《 コーポラス谷原 103号室 》 3・4・5

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 八月十一日 午後四時


 坂口浩介のアパートを張り込んでいた、水月巡査が戻ってきた。手にはさっき撮影した、坂口の写真を持っていた。

張り込み中に、一度外出した午後三時。外出してコンビニエンスストアに行った際に、撮影に成功したという報告だった。


 運転免許証の顔写真データから、坂口浩介の写真を照合してみた


「坂口浩介で間違いないな。」

 と、田辺警部は、言った。


この2枚の写真を、コピーして全捜査員に配布してください。と指示をした。




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 八月十一日 午後四時三十分


 田辺警部は、今後の張り込みについて少し考えていた。アパート付近は住宅街で、覆面パトカーでさえも置くと目立つような閑静な場所だった。近所の家の一部屋を借りるしか、張り込みをする手段はないと考えていた。


 そこで、大和南署刑事課課長の秋島太一警部に、捜査協力の要請を行った。


 坂口浩介が住んでいる、コーポラス谷原が監視できる範囲で、一般家庭で張り込みに協力してもらえそうな家を探してもらえるように依頼をした。



 同日 午後六時



 大和南署から刑事課の麻生忠彦警部補と前谷徹巡査部長が、捜査本部に到着した。


 アパート周辺の一軒家から、空室の可能性がある、アパートの所在地を記載した一覧表を、提出をしてくれた。


 一軒家:三軒  

 アパート:一軒  サン・ハイム渋谷


 田辺警部は、このアパートに注目をした。

24時間の監視を行うには、なるべく住民にも悟られる可能性が低いことが望ましい。



 同日 午後六時三十分



 10係の安田警部補に、このアパートの管理をしている不動産屋を調べて、空室があるかどうか確認をするように指示をした。

安田警部補は、新城巡査部長と大和北署の工藤巡査部長と共に出かけて行った。



 同日 午後八時



 安田警部補から連絡がはいった

「管理する不動産屋が見つかりました。そこで、空室を確認しましたら、坂口浩介の部屋が見ることができる、サン・ハイム渋谷の202号室が空いていました。いま、工藤巡査部長にその部屋に行ってもらい監視するように指示をしました。また、木島巡査にも同様に監視するように指示をしました。」


 坂口浩介が住むアパートの玄関を監視ができることになった。これで、気兼ねなく監視ができる。と、ひとまず、安心ができた。




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 現在のところ、坂口浩介が有力な犯人だということは、確信しているが。物証となる、証拠がまったく無かった。

犯行に使用された銃弾には、何一つ本人とつながる証拠は残っていない。自動車が光ったという目撃情報や防犯カメラ映像はあるが。光ったということだけであって、そこから銃弾が発砲したという証拠にはならない。だから、証拠になる物証を見定めなければならない。



  『 監視の目的 』


 一、坂口浩介の行動監視

 二、犯行に使用した軽自動車に銃弾など殺傷につながる脅威を準備する姿の確認



 次の一週間まで、六日。

それまでに、確証を得なければ次の犯行を犯してしまう可能性がある。それだけは、なんとしてでも阻止をしなければ、ならない。

と、田辺警部は、今後の対策を考えていた。




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