二人だけの内緒話

____のんびりとした時間が過ぎたお茶会が、おばあさんの一言によって緊張感が走る。

そして、セバスがキリっとした真面目な顔つきになり話し始める。

「質問というのはですね、実はこの家に入ってから妙な感じがしまして、何かこの家に魔法など掛かってはいませんか?」

相手の正体が分かったことで、遠回しに聞かずにそのまま聞くことにした。


「さすが、旦那様。微量な魔力に気が付くとは・・・」

小さく拍手をするおばあさん。

「いやいや、それほどではないですよ、あなたより魔力に関しては疎いので・・」

(これで更なる隠し事をを話してくれれば良いのですが、反抗されて殺したくはありませんね・・・)


困っていた人間を助けたのに、その人間を殺すかもしれない。

美味しい紅茶を入れてくれた人間を殺すかもしれない。

のんびりとした時間を共有した人間を殺すかもしれない。


などと、人間とはなんて不思議な種族なんだろう。さっきまで弱い存在だと思っていたら、ここまで状況が変化するとは・・・と今日の事を思い出していた。


「じ、実は・・・」とおばあさんが椅子に座った状態で、膝の上でギュッとこぶしを握る。

「ふむ。」

セバスは先ほどからのキリっとした表情を崩さず聞く。


おばあさんは意を決したように話し始めた。

「・・・実は、人間が怖いんです・・・」

(・・・?・・なんと・・・)

セバスは、もっと衝撃的な話を聞かされるのかと思いきや、おばあさん自身の事情の話だった。


セバスには、何故人間が怖いから魔法をこの家に掛けるのか分からなかった。

自分達からすれば人間とは、とても弱い下等生物で、何かあればすぐ死ぬ種族だからだ。

(たっち・みー様の様に弱い存在は助けるべきだとは思うのですが、人間が怖いという感情はありませんね・・・)


おばあさんが話を続ける。

「自分も人間なので人間が怖いという話は、人間ではないあなたには分からない話だとは思うのですが、昔のとある事情で人間が怖くなってしまって・・・」

「それは、大変でしたね・・・どうぞ話を続けてください。」

先ほどの厳しい表情から、穏やかな表情に変わる。


「はい・・・私は、タレント持ちでマジックキャスターを仕事にしていたと先ほど話しましたが、自分は魔力も人より多いのですが、疲れやすくてあまり冒険に出る事が出来ませんでした。」

おばあさんはゆっくりと話し始めた。


「なので、趣味である洋服づくりと魔法を掛け合わせることで、チームの仲間を助けることは出来ないか?と考え、試行錯誤の末、魔法を掛けなくても着るだけで魔法の効果を得られる服の製作に成功したのです。」

「ほお・・・それはすごいですね・・・魔法が使えない方でもですか?」

親指と人差し指を顎に当てながらセバスは質問をした。


「はい、誰でもです。魔法を糸に練りこんであるので、肌に触れることで効果が発生します。怪我をしにくくなる、頭が冴えて動きやすくなる、回復力が上がるなど・・・私が知っている回復系や補助系の魔法が、一つの服に一つずつ入っています。」

おばあさんはふう・・と一息をついて、紅茶の残りを飲む。


「そんなすごい効果のある服なら、冒険者などに人気が出たんでしょうね。素敵な才能です」

とセバスはにっこりと微笑んだ。

「いえそんな事はないです・・・でも、おかげさまで当時の仲間には、それはもう好評で、次から次へと頼まれました。疲れやすい私でも、人の役に立っていると感じられて一番幸せな時間でした」

昔を思い出して、つい笑みを浮かべるおばあさん、しかし顔がまた暗くなる。


「でもそんな幸せな時間は続きませんでした。私の服が好評になり、噂が広まると、冒険者の仲間以外からも注文が殺到して、私は大忙しになりました。仲間の知り合いに商人がいて実店舗などで売り出すと、更に売れに売れて、超が付くほどの大金持ちになりました。でもここから不幸が始まりました。」


















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