3 第一生人発見

警察署をあとにし更に南へ進んでいると、先の方から男性の悲鳴が聞こえてきた。

自転車を道路脇に置き、民家の壁に隠れながら覗くと、100m程先でゾンビと戦ってる人間がいた。

というよりも既に噛まれていて、抵抗はしているものの瀕死な状態だった。

すると一本の矢が飛んで来てゾンビの頭を貫いた。

飛んで来た方を見ると、近くの民家の二階の窓にボウガンを構えた女の子がいる。

そして、先程の悲鳴で集まって来ていた何体かのゾンビの頭へ矢を放ったあと、家の奥へ引っ込んでいった。


「何あれ、めっちゃ欲しい!」


俺は目を輝かせながら、先程撃たれたゾンビの元へ近付く。

もちろん矢で撃たれても大丈夫なように、警察署で手に入れた盾を構えてだ。

近付いてもゾンビ共は起き上がる気配がなく、全て一撃で頭を貫かれて即死のようだ。

即死と言って良いのかわからないが。

民家の方からヒュッと音がしたかと思うと、突然盾に矢が当たる。

上手く弾いてくれたようだ。

民家の二階を見ると先程の女の子がボウガンを構え威嚇している。

盾を頭を守るように上部にずらすと足に撃って来た。


「イッッッッ・・・たくない」


矢は足に刺さっているが痛みが来ない。

どうやらゾンビになった事で痛覚がなくなったのだろう。

驚きの表情でこちらを見ている女の子に向かって叫ぶ。


「俺は敵じゃない!」


我ながら胡散臭い言葉だと思うが、足の矢を抜きながら相手の反応を待つ。

その間女の子を観察してみる。

女の子の髪は肩ぐらいのボブカットで色は黒、身長は150cmぐらいだろうか。

顔は色白な丸型で長い睫毛が印象的な目をしている。

小動物系とはこんな感じなんだろう。

中身は狂犬だけど。

(裏では軍服を来てそうだな)

訝しげな目を向ける女の子と見つめ合うこと数十秒、向こうから話しかけて来る。


「お前何者だ」

「ただの通りすがりだ」

「ただの通りすがりがPOLICEと書かれた盾なんか持ってるわけないだろ」


そういえば真ん中にでかでかと書いてあったな。

でも使わなかったら矢の餌食になっていたしな。

よし、ここは誤魔化そう。


「んー拾った?」

「なんで疑問系だよ!それで何しに来た」

「あんたがボウガンを撃つところを見ていてね。それくれない?」

「やるわけないだろ!」


そんな上手く行かないか。

でも銃と違って弓はほとんど音が出ないから欲しいんだよな。

ボウガンなんてどこに売ってるか知らないしな。

手放さないなら次の手だ。


「それじゃあ俺と一緒に南の島に移住しない?」

「は?バカかお前は。こんなゾンビだらけなのに外に出るわけないだろ」

「俺と一緒なら安全だとしたら?」

「南の島もそうだが、そんなバカげた話に付き合う気はない!」

「ちょうどお誂え向きに一体寄って来たからまあ見てて」


そう言うと俺はゾンビに近付いて行き前を塞ぐように立つ。

いつものように逃げて行く男性ゾンビ。

さっき噛まれてた奴かな?

それを見てボウガンを構えたままの女の子が驚いた表情で叫ぶ。


「お前なんで襲われないんだ!」

「チートだから?」

「だからなんで疑問系なんだよ!」

「ははは。でも納得してくれた?」

「納得はしてないが・・・。本当に南の島なんて行けるのか?」

「色々問題はあるが、まあ何とかなるでしょ」

「適当だなおい。ちゃんと守ってくれるんだよな?」

「そこは任せて」

「じゃあよろしく頼む。俺は 悠木 青 だ」

「俺は 福山 瞬。よろしくな悠木」


そうして俺は第一村人ならぬ、第一生人(いきびと)と出会ったのだった。

でも最初の仲間が俺っ娘ってどうなの?


因みに足の穴はもう塞がった。

超回復な第五段階クリア。

仲間も出来たので、第六段階もクリアだ。

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