第26話 明梨の戦略

私の仮定は的中していた。

蒼馬は本当は明るくて優しい人。そのせいでますます好きになってしまう。


でも、彼の中にはまだ私の知らないことが沢山あるのだろう。

時折見せる彼の暗い面が何なのか私にはわからない。


それを聞き出そうとするのも失礼だろう。だから彼から話してくれるまで待つしかない。待つのは辛いけど、それしかない。


好きと伝え続けるしかない。


でもそれが楽しい。


ドキドキするし、ワクワクもする。悩むしよく作戦を考える。

彼がたまにクラスの女子と話していると嫉妬もする。


こんなのは初めてだ。


明梨の心は初めて恋をした。


だから待とう。彼の隣に居続けることができれば、きっといつか彼は話してくれる。それまではそばで待ち続ける。


これが明梨の作戦だ。考えに考えた末の作戦。単純だけど難しい。だから楽しい恋の作戦。



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「おっはよー!」

「おはよう。」


今日も朝から蒼馬に話しかける明梨。その風景に教室はもう慣れていた。


くだらない話でも蒼馬としていると楽しい。こんな感情を蒼馬も抱いてくれているだろうか?


「ようお二人さん」

「おはよ~」


そうして話をしているうちに実里と創太がやってくる。最近この二人は急接近していて、付き合っているのか?なんて話題にもなっている。


ただ、この二人は私と蒼馬を近付けようとする実里と、引き離そうとする創太で時々ぶつかり合っている。


端から見れば仲の良い四人組で、見る人によればカップルが二つあるようにも見えるだろうが、実態は別物だった。


創太は蒼馬の暗い面を知っている。私はそう確信している。


実里もそれは同感らしい。


私の知らないことを知っていることに、少しばかりイラッとくるが、そこは我慢だ。


授業を受けている間にも、放課後はどうしようとか、何を話そうかとか考える。


そうしているとつまらない授業もあっという間に終わってしまう。


そうなると今度は蒼馬が帰らないように、蒼馬のところまで許されるスピードで駆けつける。


そうでもしないと彼は帰ってしまうのだ。実際それで帰られたことがあるから、それ以来はできるだけ早く彼のもとに行けるように荷物の片付けを早めにしたりしている。


そうするとちょうど帰ろうと席を立った彼と目が合う。


その目には“今日も間に合ったんだ“と書いてある。


間に合ってしまえば私のもので、そこからは一緒に帰る流れになり、蒼馬の放課後は私の手の内に落ちる。


今日はショッピングモールに行こう。ちょうど買いたいものがあるのだ。そのついでにスイーツでも食べに行こう。


そう思って歩いていたとき、それは突然やって来た。


「あっ!蒼馬!」

「っ!?」

「?」


その声に、蒼馬が過剰に反応したのを私は見のがせなかった。


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