第2話 転移ポータルへの道

 自宅から出たら、まず向かうのは転移ポータル(駅)だ。

 それでギルド(自社)の近くまで移動する。


 自宅の周辺は、田畑がポツポツと残る、のどかな地域だ。

 だが、雑魚モンスターが出没することもある。

 油断はできない。

 そんなことを考えていると、さっそく・・・


★ゴブリン(近所のガキ)×5が現れた★


 近くに集落(ラジオ体操の会場)があるのだろう。

 道幅に広がり、集団でこちらの行く手を遮るように迫ってくる。


「むぅ」


 不要なバトルを回避しようとしたが、道が細いこともあり、無理そうだ。

 呪文を唱えて、蹴散らすことにする。


「広がって歩いていると、車に轢かれるぞ~~~」

『はーい!』


 こちらの攻撃に左右に散っていくゴブリン達。

 上手くバトルを回避できたようだ。


「ふむ」


 迷宮付近(都会)のゴブリンだと、逆上して襲い掛かってくることもあるが、この辺りに生息している個体は狂暴性が低いようだ。

 しかし、安心はできない。

 こいつらの背後には、さらに恐ろしいモンスター(ペアレント)が控えていることがあるからだ。

 その真の恐ろしさは近接攻撃ではない。

 周辺のモンスター(近所の主婦層)を巻き込み仕掛けてくる、範囲攻撃(いわれのない噂話)だ。

 その理不尽な攻撃はダメージを長期に渡って蓄積させ、最悪の場合には、その地域から立ち退くことを余儀なくされるという。

 なんにせよ、雑魚モンスターが相手の場合でも、不用意なバトルは避けるのが、冒険者の心得だ。


 その後は、毒の沼地(酔っ払いのゲロ)を避ける程度で、モンスターにエンカウントすることもなく進むことができた。

 だが、転移ポータルまで後一歩というところで、運悪く・・・


★コボルト(飼い犬)×2が現れた★

★猛獣使い(飼い主)×1が現れた★


「くっ」


 こいつらは、多彩な攻撃を得意とする、手強い相手だ。


 近接攻撃(リードを放された犬がじゃれついてくる)。

 精神攻撃(仇敵に対するがごとく吠えかかってくる)。

 遠隔攻撃(フンの後始末をせず、そのまま放置する)。


 などの、恐ろしい攻撃を放ってくる。

 しかし、冒険者なら焦ってはいけない。

 こいつらは装備によって、危険度が変わる。

 通常のモンスターとは逆に、装備が多いほど攻撃力が低く、装備が少ないほど攻撃力が高い。

 さりげなく、猛獣使いの装備を確認する。


 武器(小型シャベル)・・・装備している。

 防具(フン処理用ビニール袋)・・・装備している。

 猛獣使いの縄(犬用リード)・・・装備している。


「ふぅ」


 どうやら比較的安全な相手のようだ。

 できるだけ距離を取り、刺激しないように通過する。

 こちらの移動に合わせて、コボルトが頭の向きを変えてくることに緊張したが、無事にバトルを避けることができたようだ。

 たまに、こちらが視線を外したタイミングで攻撃してくる(じゃれついてくる)ことがあるが、今回はそのようなことはなかった。

 ラッキーアイテムを装備してこなかったが、今日の運勢は悪くないようだ。

 と思ったのも束の間・・・


★使い魔(黒猫)×1が現れた★


「!」


 コボルトから視線を外して視線を前に移した瞬間だった。

 不意打ちに息が詰まる。

 歩みも止めてしまう。


 ・・・・・


 相手もこちらを観察いるのか、動く様子がない。

 にも関わらず、こちらが動いた瞬間に、俊敏な攻撃を繰り出してきそうな雰囲気を醸し出している。


 ・・・・・


 額を伝う汗を拭うこともなく睨みあう。

 時間的な余裕はそれほどない。

 いつかは決断しなければならない。

 だが、一瞬の判断ミスでダメージを食らう可能性がある。

 慎重に行動しなければならない。

 やつらの種族、それも黒い体毛を持つ個体特有の、特殊攻撃を受けるわけにはいかない。


 勇気を振り絞り一歩を踏み出す。

 つま先の角度に気を付ける。

 相手が移動する方向を巧みに誘導する必要がある。


 ぴくっ。


 反応があった。

 ここが勝負どころだ。

 間を置かず、もう一歩を踏み出す。


 たたたた・・・


 特殊攻撃(黒猫が前を横切る)をしてくることなく、相手は逃げ出した。


「ほっ」


 なんとか呪いを受けずに済んだようだ。

 今日は呪い除けのラッキーアイテムを装備していない。

 危ないところだった。


☆★☆★☆★☆★☆★


「到着」


 転移ポータル(駅)に着くまでに、モンスターとのエンカウントが3回。

 平均的な回数だ。


 数分後、転移ポータルに乗り込み(電車に乗車)、目を閉じた。

 次に目を開いたときは、ギルド(自社)の近くだ。

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