第4話 村へ到着し確認後は温泉回ですぜ

 そして何かといろいろとあったが、なんとかファテマの故郷である村まで着いた。周りはすでに真っ暗で夜も深くなっていた。

 以前なら、それでも村にはいくつも明かりがあったがそれもない。ただただ暗闇と静寂が辺りを支配していた。

 とりあえずは村の集会場のところに来た。一部破壊されているが、一応、無事だったようである。

「うーん。いざ来てみたは良いが、なんとも言えんのう………。」

「そうねえ。」

 ファテマの一言にアイリスも応えた。


 そしてファテマは話を続ける。

「レイムは相変わらずみたいじゃから、とりあえず儂は村の財産が無事かどうか確認してくるとする。

 アイリはここでレイムを診てやってくれ。」

「うん。わかった。周りは真っ暗だから気を付けてね。」

 アイリスが答え、その後、レイムも気力を振り絞ってファテマに言う。

「ううう。ごめんねぇ。でもまあ、村の財産の場所だし私は行かないほうが良いよね。ここで待ってる。」


 十分ほど経った後、ファテマが戻ってきた。

「とりあえず、財産の場所は無事だった。まあ、村から少し離れたところにあるからな。ってか、むしろいろいろと増えておったわ。

 あと、暗くて良く分からんかったが、結構酷い惨状じゃて。ユニコーンの村がこれじゃとエルフの村の方はどうなっておるやら。まあ、詳しいことは明日じゃな。」

「ドラゴンが来た時からすでに大変だったからね………。」

 アイリスは一言答えた。

 疲れていたのかレイムはもう眠ってしまっている。ファテマとアイリスもそのまま眠りに付いた。



 翌日。

「ファテマさーーん。それ以上スピードを上げないで。私消えちゃうよーーー!」

 突然叫びながら起き上がるレイム。寝言からの生還であったみたいだ。

「おはよう。レイム。

 なに? 寝てもお姉ちゃんの背中に乗ってたわけ? ある意味羨ましいわね。」

 ニヤニヤしながらアイリスは言った。二人はすでに起きていて朝ご飯の準備をしていた。

「ううう。恥ずかしい。

 そしてアイリスちゃん相変わらずドSよね。それもまた堪らないけど。もっと言ってほしい。」


 その後、朝食を済ませた三人。

 そして外に出て絶句する。ドラゴンの襲撃の跡が色濃く残っている。無残に建物が崩壊した跡地。三人は特に会話を交わすことなく村を歩いた。

 程なくしてファテマがユニコーンの姿になり言う。

「とりあえず、ここはもう良い。次はエルフの村へ行ってみよう。」

 ファテマの言葉に頷く二人。


 空から見るユニコーンの村も酷いモノであったが、それよりもエルフの村の方がさらに輪をかけてむごたらしい惨状であった。

 もともとユニコーンの村でもあり、あれだけ建物があったというのに見る影もない。緑の濃い地域だったが、一カ月しか経っていないにも関わらず、蔦もあちこちに張っておりすっかり廃墟となっていた。


