第4話 筋肉痛

 就寝前に射出して、前日と同じ指示を出している。

 今日も昨日と同じだけ、森が切り開かれていたそうだ。

 俺がやったと疑われたが、高熱を出して数日寝込んでいたので容疑から外れた。


 初日から10日間ずっと射出して森を切り開かせたら、いつの間にか。

 「精霊様が私達を助けてくれているのよ!」

 と誰かが言い出したので、精霊の御業になった。


 回復して、見舞いに来てくれた村人の家に挨拶まわりをしていると。

 村の南の日当たりのいい場所に、いい感じの縦長の石と簡単な社?が建ててあった。


 いずれはあの石を、ちゃんとした像に加工して貰うらしい。

 「村が発展したら」

 とか、わざわざ区切って祈りに来ていた村長が言っていた。


 村長は知っていて当たり前と話しているが、精霊に見立てた石だと言ってないよ?

 言葉足らずな男が受けるのは、昭和の映画だけらしいよ?


 結局春が来るまでは夜明け前の森の切り開き続け。

 都市からは偉い神官まで来ていたらしい。

 この街は教会?神殿?に正式に認められ、精霊村と呼ばれるようになった。


 この世界は春になると加齢するようで。

 俺も6歳になった。


 森は村のあの時の柵のから10キロも切り開かれても、まだまだ深かった。

 霧になって空から見たから間違いない。


 森が少し狭くなり、弱い魔物か生きていたスペースがなくなり。強い魔物にいきなり出会える森として、そこそこ有名になった。


 村には万屋ギルド精霊村支部が建築され、万屋…つまりなんでも屋の組合が出来た。


 万屋には戦闘万屋と万屋の2タイプがあって、無印の万屋は都市や集落内の雑事を熟す。

 戦闘万屋は魔物の討伐や旅の護衛等、文字通り戦闘関係ならなんでも受ける者達だそうだ。

 受けると言っても、条件次第なのは当たり前だが。


 そんな万屋ギルドと万屋達が村に来たのは、森の魔物が中堅の戦闘万屋が稼ぐのに適しているからで、都市へと輸送コストを考えてもそこそこの利益が出るらしい。


 なら俺も魔物を狩って、ギルドに売ろう!


 あまり大量に狩っても、戦闘万屋から獲物が減ったとかイチャモン付けられそうだし。

 たまに狩るくらいでいいよな。


 霧になると目撃証言で俺がいきなり消えたとか言われるので、鎖の立方体に入って森に移動。

 鎖だけでも注目されてるのに、これ以上は厄介事の素だ。


 森まで1時間と更に奥まで1時間移動して、パーツ射出。

 上手くワイバーンを狩れたので帰ろう。


 霧に変身して、鎖はワイバーンの血抜きと移動に使う。

 一応立方体は維持しているが、中は空だ。


 吊り下げた魔物に引き寄せられ別の魔物に奇襲させたら危ないから、この方法にしている。


 村に帰ると立方体に入り、体を戻す。

 変身解除の方が格好いいかな?


 ギルドの裏まで飛んで、ワイバーンを下ろす。

 解体場が裏にあると今朝聞いたからだ。


 村なので建物の間隔は広く、万屋ギルドも隣と100メートルほど離れている。

 なので四方からギルドの裏に、沢山の人が押し寄せて来るのが見えた。

 俺は慌ててもう1度ワイバーンを吊るすと、鎖に乗り空へ逃げた。


 どれだけ空に居たか、下の騒ぎが収まり俺を呼ぶ声がする。

 ワイバーンの高度は維持し、鎖を伸ばし俺だけ高度を下げる。


 ギルド裏の人だかりに、すっぽり空いた場所に1人の巨漢が立っているので、巨漢の前に鎖を伸ばしてから降りる。


 「俺は万屋ギルドの支部長だ」

 「俺は村人の子供で6歳だ」

 「名前は」

 「自分は名乗らないのかよリオだ」


 支部長は頭に白い物が混じっている50代の男性で、衰えを知らない様なマッチョだ。

 タンクトップにスボンと、支部長なのにラフ過ぎる姿だが。


 「ならリオ。お前に俺の権限で、万屋見習いにしてやる。しかもこの村でなら、ずっと依頼を受けなくてもいいようにしてやる」


 「両親と相談してから決めます。あと、あのワイバーン買い取ってください」


 「そうか。後で職員をお前のうちにやるから。職員からご両親にギルドの説明をさせてもらう。それとワイバーンの買い取りは大歓迎だ。1ガネーの誤魔化しもなく金は俺がお前のギルドタグに入れておいてやる。下手に職員に現金を持たせると襲われるからな」


 「よくわかんないけど待ってる。ワイバーン下ろすよ」

 「お前等ワイバーンが降りてくるぞ!もっと下がれ、潰されるぞ!」


 支部長が注意喚起しているので、人の移動にあわせてワイバーンはゆっくり下ろす。

 十分なスペースが出来たので地面に置いて、鎖は外す。


 「この年齢で魂魄武装とは…」

 「んじゃ、あとよろしく」


 鎖を伸ばして建物の屋根や木に絡ませ、俺を引っ張る。

 慣性がついたら他の場所に絡ませてと繰り返し、家まで帰った。


 森だと木が密集し過ぎて使い所が限られる移動方法だけと、都市部や集落では有効と知識にあったので使ってみたが。かなり楽しかった。

 両親には、狩りに出て怪我はないかと心配されたが、怒られなかった。

 やった。


 翌日支部長と万屋職員が来て何か話していたが、俺は寝ていた。

 筋肉痛で動けなかったからだ。


 昨日の鎖を絡めて引く移動は、普段使わない筋肉まで全力で使うらしく。朝起きたら痛みでのたうたまわり起きられなかった。


 両親の目もあるのでトイレは鎖で移動しているが、正直霧になったら筋肉痛も治まるんじゃとか思っている。


 金とか用心とか聞こえるのでタンス貯金した場合強盗される可能性が高いっていう話しかな?

