vs『魔術師』(前編)

『黒龍騎士団の皆様、お聞きください』


 『正義』を撃破した直後、フーダニットから通達が届いた。


『エリア外の“リブート”に関する情報を入手しました。

 お手数ですが、ご助力願います』


 その言葉を聞いた一同は、一斉にテレポートした。

(注:鋼鉄人形にはデフォルトで“テレポート能力”がある。

 ただし霊力の消費が大きい為、乱発出来ない)


     *


「何だ、フーダニット?」


 到着早々、龍野が疑問を飛ばす。


「まずは、これを」


 フーダニットが部下に命じ、モニターを点灯させる。

 と、謎の男の画像が表示された。


「誰だ、こいつ?

 ッ、奇妙な顔だな……」

「ええ。というか、目が“トカゲ大夫”を彷彿とさせますね……」


 ゼルギアスとハルトムートが、嫌悪感をあらわにする。

 他の面々もまた、同様であった。


「それで、フーダニット。

 俺達がこいつを狩れ、ってこったろ?」


 龍野がまとめると、フーダニットはこくりと頷く。

 が、表情を曇らせた。


「そうなの、騎士様……。

 けれど、問題があるのよね」


 さらにスクリーンの表示内容が変わる。


 今度は、男の所在地と思しき場所が表示された。


「あら……。

 “コロニー”の外なのね」


 ヴァイスの漏らした呟きを、フーダニットは肯定する。


「そうなの、お姫様。

 問題は“そこ所在地”なの。


 “コロニー”の外、しかもその場所の大気は二酸化炭素。


 特別な対策を施さなければ、いくら騎士様やお姫様でも、生存は出来ないわ」

「その点はオレに任せろ」


 出張ってきたのは、ディノであった。


「オレの力なら、大気の調整も出来る。

 つっても……影響範囲は、鋼鉄人形一機分が限度だけどな。

 それ以上は、コントロール出来る保証がない」

「なら、俺達だけで行くか」


 ディノの提言に龍野が賛同し、話は決する――かと思われた、その時。


「待って、騎士様、お姫様、それに神様。

 “助っ人”に、来てもらっているの」

「助っ人?」


 龍野の疑問を無視するように、フーダニットは別の方向へ首を向ける。

 そして、大きな声で呼ばわった。


「お願いします、殿


 その声と同時に、金髪碧眼の少女がやって来る。


「引き受けた。

 久しぶりだな、須王龍野」

「ララ殿下……!」


 かつて龍野が戦い、そして共闘した少女、ララ・アルマ・バーンスタインその人が、再び目の前に現れたのであった。


「これも何かの縁だと思ってな。

 もっとも、こうして呼ばれるまでは、フーダニットとは初対面だったのだが」

「どちらかと言うと、俺……ですか?」

「ああ。

 それにしても、立派になったものだな、須王龍野……」


 ララが不自然なタイミングで、言葉を止める。


「…………」


 龍野もまた、ララの様子を察した。


「叔母様~❤❤❤」

「大叔母様~❤❤❤」

「ララ殿下~❤❤❤」


 ピンク色のオーラを放つ三人――具体的には、ブランシュ、グレイス、そしてシュシュ――が、野獣の眼光を輝かせ、今にも飛び掛からんとしていたからだ。


「すまん、話は後だ……!」


 ララが猛スピードで逃げ出そうと試みる。


「逃がしませんわ~❤」

「ああ、大叔母様~❤」

「可愛いですわね~❤」


 が、先回りされ、おまけにその場で包囲・拘束されてしまった。


「ちょ、やめろ貴様ら!

 というかシュシュ、貴様までもか! しかもいつの間にかこんなに成長しおって、ぐぬぬぬぬぬぬ……!

 頼む、須王龍野、私を助けてくれ……もががっ」


 ララの必死の要請も、胸元にたわわに実った、六つもの巨大な果実の前では何という事は無い。

 すぐに顔を沈められ、抵抗も弱まった。


「ああ……この柔らかいほっぺた、いくらでも突っついていられますわぁ~❤」

「太もももすべすべして、気持ちいいですわねぇ~❤」

「あはっ、ララ殿下……。

 乳首、硬くなっておりますわよ? うふふ……❤」


 百合を通り越して地獄絵図が、そこに広がっていた。


「あ、あの……騎士、様……。

 どういう、事、なの……でしょう、か?」

「あー、あいつらにとっちゃいつもの事だ。

 ララ殿下を前にすると、血相と人相が変わる」

「はぁ……」

「な、ヴァイス?(あー、そういや、ヴァイスもララ殿下を愛でようとする勢力の一人だったな)」


 フーダニットの質問に答えた龍野は、ヴァイスの賛同を得ようとする。


「ええ……❤❤❤(フーダちゃんや団員の皆様の前でなければ、私も、あの中に混ざってたわね……❤)」


 今回は“副団長”として必死に自制しているヴァイスだが、野獣の如き眼光は、隠せていなかったのであった。


     *


「ゲホン、ゲホッ!

 それでだ、須王龍野……確認がある」


 三十分後。

 これでもかとばかりにもみくちゃにされたララが、龍野に確認を行う。

(注:なお、ブランシュはブレイバに、グレイスはハルトに、シュシュはヴァイスに拘束され、沈静化させられていた)


「『私は貴様のランフォ・ルーザ(ドライ)の映像を共有しつつ、霊力を込めた投石で援護射撃する』……というものだったな?」

「ええ、殿下」


 龍野が肯定すると、ララは宣言した。


「決まりだ!

 私がランフォ・ルーザ(ドライ)に視覚共有の法術を組み込み、かつ“ドライ”が弾薬を補充した時点で、作戦開始とする!」

「それで行きましょう、殿下」


 かくして、一行は作業に取り掛かったのであった。


     *


 さらに十五分後。


「では、行ってくるぜ!」

「ご武運を。

 須王龍野、ヴァイスシルト殿下、そしてアークエグゼ様」


 全ての事前準備を終え、ランフォ・ルーザ(ドライ)が、テレポートした。


 今、作戦が始まったのである。

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