天才錬金術師の俺は、静かな暮らしを創りたい

@ORSP

プロローグ「静寂ってどうやって創るんですか?」

俺は錬金術師だ。

その名の通り、金を錬成できる。

当然だが、創れるのは金だけじゃない。

この世界に存在するもの、俺に錬成できないものはない。


水、土、火、風の四大元素。

剣や鎧などの武器防具、パンや米などの食料品。

魔法そのものだって、俺は息をするように創れる。

まあ、分かりやすく言えば、創造神みたいなものだ。


だが、実際に神のように振る舞うとロクなことがない。

世界の経済が崩壊したり、俺を崇拝してストーキングする奴らが出てきたり。

というか実際にそうなった。何事もなく収めるのは本当に苦労した。


だから今はこうして、御伽噺の魔女みたいに、森の中で細々と暮らしているわけだ。


さて、ずっと森の中で暮らしていると、本当に暇が尽きない。

話す相手もいないし、たまに迷い込んできた鹿や熊の相手をするぐらい。

たまに思いついたヘンテコアイテムを錬成して、

その効果で遊ぶのが唯一の暇潰しだ。


そんなわけで、今日はそのヘンテコアイテムの一つを紹介しよう。


「じゃじゃーん!なんでも吸い込む掃除機~!」


説明しよう!なんでも吸い込む掃除機とは!

文字通り、なんでも吸い込めちゃう掃除機のことである!


「いや、これ駄目だな。

 対象範囲の定義が「すべて」だから、世界そのものを吸い込んじまう。ボツ。」


再錬成。なんでも吸い込む掃除機が空気になって消える。


こほん。改めて、ヘンテコアイテムの一つを紹介しよう。


「じゃじゃーん!なんでも見える水晶玉~!」


説明しよう!なんでも見える水晶玉とは!

文字通り、なんでも見える水晶玉のことである。


「……倫理的に大丈夫か?

 女の子の裸とか見たらその時点で放映できないじゃん。ボツ。」


再錬成。なんでも見える水晶玉が空気になって消える。


こほん。天丼はもういい。まともなヘンテコアイテムの一つを紹介しよう。


「じゃじゃーん!なんでも映す鏡~!」


説明しよう!なんでも映す鏡とは!


「水晶玉と変わんねえだろ!」


パリィン!地面に叩きつけて割れた鏡が空気になって消える。


まあ、毎日こんなことを繰り返している。

思い付きでアイテムを錬成するので、99%ロクなものができない。


というか、「なんでも」とか「あらゆる」とか付けるとだいたい失敗する。

今住んでいる家だって、「普通の家」で作った至って普通の家だし。


さて、このお話は、そんな俺が暮らす日々を、淡々と描く物語だ。

そう、題して!


『天才錬金術師の俺は、静かな暮らしを創りたい』

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