第13話恋の腕相撲

孝が入学式を腕相撲大会にしてしまった。


ブレザーを脱いで知恵と梨花は体育館中央に置かれた台で手のひらを組んだ。


「水無月様!ファイトー!」

「梨花頑張って!」


といった声援が二人に送られた。


あーあ‥‥もう知らん、と健太は思った。

どちらも応援しても怒られそうだ。


孝が、審判になって

「レディ、ゴー!」

と掛け声を上げた。


優勢なのは、梨花だった。

そりゃそうだ。梨花は、ソフトボール部で毎日筋トレしているはずだ。


僕も、勝てないだろうと健太は思った。


しかし、知恵はピンチにも関わらず涼しい顔をしている。


「勝負にならないですね。」


と知恵は一気に逆転勝ちしてしまった。


知恵は高らかに拳を天井に突き上げた。


「ちょっと待った!」

と長身の男子生徒が声を上げた。


「その二人の女、俺がもらった!佐藤健太と勝負させろ!」


と叫んだ。


「俺は、高城透だ!」

と言って健太を見下げた。


僕は、透に手を掴まれて中央の台で手を握られた。


「はーい!入学式!」


と孝が言って台は撤去されて入学式が始まった。


透は、舌打ちして


「佐藤、お前の女たち、いつか俺のペットにしてやるからな。」


と言って組んだ手を突き放して消えてしまった。

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