第22話 ノート page21

 頭の上に点けられた照明器具の灯りが、ひとつひとつ消されて行くような気持になりました。

 腹立ち紛れにチョコレート・パフェが食べたくなった私は、通りかかったウエイトレスを呼び停めて追加をしました。

 スプーンで生クリームをすくいながら、思い出したように両親に私のことを話してくれたかどうかを訊ねます。

 彼は「ああ、間違いなく話した。そしたら、おふくろが一度君に会いたいって……」と答えました。

 私も、「ママが同じこと言ってたわ」と伝えると、「もう少ししたら仕事が一ト段落するから、そしたら顔を出すようにするよ」

 彼はそっけない返事を返しましたのです。

 私は、がっかりして全身からちからが逃げ出してしまいました。

 その後しばらく彼と会うことができませんでした。

 仕事が忙しかったらしいのです。

 同じ社内にいても課が違うと細かいところまではわかりません。

 2週間後、仕事中に彼のデスクのところに行き、

「今夜家に来られない? 丁度パパも帰って来るから……」

 と小さな声で伝えました。

 すると彼はちょっと考える仕種をしてから、

「今日は大事な用があって、どうしても都合悪いんだ」

 私の視線から逃れるようにして言うのです。

 そのときもまだ彼を信じてました。

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