「うーん。これじゃ生存者がいたかどうかもぜんぜんわからんな。」

 ファテマは一言。

 ポンコツなレイムでさえ、流石にこの場の空気を感じ取って二人を見守っている。

「お姉ちゃん。ちょっと私、村の宝物庫に行ってみるね。たぶん、この状態だとダメそうだけど………。」

「うむ。わかった。儂らはここで待っておるよ。」


 三十分ほど経った後、アイリスが戻ってきた。

「うん。建物は一部壊れてたけど、基本的には大丈夫だったみたい。」

「そうか。良かったのう。アイリ。お? その指輪は?」

「うん。これ私が生まれた時にパパが作ってくれたっていうエメラルドとブラックダイアモンド。

 ダークエルフのイメージカラーとも言える緑と黒が好きだったからね。それで作ってくれたみたい。普段は邪魔だから宝物庫に置いてあったの。」

「ほう。ならば形見となるな。大切に持っておった方が良いな。」

「うん。」


「さて、そろそろここは良いじゃろう。で、二人を良いところへ連れてってやろう。そこはおそらくエルフは知らんじゃろうて。」

 ニヤリと話すファテマ。その後、ユニコーンになり二人を乗せる。二人は『?』になりならがらファテマに言われるままに連れていかれた。

 五分ほどファテマに乗りそして目的地へ到着する。


「わあ。温泉じゃないっすかファテマさん!」

 レイムは目をキラキラさせながら言う。

「フフフ。天然温泉じゃぞ! めっちゃ気持ち良いからな!」

 そう言ってファテマは服を脱ぎ捨てて温泉に入っていく。

「ちょっとお姉ちゃん! 誰か見てたらどうするの?」

 アイリスはあたふたと心配する。

「いやいやこんな辺境に誰もおらんじゃろうて。というか、儂の貧相な身体なんぞ誰も見て得はせんわ!」


「アイリスちゃん。その辺は大丈夫よ。こういうのは補正が掛かって謎の光なのよ。やましい気持ちでいる人には裸は見れない仕組みになっているのよ!」

 レイムもそう言って服を解除して裸になり温泉に入っていく。

「あああ、これはたまらん。気持ち良いのう。生き返るわい!」

 ファテマがおっさんのような言い回しで言う。


「そうね。気持ち良いわね。こんな場所知ってるなんて、ファテマちゃんマジで有能過ぎるよ!

 あと、はやく入ってきなよ。アイリスちゃん!」

 レイムは期待に胸を膨らませて鼻息を荒くしている。

「えええっと。レイムの前で裸になるのはなんか身の危険を感じるけど、でもやっぱり温泉には入りたーい!」

 アイリスもそう言って服を脱ぎ捨て温泉に入ってきた。


「アイリスたんキタァァ! って、あれ?」

 レイムは胸を期待で膨らませていたのだが、目をごしごしとこする。

「どうしたのじゃ?」

 ファテマがレイムに尋ねる。

「いや、そういやファテマちゃんもアイリスちゃんもなぜかモヤが掛かっていて、湯煙かなって思ってたけど、あれ?」


「レイムよ。何を言っておるんじゃ? 確かに湯煙はたっておるが儂からはレイムの姿はしっかり見えておるぞ?

 いやー、流石にサキュバスじゃのう。スタイル抜群ではないか!

 出るところはしっかりと出ておって、引っ込むところはキュッとしておるし。かといって胸もだらしなく大きいわけじゃないしな。あと、腰のくびれの引き締まり具合が色気を出しておるぞ。」


「もう。ファテマちゃんったらそれは誉めすぎだよう!」

 レイムはニヤニヤしながらも目をこすっている。

「いやいや、世の男性諸君はレイムのようなものを待っておるんじゃろうて。儂も将来はお主のようになってやるからのう。」

「でも、ロキには無反応なんだよねぇ。まあ、どうでも良いけど。って、うーん。なんで私はみんなのことが良く見えないんだろう。早く見たいのに!」

 レイムの問いにアイリスが答える。

「あんたさっき自分で言ってたじゃない。やましい気持ちがある人は補正の光がどうのこうのって。」


「なっ!? うっそでしょーーー!?

 まさか私にその補正が掛かるなんてぇぇぇ!」

「フフフッ! レイムってばやっぱりポンコツじゃん!

 じゃあ、私も安心して温泉に入れるわ。」

 アイリスはクスクスと笑っていた。レイムはシュンとしながら温泉に浸かっていた。

「いやはや、お主らもうすっかり仲良しじゃのう。超絶な人見知りのアイリがここまで楽しそうにしておるなんてな。」


「え? そんなことはないよ! ってことも無いかもね。

 なんかレイムって確かにお姉ちゃんなんだけど、でもなんかいい具合にポンコツもあって妹みたいなんだよね。」

「ううっ、形(なり)はこんなんだけど、みんなのほうが歳は上じゃん。」

 レイムは二人の会話に対して小さくツッコミを入れる。


「さて、疲れも癒えたところでそろそろ帰るとするかのう。」

「うがぁぁぁ。忘れてた! またファテマさんに乗らなきゃいけなかったんだ!?」

 ファテマの一言に対してレイムがこの世の終わりのような断末魔で叫んだ。

「もう、レイムってばホントにポンコツ! せっかくお姉ちゃんが空を飛んでくれるのに本当に勿体ないなあ!」

 アイリスも一言添えた。


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