帝女マリカ誕生記
彼方廻
第1章:相棒との出会い
第1話 バレンタインデーの独白。
あなたは、無駄になったバレンタインのチョコレートをどうしてる?
そう、無駄になったとき。つまりは、振られたときに。
そんな経験ないから、知らないって? それは、どうも失礼しました。
ともかく、わたしは、断然、食べる派でした。もったいなくて捨てられなくて。
チョコレートに気持ちがこもっているかどうかは、まぁ、ともかくとしても。
労力をしこたま注ぎ込んだのは、そりゃもう間違いないわけで。
ついでに、ドキドキ急転直下型のズブズブ的にずっしり重い心労もひどくて。
心も体も、カロリーを要求している、くれくれ状態で、はたして、手にしたチョコレートが捨てられるものであろうか。
いや、無理だって。わたしには、絶対不可能。
たとえ、それが、初恋相手から、冷酷に突き返されたものであろうとも。
「誰が、おまえの手作りチョコなんか欲しいもんかよ。俺が『くれ』って言ったのは、おまえの父ちゃんが作った高くてうまいトリュフだ」
そうですか。お目当ては、うちの店の高額商品でしたか。
そんなものが欲しけりゃ、金だして買えよ。コノヤロー!
いらん期待をさせやがって。ただのたかりであったとは、どうしてくれよう。
ここで、そもそもの話からしておこう。
わたしのルーツとも言うべき、『ショコラ洋菓子店』の歴史から。
今を去ること七十余年前、戦後の混乱期に、腹ぺこ少年であった
母親にケーキを
その二人の間に、生まれた一人娘が、わたしのママである。当然ハーフで、モデルばりのルックスの美女。クォーターのわたしは、そばかすだらけの白豚だというのに、なんという格差。自分の体内にひしめく遺伝子の悪意を感じるほどだ。
どこをどう組み合わせたら、ここまでひどくなるんだよ、コンチクショウ!
まぁ、実の所はわかってるけど。もう半分の供給者が問題だったってことは。
「マリちゃんは、ほんとに、お父さん似ねぇ」
いったい何万回、このセリフを聞かされたことか。
そりゃ、普通なら、たいして意味のない感想なんだと思うよ。
どちらかと言えば、父親よいしょの御挨拶というか。
でも、うちのパパは、このセリフを喜ばない。喜べるはずもない。
むしろ、喜んだりしたら、はったおしてやるぞ。愛娘である、このわたしが。
なんとなれば、小学生のパパにつけられたアダ名は『がんもどき』。
知ってるよね。あの丸くて、でこぼこした揚げ豆腐。
お
「おまえ、あのおたふく
いくら娘の選んだ男が気に入らなかったにしても、あまりにも容赦がない。
この話を聞いたとき、わたしのあどけない子供時代は終わりを告げた。
つまり、なにか。父親似のわたしも、おたふく風邪を患っているのかよ。
もともと、お祖父ちゃんに、
「コレが孫だと思うから、可愛く見えるんだろうなぁ」
ハイハイしていたわたしを見て、しみじみと呟いたという
「
悪かったな、営業妨害で。今まで、
あの日、わたしの繊細な思春期は、
ふん。一応は、可愛がってくれたわよ。
それでも、母親似の弟の方が、よりいっそう可愛がられていた。
目に入れても痛くないってやつ。もうデレデレに。あの
面食いというなら、パパだって同罪だ。ママにべた惚れなんだから。
見た目にこだわらないのはママの方。よくぞ、あのパパと結婚したもんだ。
何年か前の結婚記念日に聞いてみたら、ママはあっさり答えてくれた。
「だって、最高のチョコレートケーキを作れるじゃないの」
どうやら、手作りケーキの味が、理想とすべき第一条件だったらしい。
夫にケーキを貢がれる妻の伝統を
うん。パパの作る濃厚なチョコレートケーキは、そりゃもう絶品。
祖父ちゃんが、しぶしぶながらも、婿入りを認めたほどの腕前だもの。
トリュフも
ここで、話が戻るわけよ。パパのトリュフがお目当てだったってオチに。
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ライトノベル初挑戦となります。
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