第5話 腹が減ってはなんとやら。とりあえず飯②

「ふん。確かに魚の香ばしい香りが鼻に突くわ!」

「ふふーん。この香ばしい香りが今後美味しいを感知する香りに変わるんだよ?」

 そう言って比呂貴はニヤニヤとしている。そしてファテマはパクッと魚をほうばる。今度は可愛らしい姿で。


「ん!? アツ!」

 ファテマはホフホフとアツアツの焼き魚を食べてモゴモゴとしている。その姿は本当に可愛らしく比呂貴は癒される。


「アチッ!」

 ファテマの可愛らしい姿をボーッとしながら魚を食べたせいで舌を火傷してしまった。しかしそんなことはどうでも良かった。それくらいファテマが可愛かったからだ。


 そして、一尾食べ終わったファテマは興奮気味で比呂貴に言う。

「おおロキよ! ちょっといろいろと初めての感覚でどう言って良いのか知らんが、これが美味しいということか? 魚を焼いただけじゃと言うのに全然違うではないか!」

 ファテマは尻尾も激しく左右に振れている。よほど美味しかったことがそれでわかる。


「いや、本当は塩を掛けるだけでもまた全然違ってくるんだけどね。醤油なんかあれば最高なんだけど。でもそんな調味料はこの世界にもあるんかな?」

「ああ、調味料の詳細はわからんのだが、人族の国に行けば手に入ると思うぞ!

 うーん。流石に人族ということか。知識は広く深いのう。これは認めてやるしかない。ただの変態では無かったのだな。」


「えっ? それじゃあファテマをモフモフして良い?」

「なっ、なぜ故にそうなる? ダメに決まっておろうが!」

「ええ? いいじゃん。尻尾だけでも良いからさ!」

 この言葉にファテマはサッと尻尾を引っ込める。そして下衆を見るように言う。

「ふう。ちょっと褒めたらすぐこれじゃ。儂の感激を返さんか!

 やれやれ。やっぱり変態はただの変態じゃったか………。」


 そして食事を終えた二人は再びドラゴン退治のための作戦会議を始めるのであった。

「しかし、最強のドラゴンじゃが同族同士以外に唯一後れをとることがあるんじゃ。それはなんと非力な人族であるからな。我らの種族はどんだけ束になっていっても瞬殺で返り討ちじゃが人族は数人のパーティーでドラゴンを倒すことがある。

 まあ、伝説級の確立じゃがな。そういうのは小説や絵本とかになっておるみたいじゃ。お主に付けたあだ名のロキもドラゴンを退治した話もあったな。

 で、その人族様のロキよ。なんか退治できる作戦はないのかのう?」


「ええぇ。それ明らかにディスってるよね? ファテマもさっき伝説級って言ってたし、そんな簡単にいかないんでしょう?」

「ん? でぃするとはなんじゃ?

 まあ良いわ。別に倒さなくても良いんじゃ。おっぱらうか撒いて逃げられるかでも良い。ここ一カ月ドラゴンに追い回されてろくに寝ておらんのじゃよ。そろそろゆっくりとぐっすりと寝たいものじゃ。」


「って言ってもなあ………。

 まあ、さっき魚を取るときのあのビリビリはちょっといけそうかなって思ったりするけど。あれって実際どれくらいの威力があるの? もっと本気出したら威力上がるの?」

「まあ、我がちょっと本気を出せばじゃな、大木を真っ二つにすることくらいは造作もないことだがな!」

 ファテマはドヤッとしている。そんなファテマをスルーしていた比呂貴だが着々と戦略を練っていた。


「うーん、でも電気を使用すると逆に水をそもそも嫌ってるから漬かってくれないよな………。あっちが良ければこっちが立たず。難しいな。

 あ、ちなみに風の魔法の威力はどれくらいなの? 近くに水があれば竜巻とか起こせたりするの?」

「儂の器用さを嘗めて貰っては困るわ! 風を回転させれば良いのじゃろう? そんなのは幼少の頃に散々特訓したのでな。今では得意なくらいじゃわ!」

 またまたドヤッとしているファテマだったが、それも比呂貴はスルーして考え込んでいる。

「そんじゃあ、ファテマさん。シンプルな作戦だけどちょっとやってみますかね。ドラゴンおっぱらい。失敗したら間違いなく虐殺だろうけどね。テヘ☆彡」

「お主。可愛く言っておるつもりじゃろうが、サラッと酷いな。」


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