告を聞いて頭を抱えていた。100人近い部隊で行って、失敗するはずなど無いと思っていたからだ。

 

「そう言えば、トウエンの言っていた邪魔者、どこかで似た特徴の人物を聞いた気が………」


 少し考え込んだ後、思い出した。


 予言者ノーティルクの言っていた、水の女神の特徴に酷似している。 もし本当に水の女神だったとしたら………


「神なんかと正面からぶつかって勝てる訳がない。終わった……… 完全に終わった……… 」


 1人絶望するフィンドルであった。

 


 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る