第4話 幸せ

正直驚きを隠せなかったが、動じるわけにはいかない

この世界では一瞬のスキが命取りになるから


今井に銃を向けたまま少女に声をかけた


「大丈夫だ。俺は助けに来ただけだ。なにがあったんだ?こうなった経緯はなんだ?名前は?年齢は?」


本当は優しくしてやりたかったが今井になめられるわけにもいかないからワザと冷たく俺は聞いた


彼女は死んだ目をして俺を見ることもせず

ボーっと目の前の一点を見つめて

無表情のまま答えた


「高橋栞です。14歳です。私は家出したんです。お母さんと喧嘩して。理由なんてくだらないことだったんです。お手伝いしなさいって。私だって学校で勉強して、みんなには仲間外れにされないよう気遣って、家にいるだけのお母さんなんかには私の気持ちなんか分かんないなんて思って家出したんです。」


彼女はどこにでもいる普通の少女だった

顔は怪我だらけで半分は腫れあがってて

形も変わってしまってるけど

元は綺麗な子なんだろうなってのが見て分かった

俺は込み上げる怒りを抑えながら話を聞いていた


彼女は母親と口喧嘩になって

家を飛び出したらしい

誰も知ってる人がいない場所を求めて

つくばから渋谷に来たらしい

その日は漫画喫茶に泊まったらしく

次の日渋谷で買い物して帰ろうと思ってたみたいなんだが

楽しくて時間を忘れてしまったらしい

気づけば帰りの電車賃のことを考えずに買い物をしていたらしく

途方にくれていた所を今井の手下に声をかけられたらしい

下で殺したソファーで寝てた長谷川って奴だ


ニコニコと爽やかで優しく声をかけられたらしい


「どうしたの?なんかあった?」


彼女は

こんな人は沢山いるのに、みんな全く他人には無関心の渋谷で優しく声をかけられて心を少し開いてしまったらしい


「まぁ、、、ちょっと、いろいろ」

「そっか〜!まぁみんないろいろあるよね〜!暗い顔でしゃがみこんでんのが見えたからさ!どっか遠くからきたの?」

「えっ、、あの、、、茨城です」

「なんだ〜!そんな遠くでもないじゃん!近い!近い!俺はずっとここら辺が地元なんだけどそっちの方にも遊びいったりよくしたよ!」

「あ、、そうなんですね、、」

「ねぇ?お腹空いてない?そこで飯食おうぜ!奢るからさっ!」

「あ、、、いえ、、いえ、、大丈夫です、、」

「大丈夫ってOKってこと?じゃあ行こうぜ!会ったのもなんかの縁だし、もう少し話し相手にーなってよっ!」

「あ、、ちが、、違います!違います!」

「いいじゃん!いいじゃん!」


少し強引に手を引かれて目の前のファーストフード店に連れてかれたみたいで

話は結構盛り上がってここまで来た経緯だったり、学校の事、親の事、そして今日楽しかったこと

いろいろ話を1、2時間してしまったらしい


「じゃあ、向こうに帰らずにこっちで暮らせて毎日買い物できたら最高だねっ!」

「うん!そうですね〜!そんなこと出来たら幸せだよっ」

「まぁ、そうするには家に帰っていろいろ我慢しながら勉強して、めんどくさい人間関係も作り笑いして、心を殺してやってかないとなんないし、ましてはいい高校、いい大学でていい企業に就職してもそんな生活できるのって一握りだしね〜」

「そうですねえ〜私には難しいかなぁ〜」

「そんな事はないよ。方法次第じゃないかなっ?例えば今すぐにでもそんな世界に行けるスイッチがあったら君は押す?」

「迷わず押します!」


彼女は幸せのボタンではなく

破滅のボタンを押してしまった






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