第8話 レイムのトラウマに遭遇

 そして二人はいったん登録場を後にした。

「さて、少しカフェに寄っても良いかしら?

 情報収集のもう一つっていったら酒場よね。まあ、流石に今の時間帯はカフェ営業だけどね。」

「まあ、良いけど。ちなみにクエストってどうやって受けられるの?」


「あ、それは登録場の二階でやっているわよ。三階はクエストの報告場になっているわ。」

「なるほど。それはまた実際に冒険をやるときの楽しみに取っておきますか。」

「ちなみにその時は、わっ、私も連れて行ってくれるんでしょうね?」

「何をそんなキョドって聞いてるんだよ。今更じゃん!

 レイムはポンコツだけど、十分に戦力だからこちらからお願いしたいくらいだぜ。」


「!?

 と、当然よね。このレイムちゃんが力を貸してあげるんだから、そりゃあガツガツとクエストクリアするんだからね!

 さてさて、カフェでも行きますかねぇ。」

 ちょっとにやけた感じでレイムは比呂貴の手を引いた。


 そして二人は冒険者登録所のすぐ近くにある酒場へ向かう。

「うわぁ! 一軒増えてる!

 そうよね。最近この辺めっちゃ人族も亜人も増えてるもんね。今は閑散期のはずなのに冒険者登録もあれだけいたし、そりゃあ酒場も足りないわね。」

「そういや、ずっと気になってたんだけど、閑散期とか繁忙期とかってどういうこと?」


「ああ、そっか。そういや説明してなかったわね。まあ、とっても単純な話なんだけどね。

 連合王国もこのドルクマン王国も毎年お祭りがあるの。連合王国は建国のお祭りで、ドルクマンはドルクマンの誕生日ね。

 そうすると、一年で被らないように半年ごとになるからみたい。今はちょうど連合王国のお祭りの時期だから、逆にドルクマン王国は人が少なくなって閑散期になるってわけ。」


「なっ、なるほど。確かに簡単な話だった。ってか、流石にその辺の事情を知っている子がいると助かるな。」

「え? 私役に立ってる?」

「おう。立ってる立ってる! ポンコツは変わらんけどな!」

「なっ! こういうときくらいちゃんと誉めなさいよ! 私は誉めて伸びるタイプなんだから!

 まあ、良いわ。とりあえずお店に入りましょうか。」


「うわぁ。懐かしいわね。お店のレイアウトはほとんど変わっているけど、でもなんか変わっていないわね。

 でもあれだなあ。もう流石に知り合いは一人もいないわね。当時は結構冒険者頑張ってたんだけどなあ。」

 レイムはしみじみと周りを見ながら感慨に耽って(ふけって)いる。

「でも、七、八年前でしょ? そりゃあそんなもんじゃないの?」

「うん。まあそう言われればそうだんだけどさあ。でもほら、なんかあるじゃん!」

「あるじゃんって言われても。まあ、言いたいことはわからんでも無いけどね。」


「まあ、一応今の時間はカフェだけど、夜になったら酒場になるからね。お酒を飲みながら情報交換したりも出来るんだけどね。

 でも今日はクエストもやんないだろうからこれ飲んだら出ましょう。」

「了解! でも確かに雰囲気あるからねぇ。ワクワクしてきた。クエストこなすの楽しみになってきたな!」

「で、まだまだ時間あるから先に本屋さんに行っちゃうでしょ?」

「うーん、荷物になるからなぁと思いつつも確かにまだ時間かかりそうだしね。先に本屋に行きますか!」


 お茶を飲んだ二人はいざ、本屋に向かおうとした。

「さて、本屋に行きますか。レイムよろしくね!」

「う、うん。うーーーん。」

「レイム。どうしたのよ? 早く行こうぜ!」

「ロキさん。ここで悲しいお知らせがあります。」

 レイムは滝の汗を流している。


「なっ!? レイム、お前まさか!?!?」

「ごっ、ごめんなさーーい!

 私、ドルクマンで本屋さん行ったことないや。テヘ☆彡」

「やっぱりポンコツじゃん!

 でもまあ、いいや。それくらいは。

せっかくだし、ドルクマン王国もちょっと歩きながら街並みを感じようかな。散策しながら本屋さんを探そう。」

「そっ、そうよね! せっかくドルクマンまで来たんだから、しっかり観光もしなきゃ! うんうん!」

「って、お前が言うな!」

「ひぃん。そうですよね。ごめんなさーーーい。」


 そしてふたりは当てもなくドルクマン王国を歩いていた。その後、レイムにせっかくだし、祭りの会場にもなる広場に行こうと言われて連れていかれる比呂貴であった。

 そしてレイムのトラウマのひとつとバッタリ再会してしまう………。


「おおお、これはレイムではないか。すっかりと大きくなりおって見間違えたぞ!」

「うげっ! モンルード公爵。」

 レイムが心底軽蔑のまなざしでモンルードと呼んだ男を見た。

「あんたも大きくなったわね。横に。」

 ボソッと呟くレイムであった。


 モンルード公爵はかなりの大男であった。背も高いが横にもかなり広い。明らかに下品そうな顔をしている。そして、趣味の悪そうな大きな宝石を散りばめられ、装飾された服を着ていた。これは大阪のおばちゃんもびっくりである。


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