第3話 仕事場の音楽

 私の職場は、誰にも気兼ねせず、好きな音楽を好きなだけ聴いていられるという、ちょっとステキなところだ。それもそのはず、自宅の一室が仕事場で、一人で仕事をしているのだから。


 フリーランスという身分は、収入は不安定だし、時間は不規則だし、病気をしたら迷惑をかけるし、まあいろいろと大変なのだが、「音楽の自由」だけは至福である。


 仕事場では、ずっと音楽を流している。ジャンルで言えば、クラシックが全体の6割から7割を占めていて、あとはいろいろ。日本語の歌はあまり聴かない。というか、聴けない。意識が歌詞を追いかけてしまい、集中力が散漫になるからだ。例外的に、水曜日のカンパネラなどは面白い歌詞なのに仕事ができる。不思議なものだ。


 仕事場の音楽には、快適なBGMということの他に、もうひとつ大事な役目がある。仕事のエンジンになってくれるのだ。


 たとえば、じっくりと考えたいときには、パッと思い出すものを挙げてみると、ブライアン・イーノの『ザ・プラトウ・オブ・ミラー』『ザ・パール』や、グレン・グールドが演奏するバッハなどをよく選択している。


 勢いが出てきたら、ブルックナーやベートーヴェンなどの交響曲、ホレス・シルヴァーやスタン・ゲッツのジャズなどが後押ししてくれる。


 逆に、グジャグジャしてしまったアタマを落ち着けたいときは、バッハの『マタイ受難曲』やサティのピアノ曲などに頼る。と書くと、なんだか音楽療法のようだ。


 そして、切羽詰まってきて、もうやるしかない、というときの最終兵器(?)が、キング・クリムゾンの『レッド』『ザ・コンストラクション・オブ・ライト』『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』の3連続攻撃である。これは、効く。高い確率で、俗に言うアドレナリンが出ている状態になれる。仕事に集中できる“ゾーン”に入れる。


 音楽がなければ仕事にならないというのは、いかがなものかと思わないでもないが、何度、音楽に助けられたかわからない(これは仕事に限らないが)。いや、毎日、助けられている。音楽に足を向けては寝られないというものだ。音楽さん、ありがとう。


 次回は、第1回でもふれた、展覧会と音楽について(たぶん)。

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