フレームの外側の世界が、その出会いによって鮮やかに色づく

誰と、どんな風に出会うか。
全ての人の人生において、それは大きな意味を持ちます。
誰一人とて同じ個性を持たない世界で、他人と関わることがなければ、自分がどんな形をしているのかも分からない。
凹んだところを埋め合うように、寄り添える形の相手と一緒にいられたら、自分の持つ可能性のパワーは何倍にもなるでしょう。

ADHDという特性を、とても丁寧に描いた作品です。
どこかの誰かが決めた「普通」の枠組みから大きく外れてしまった主人公・瑠璃は、馴染めなかった学校の外に居場所を見つけます。
ありのままを受け止めてくれる澤田先生に、逃げることなく正面からぶつかってくれる湊人。
二人と出会わなかったら、瑠璃は興味の方向へ突き進むことも、相手の気持ちを慮ることも、きっとできないままだったと思います。

澤田先生のアトリエの空気感が素敵です。
専門的な画材や画法の知識も、この物語に奥行きと彩りを添えています。
湊人とのやりとりは、めちゃくちゃニヤニヤしました。もう一生やってて欲しい……笑

子供が大人になる道筋は、みんな同じでなくとも良いはずです。
絵の世界で身を立てていくことと、瑠璃自身が大人になること。凸凹の道でも、前へと進むパワーを感じました。
爽やかで、心温まる読後感。読み応えのある、素晴らしい作品でした!

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