《 第二の射殺事件 》 2・3

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 司法解剖の結果と一緒に判ったのが、銃弾の入射角と、死に至った経緯だった。


 瀬谷北署鑑識班の大井邦夫巡査部長は、次の通り報告した

「司法解剖の結果。銃弾が体内にはいった入射角は、ほぼ垂直でした。亡くなった高橋君の身長は175cmです。自転車のサドルの高さと高橋君の身長から割り出したわき腹の高さは、約110cmでした。人間が拳銃で弾を撃つ時は、腕を垂直に上げて拳銃を目線に合わせて照準を充てにして引き金を引く。今回は地上から約110cmの高さで被害者に垂直方向に弾が射抜かれています。これは座っているか膝立ちで撃ったということになります。」


 井上警部は、次の意味で確認をした

「垂直に射抜かれたということは、その約110cmの高さに銃を持っていかなければならない。」

「そうなんです。高橋君がいつも通っている時間・経路を知っている人がいたら、確実に犯行を行えますが、犯行現場に椅子等の座って過ごせる場所はなく。長い間しゃがんでいたら、目につくと思われます。」


 それを聞いた井上警部は、須藤巡査部長に質問をした

「現場近くの防犯カメラの映像は、あったのですか?」

「いまのところ、現場を映している防犯カメラを発見することができていません。」



 一連の報告を聞いた捜査第一課11係係長の下条警部は、次の通り明日の捜査方針をまとめた。


 一、犯行時間の目撃者を探す

 二、防犯カメラ映像の回収

 三、詳しい犯行の現場検証




               3


 七月二十一日 朝八時


 犯行現場には、多くの捜査員の姿があった。

昨日あった事件の聞き込みと、防犯カメラを探すためだった。


 行き交う人々に佐伯警部補は、こんな質問を行っていた

「この高校生に見覚えはありますか?」

「この学生さんを見かけたことありますか?」

「この自転車に乗った人を見かけたことはありますか?」



 何人目かの歩行者に同じ質問をした時、見かけたことがあるという回答があった。


 見かけた男性は、いつもこの時間に朝の散歩をしている自営業の高松一慈さん(五十五歳)だった。そして、こんな話をしてくれた

「この高校生、よく見かけるよ。いつも自転車で通学しているでしょ。」


「そうです。良く覚えていましたね。」

「あー、覚えているよ。」


「何か目立ったことがあったのですか?」

「以前、テレビの番組で自転車の交通ルールという話をしていたのを見ていたんだよ。」


「それで?」

「自転車の交通ルールでは、自転車は車道の左側を通行する。というルールの話があってね。」


「そうですね。」

「この人は、毎日右側の車道を、走ってきていたんだよ。しかもここら辺は、歩道も狭いからね、だから車道を走っていたんだよ。」


「逆走していたということですか?」

「そうだよ。毎日ね。」


「だから、覚えていた。」

「そうだよ。交通ルールはルールだろ。」


「そうですね。」



 佐伯警部補は、捜査本部に戻って、井上警部に目撃者の話を報告した

「高橋君は、いつも道路の右側の車道を走っていたということか。」

「そうです。」

「だから、道路の右側で倒れていて、左のわき腹を撃たれたということか。」

「そうなります。」


 ほどなくして、鑑識班と防犯カメラを探しに行っていた刑事が、戻ってきた。




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