第18話 片山 創太①

“ 明日、小早川明梨に誘拐されます。“

昨日の夜中、LIMUでの一言目がこれである。突然の誘拐事件の予告、それも誘拐される側からのメッセージに何かと思えば、本人いわく、

「俺の貴重な休日の安らかな時間が小悪魔に奪われる。」

とのこと。嫌なら行かなきゃいいのに、とか、じゃあバックレれば?とか思うところはあるけれど、あの小早川って子の押しの強さだ、蒼馬じゃあ断れないだろうし、バックレるなんて、蒼馬の性格からして選択肢にすら入っていないだろう。

「人がイイんだよなぁ。」

そんなこんなで、今はその小悪魔ちゃんとの待ち合わせの場所に30分前くらいにつくように電車で向かっているのである。

それにしても、休日を奪う小早川のことを

“悪魔“ではなく“小悪魔“と言うとは、蒼馬もまんざらでもないのだろうか?

(確かにルックスは抜群だし、蒼馬に対するときの性格も良い。けど・・・)

創太は友達たちに聞いた良くない噂がどうしても気がかりだった。

(もし、彼女が・・・そのときは俺が)

創太はかつての記憶に痛みを覚えながら、電車を降りた。


東横線を降りてから、JR線の中央改札口に向かって階段を上がる。多くの人が行き交う通りのとある柱に寄りかかる女の子を見つける。

(・・・ん?確か彼女は・・・)

想定外の人物にどうするか戸惑うが、とりあえず自然を装って声でもかけてみようと思い、

「秋山さん、だよね?」

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