第5話 正体

お腹もすいて、頭も疲れ切っていた「あたし」は、


ん?と、虚ろに振り返った。


何処の世界にも、淋しくて物好きな男、は、居るものだ。


「肌も白いねえ。目も何だか不思議な色で、綺麗だねえ。そんな恰好でどうしたの?


親父さんと、喧嘩でもしたの?」


明らかにこの町の人間じゃないことが分かる、服装。


太って突き出た腹。


大抵、そう言う男は、優しい声と憐みと、何か物欲しげな淋しげな目で


「あたし」を、見つけて、寄ってくる。口元と目元がだらしない。


こういう男に、「あたし」は、いいおもちゃに、映るらしい。


「口、利けないの?可哀そうに・・・。そんなに痩せて・・・。おじさんが、何か美味しい物を、食べさせに連れてってあげるよ。」


無言で、じっと、その男の、膨れた耳たぶを、見て居た「あたし」に


その男は言った。


いつもは、無視して、踵を返すのだけど、この日は何だか、どうでも好い様な気分で


いや、単にお腹が空き過ぎていたのかも知れない。


「あたし」は、その男が差し出した、やたらと大きな光る指輪がハマった


小さくて、太い指の手に、自分の手を、差し出した。


「げっ!!!」

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