 支部長が手ぶらで来たのは理由がありそうだし、両親と支部長に任せておこーぅあーいたたたた!

 丸3日、マトモに動けなかったぜ…


 俺は両親から強さと安全性が認められ、単独での狩りの許可が出た。

 それでも毎日は狩りに行かず、今日は村の畑に来ている。


 鎖の両端を伸ばして、雑草抜いている。

 残像で鎖が数十に見える速さで、かつ正確に雑草だけを抜いていく鎖。


 俺の能力だけど、俺は指示しかしていない。

 我が半分前世の心友鍛冶神よ、ファイスが有能すぎて感謝しかない!


 鎖の応用でワイヤーが出せないか試す。

 ワイヤー出ろワイヤー出ろワイヤー出ろ!


 強く念じ続けたらワイヤーが出た。

 太さも変えられたので、更なる多様性が出てきた。


 鎖がワイヤーになるならと、まずは鎌を伸ばしてみる。

 確かなイメージを持ち、強い意思で念じる。

 鎌は予想に反してジリジリと伸びた。


 伸びきった鎌は1度自動で元の長さに戻ると、今度は一瞬で壁ギリギリまで伸びた。

 つまり鎌はゆっくりでも一瞬でも、望む速度と長さに伸びるとアピールしてきたのだ。


 ファイスの優秀さが留まる事を知らなくて楽しい。


 柄は自動で最適な握りの太さになり、伸縮自在。

 他のパーツもマジかよって変型も可能だったが今はないしょだ。


 俺の中で確かな答えが出た。

 ファイスは想像力次第で、大体なんでも可能になる!だ。






 今日は気魔神の3エネルギーの総称を考えようと思う。

 いちいち3エネルギーと思うのが、長いから面倒になった。


 気魔神は3リキに。

 3力を融合させたエネルギーは爆力バクリキになった。


 先日の筋肉痛後の3力の練習中に爆力が完成した。

 まだ制御が難しく最小威力でも暴発しないように消すので精一杯だった。


 内包エネルギー量で考えると天文学的な威力になるので、制御ミスは相打ちで終わらない悲劇になるだろう。


 多分一瞬で村は消滅し、爆風の届く範囲は見当もつかない。

 爆力での肉体強化なんて夢のまた夢だ


 今はファイスで接近戦を行い、3力を放ち中遠距離戦を行う方針で鍛えよう。


 気は元々肉体に宿るエネルギーなので、肉体強化とは相性がいい。

 身体能力が爆発的に上昇するが、体力の消耗も激しい。


 魔力による肉体強化は強化率と強化時間が最も安定していて、戦闘用の魔法が使えない俺との相性はよい。


 神力は強化率が気より高いが、神力の回復が遅いので。余力を残すと使える時間も短い。

 万一爆力を使う事になったらと思うと、量の少ない神力は節約か使用しない事が望ましい。


 なので基本は強化も飛び道具も魔力で行い、気は温存して神力は切札。

 そして爆力はまだ手札として考えない。

 まだまだ強くなる余地はあるけど先は長そうだ。


 魔力による飛び道具は主に3つ

 牽制及び単体攻撃用に魔力を弾丸状に放つ、名前もそのまま魔弾。

 魔力によるビームの魔閃。

 魔力の津波による広範囲攻撃の魔波。


 また攻撃用途によって派生技も開発したが、この3つの枠から外れるものは思いつかなかった。


 通常の魔弾は小型拳銃のイメージ。

 マグナムは威力を上げた大型拳銃をイメージ。


 ライフルは威力、射程、貫通力、全てが魔弾最強で、対物ライフルをイメージして作った。

 ライフルは強すぎて使い所が限られるが、これがあるとかなり安心出来る。

 連射可能な対物ライフルとか恐過ぎる。


 魔閃は単発のレイと複数のレイン。

 追尾性に優れ消費した魔力を周囲から吸収しながら進むため、ターゲットを殺すまで止まらないエグい技になった。

 主に高速移動する相手や、遠くまで逃げた相手に使う予定だ。


 魔波に派生はない。

 その時の敵の規模によって、範囲と進む距離を変えなければならないからだ。

 対軍団規模用の殲滅技になった。





 体を霧に変化させる、変身と呼んでいる不思議現象も研究している。

 両親に感付かれる訳にもいかないので、血統について聞く事は出来ないなが推測はしてみた。


 1 実は吸血鬼説。

 地球の伝説にある弱点を持ってないので、仮説で終わる。この世界の吸血鬼の情報が欲しい。


 2 先祖返り。

 これも仮説で終わる。


 3 人間だけど命の危機に瀕して能力が覚醒した。

 これが1番ありそうだが体が、霧に変化するなんて狭い村にそんな情報があるはずもなく。能力の検証にシフトしていった。


 1 変身は一瞬。

 2 物理攻撃無効。

 3 空中移動可能。

 4 速度はそこそこ出る。

 5 攻撃魔法未体験なので負傷するか不明。


 霧以外にも変身出来るかと思い、強くイメージしてみる。

 やはり狼や、複数のコウモリに変身可能になった。

 どれだけ強くイメージしても、他の現象や生物にはなれなかった。


 能力は吸血鬼のもので間違いないだろう。

 地球基準でたけど。

 なので俺は、吸血鬼の能力に覚醒した人間だと思う事にした。

 現状出せる精一杯の答えがこれだ。

 情報が少なすぎんよ。

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