神奈川連続射殺事件

阿滝三四郎

《 第一の射殺事件 》 プロローグ

今年は例年になく、シトシトと降る梅雨だった。

そんな梅雨があけようとしている。

気象庁は、今年は暑くムシムシとした夏になると予報していた。


 神奈川県警察本部刑事部捜査第一課10係係長の田辺潤警部は、部下の安田大輔警部補と県警はじまって以来の重大事件を前に、しばし、ゆっくりとした時間を過ごしていた。階級が違っていても、お互いの趣味である珈琲の話題は、二人の絆を深める要素のひとつとお互いに感じていた。そんな二人の時間を裂く一本の電話が、刑事部捜査第一課課長の佐々木陽一警視からはいった。


「田辺君、部屋まで来てほしい。」

「はい。いますぐに伺います。」


電話を切った田辺潤警部は、安田大輔警部補にむかって

「捜査一課長から、呼び出されたよ。」

「何か、あったんですかね。」

「なんだろうね。ちょっと声が張っていたよ。何か大変なことかな、行ってくる。」


すぐに、田辺警部は、捜査第一課課長の佐々木警視の所へ向かった

「失礼します。何がありましたか。」

「さっき、箱根署から連絡があってね。」

「はい。」


「管内で、殺人事件があったという話だった。」

「はい。」


「それが、ただの殺人ではなく、銃が使われたと思われる、射殺事件だと見立てられている。」

「はい。」


「すぐに、臨場してくれたまえ。箱根署に捜査本部を設置する。」

「はい。」


 田辺潤警部は、10係の安田大輔警部補・新城泰治巡査部長・酒田新平巡査部長そして永井淳也巡査と水月菜穂子巡査を引き連れ、本部鑑識課にも臨場要請をして、緊急走行で箱根署に向かった。



その頃箱根署では、開署以来、初めての捜査本部の設置に、署員総出で取り組んでいた。

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