祭囃子ときみの温度


祭囃子に金魚が舞って

花火色した狐火揺れた

連なる提灯果てもなく

流れる人波絶え間なく

きみの冷たい白い手を

たったひとつのよすがにし

彼方此方かなたこなたの境も知れぬ

お祭り夜行に加わった


響かせよ

この声を

きみならで


この夜はどこへ続きましょう

このままどこまでゆきましょう

踊れや踊れ溶けるまで

踊れや踊れ波となり

震える僕の輪郭を

繋ぎ留めるのは冷たい手

踊れや踊れの熱狂に

冷たいままのきみの肌


影だけになった行列が

踊れや踊れと消えていく

花火色した狐火の

光の渦に消えていく

きみの冷たい白い手が

そっと僕からほどかれて

嫌だ ひとりにしないでよ


祭囃子は聞こえなく

花火色した狐火消えて

今は静かな闇の中

金魚がひらり泳いでる

きみの冷たい白い手を

くした僕の掌に

するりうつつの風が吹く


夜明けて僕は笛を吹く

祭囃子の真似をして

踊れや踊れと笛を吹く

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