第6話 連合王国キタァけど、コミケもびっくり大行列

 そして並び始めて二時間くらい。ようやく城門の門番のところまで来た。おそらく日付は変わっているであろう。

 そして門番が話しかけてきた。

「四人か? なんか身分証明できるものはあるか?」

「えっと、一応これは持っているんですけど?」

 比呂貴は答えて冒険者のプレートを見せる。他の三人も同じく見せる。


「なるほど。ドルクマンの冒険者か。スチールが三人と銀プレートがひとりいるな。銀がいるならまあいいだろう。

 で、今回の目的はなんだ?」

「えっと、観光です。祭りを見に来ました。」

 比呂貴は答える。

「わかった。それでは三番の窓口に並ぶが良い。そこで今と同じことを答えればよい。」


 門番に言われて門の中へ潜る(くぐる)三人。そこは大きな建物の中になっており、入門の手続きができるような施設になっていた。馬車も数台おけるスペースがあるのでかなり広いことがわかる。イメージ的には免許センターのようであろうか。

 そしてさらに三番の列に並ぶ。この列はそんなに並んでいなかった。おそらく身分がある観光専門の窓口と推測される。逆に一番の列はものすごい長蛇の列である。二番はなんだろうか。商売用の窓口であろうか?


 それらを見て比呂貴は思った。

『いやー、ドルクマンで冒険者登録をしておいて本当に良かったな。あと門番が、「銀プレートがいる」って言ってたな。スチールばっかりだったらこの列に並べなかったかも。これはもしかしたらレイムのお手柄かもしれん。

 でも、レイムに言ったら調子に乗りそうだし、このまま黙っておこう。』


 そしていよいよ比呂貴たちの番である。受付のお姉さんが話しかけてきた。

「四人ですか? 身分のわかるものを見せて下さい。」

「はいそうです。」

 比呂貴が答えながらドルクマンの冒険者のプレートを見せる。他の三人も見せる。


「了解です。今回の首都への目的はなんですか?」

「観光です。祭りを見に来ました。」

『って、ホントにやりとりそのままだな。なんか非効率さを覚えるが、まあこれは仕方ないか。』

「わかりました。では入門の手数料としておひとり銀貨一枚です。」

「た、高い。まっ、マジで?」

 思わず叫んでしまった比呂貴だったが、その後、チラッとファテマを見た。


「ふむ。良い良い。」

 ファテマはそう言って銀貨四枚を比呂貴に渡した。

「はい。ありがとうございます。ではこちらが通行証となりますので大事にお持ちください。無くしてしまうと手数料を頂くことになってしまいます。

 通行証の有効期限は三日です。三日後に窓口で申請するとさらに三日間の滞在が可能ですのでその際はお願いします。延長しないようであれば、門番へ通行証を返却してお帰り下さい。

 ここまでで何か質問はありますか?」


 お姉さんに対して比呂貴が質問をする。

「通行証ですが、祭り用のものは無いんですか? 祭りは確か二十日くらいやっているんですよね?

 お互い非効率のような気がしますが?」


「出店者に関してはあるのですが、観光者用のものはありません。しかし、多数の要望を貰っているので現在検討中です。」

「そうですか。わかりました。」

「他にありますか?」

 お姉さんは他に質問が無いことを確認して再度注意事項に戻った。


「最後の注意事項です。この中に空を飛べる方はいますか?」

 お姉さんの質問に対してファテマと、そしてレイムが手を挙げた。

「なっ!? レイム、お前空飛べんのかよ?」

「ええ。実わね!

 私も言われるまでは忘れてたけど。ハハハ。あっ、でもファテマちゃんみたいに早くは飛べないわよ。」


「えっと、それでは続けますね。

 首都エンデルの中では飛行は厳禁でお願いします。見かけた場合は最悪罰金を頂くことになりますのでよろしくお願いします。」

「そうか、わかったぞ。」

 お姉さんの説明にファテマが答える。

「以上で入門手続きは終了です。それでは良き旅になりますことを。」


 さて、入門の建物を後にして、いよいよ念願のベアーテ・エンデル連合王国の首都エンデルに入ったのである。

 まずは入門後、一本続く大通りが目に付く。大通りはタイルのようなものでしっかり舗装されている。また街路樹もあり、歩道もあるようである。

 両脇の街路樹に沿って出店がずっと続いている。祭りをしていることもあって、深夜なのにまばらではあるが明かりがある。あちこちで笑い声などが聞こえていて、みんな楽しくお酒を飲んでいるようである。


 歩道のさらに両脇には建物があるが、だいたいが四階建てか五階建ての建物である。さらに景観を整えるためにも同じような建物で統一されている。デザイン的にもシックな感じの建物である。中世ヨーロッパのイメージを彷彿させる。

 技術もセンスもとても高いことが見てわかる。さらに規則的なものもしっかりと設定され運用されているのであろう。


「ファテマさん! いよいよ来たぞ! 連合王国。」

 比呂貴の声にも反応したが、言葉は特になくひとつ頷くファテマ。嬉しさは尻尾を見れば良く分かった。

 夜で良くは見えなかったが、大通りのずっとずっと奥には大きな城があることがわかった。若干ではあるがライトアップされているようである。

 先ほども感じでいたが、やぱり首都エンデルは品格が違うのは一目でわかる。


「まずは宿ね。ここまで賑わっていると空いているかどうかわからないけど、とりあえず行ってみないとね。」

 レイムにしてはまともな意見を言ってきた。それに対して比呂貴は答える。

「レイムにしてはごくまっとうな意見だな。どうしたよ? でも確かにそうだ。詳細な観光や祭りは明日にしようぜ!」

「もう、ロキはいちいち失礼ね! そんなことだと女の子にモテないわよ!

 まあいいわ。とりあえず宿だけど、確かこっちに宿屋街があったはず、私も首都エンデルは数回しか来たことがないからあまり期待はしないでね。」


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