ただ眠るだけ

@minin

第1話 がんばれ日本、がんばれ試験

真壁「なんか、眠そうだな」


西崎「完徹、観ちゃったよ。北京オリンピックの中継。観た?」


真壁「観たよ。朝のニュースで。ダイジェスト」


西崎「凄かったよなぁ、フィギュアスケートの水選手。銀メダルだったのはちょっと残念だけど、あの状況で日本人唯一のメダリストだもんな」


真壁「水選手はお前の同級生だったけ?凄いって言えば中国強すぎでしょ。いくら開催国だからってほぼ全ての競技の表彰台総なめだもんな。開催国ラック?開催国パワー?金メダルは全部中国でしょ?ありえる?」


西崎「高校三年間同じクラスね。卒業してからもたまに連絡取り合ってたよ。それにしても凄いって言うより怪しくない?まさかドーピングとか?」


真壁「ドーピング検査してるでしょ?コラーダのPCR検査と一緒に」


西崎「そーだよなぁ、じゃぁ実力か。昨年の東京オリンピックのときは全然だったんだけどなぁ」


真壁と西崎は青鬼鍼灸柔整専門学校の一年生で共に社会人経験者の脱サラ組。


2022年2月、後期期末試験の真っ最中。

運悪く冬季北京オリンピックの真っ最中でもある。


健常者の按摩指圧マッサージ科があるのは日本では数少ないため人気が高く、二人も按摩指圧マッサージ科と鍼灸科の両方の学科で学んでいた。


按摩指圧マッサージ師や鍼師、灸師、柔道柔整師は三年間学び卒業した後に国家試験を受験してそれぞれの国家資格を得ることになる。


国家試験は筆記のみだが、それぞれの実技試験は専門学校の期末試験時に行われ、合格しないと卒業できない。卒業証書が国家試験受験の必須条件となっている。

二人にとってはまだまだ先の長い話。

今回は入学してまだ二回目の期末試験であるが約一週間の試験期間の間、丁度オリンピック期間と重なる不運。


先日の指圧の実技試験の際は、指圧担当の先生が患者役で直接施術を行って合否判定が行われた。

ご高齢の割には矍鑠とされ普段は厳しい先生であったが、1クラス30人程度の生徒に立て続けに施術を受ければ流石の先生も途中からウトウトし出して、生徒が先生を起こすこともしばしばあった。


今日はお灸の実技試験の日。

西崎はそんな大切な日に寝不足のまま臨むこととなる。

お灸の実技試験は生徒同士でペアを組んで施術しあい、担当の先生はツボの正確性や施術の手順、手技の熟練度を真横で注視採点する。制限時間もある。


そのため、判定される生徒の緊張度はかなりのもので、指先は震え、頭も真っ白になるため、不合格者が続出する。

不合格者は後日、有料で追試を受けることとなるため何としても一発合格したい。


術者の技量の中には丁寧さや刺激の適度も含まれるため、患者役が声を出したり大きく体を動かしたり痛がる素振りをすると当然減点される。

そのため、ペアを組む相手にも寄るが患者役はどんなに痛くても熱くても我慢してじっと堪えることをお互い約束して試験に挑むことが多い。

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